ボートレーサーの持続化給付金受給に関する調査結果報告について
ピックアップニュース 2021/04/28
日本モーターボート競走会と日本モーターボート選手会は、令和3年3月30日の記者会見以降、受給した全選手を対象に、申請理由や申請時期、受給等についてのヒアリングを実施するとともに、ヒアリング結果を精査し、全容の解明に努めてまいりました。
このたび、精査結果が取りまとまりましたので、ご報告いたします。
また、再発防止策及び当該選手に対する処分につきまして、併せてお知らせいたします。
1.報告内容
(1)調査方法
[1]調査(3月10日~24日)
選手会が、全会員(1,574名)を対象に、持続化給付金受給の有無に関する記名式の調査を実施し、受給者211名が判明。
[2]精査(3月31日~4月12日)
競走会と選手会が、受給者211名を対象に、申請理由、受給金額、返還の有無及び税理士への相談等について聴取及び精査を実施。
※精査期間中に、新たに4名の選手が受給を申告。
(2)受給者数 215名
(3)受給総額 2億1,473万円
(4)返還者数 215名(手続中含む)
(5)返還総額 2億1,473万円
(6)受給申請時期 令和2年5月1日~令和3年2月15日
(7)受給申請理由
[1]フライング又は出遅れによる 24名
[2]私傷病及び公傷等による 43名
[3]感染者や濃厚接触者等に指定され、或いは開催中止や打ち切りとなり、出場あっせんに影響を受けたことによる 67名
[4]感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる 68名
[5]ボートレース以外の事業収入等による 13名
(8)受給者の属性
[1]級別(A1級43名、A2級39名、B1級110名、B2級23名)
[2]性別(男子200名、女子15名)
[3]年代別(20代46名、30代94名、40代50名、50代23名、60代2名)
2.受給した選手の処分
持続化給付金の制度は、事業の持続が困難な事業主に対する制度であり、ボートレース業界は、コロナ禍においても、開催日数は減少していない。
また、参加レースが、中止や打ち切りとなった選手に対しては、追加あっせん等の補填を行っており、競走に関する収入減は、極めて限定的である。
選手が、持続化給付金を受給することは、制度の趣旨・目的に合致せず、モラルに反するだけではなく、「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」である。
よって、業界として、厳正に処分する必要があることから、受給した選手については、申請理由等を勘案し、褒賞懲戒規程第11条第5号「選手としての体面を汚し又は著しく風紀を乱したとき」に該当するとして、褒賞懲戒審議会(令和3年4月27日開催)に諮問し、次のとおり処分を決定した。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた、11名:「出場停止4ヶ月」
(2)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた、13名:「出場停止3ヶ月」
(3)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた、19名:「出場停止2ヶ月」
(4)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた、24名:「出場停止1ヶ月」
(5)新型コロナウイルス感染症の影響が有り、「感染者や濃厚接触者等に指定され、或いは開催中止や打ち切りとなり、出場あっせんに影響を受けたことによる」、「感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる」、「ボートレース以外の事業収入等による」という理由で受給していた、148名:「戒告」
3.再発防止策
(1)訓練・研修会等による指導強化
[1]競走会
ア.定期訓練において、専門講師及び競走会業務部による、モラル、コンプライアンスに関する講話を実施し、倫理規程等の法令順守を徹底する。
イ.理事及び執行役員による個人面談を実施し、モラル、コンプライアンスの徹底を図る。
[2]選手会
ア.新人選手訓練において、選手会業務部及び競走会業務部による、モラル、コンプライアンスに関する講話を実施し、倫理規程等の法令順守を徹底する。
(2)内部通報制度の活用
ふれあいフリーダイヤルや、メールによる専用相談窓口を活用し、選手、関係者から情報を収集し、競走関係以外のモラル、コンプライアンスに反する事案にも対処する。
(3)不正行為に関する検証委員会の活用
異常投票や疑いのあるレース映像の検証のみならず、競走の公正確保を害する恐れのある事案以外の、モラル、コンプライアンスに反する事案に対しても、委員会において検証を行う。
(4)業務連絡会の設置
[1]競走会、選手会連絡会
競走会、選手会による「業務連絡会」を設置し、定期的な開催により、競走運営に関する諸問題について情報交換と情報共有を図り、検証委員会と連携し、危機管理の徹底と競走の公正の確保に努める。
[2]関係団体連絡会
競走会、選手会、全施協、振興会、保安協会の5団体による「業務連絡会」を設置し、競走運営に関する諸問題について情報交換と情報共有を図る。
(5)褒賞懲戒審議会による厳格な処分
褒賞懲戒審議会における処分の運用を、更に厳しいものとすることにより懲戒事案に対する抑止力を高め、競走の公正の確保に努める。
日本モーターボート競走会と日本モーターボート選手会は、令和3年3月30日の記者会見以降、改めて、持続化給付金を受給したとされる全選手を対象に、事実確認を行ってまいりました。
選手の、持続化給付金制度の趣旨・目的への理解不足が理由であったことが要因とはいえ、「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」と考えます。選手が、給付金を申請・受給していたことは、誠に遺憾なことであり、お客さまをはじめ、多くの方々の信頼を裏切ることとなり、心より深くお詫び申し上げます。
なお、今回給付金を受給した全選手は、既に給付金を返還済若しくは返還手続中となっておりますが、業界内の審査機関である褒賞懲戒審議会におきまして、当該選手を出場停止処分とするなど、厳正・厳重に対処いたしました。
再びこのようなことを起こさぬよう、全選手を対象に、訓練・個人面談等による選手指導の強化を図るとともに、内部通報制度を活用した情報収集の充実化や厳格な処分等の再発防止策に取り組むことにより、お客さまの信頼確保に鋭意努めてまいります。
一般財団法人日本モーターボート競走会
会長 潮田 政明
選手の持続化給付金の受給に関しまして、選手を代表し、心よりお詫び申し上げます。
今後、このようなことがないよう、改めて選手全員に対し、厳しく指導を行っていくとともに、選手として、お客さまに魅力あるレースを提供し、信頼の回復に努めてまいります。
公益社団法人日本モーターボート選手会
会長 上瀧 和則
4.記者会見の質疑応答
・共同通信社
Q.このような事態に拡大した、一番の原因は何か。
A.持続化給付金制度に関する理解不足と、選手一人ひとりのモラル・コンプライアンスに対する認識の低さが一番の要因であったと考える。
説明の中で触れたとおり、「不正に繋がりかねない行為」、「不正に見られかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」であることから、業界内で厳正・厳重な処分とした。
選手会との情報共有や連携不足は、反省しなければならない。
・サンケイスポーツ
Q.フライング辞退による受給は、「不正」ではないのか。
A.持続化給付金制度に対する理解不足が要因の、モラルに反する「不適切」な行為であり、故意や作為的な「不正」な行為とは考えていない。
繰り返しになるが「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」であり、業界内で厳正・厳重な処分とした。
不正か否かは、私どもが判断出来るものではない。最終的には、中小企業庁の判断によるものと考える。
現在、受給要件を満たしていない、或いは誤って受給したものとして、速やかに返還しているところである。
・報知新聞社
Q.コロナ以外の理由で、給付金を受給していた選手のうち、「フライング辞退」と、「私傷病・公傷等」について、処分に格差をつけたのは何故か。
A.業界のペナルティである「フライング辞退」を申請理由としたことは、業界として最も不道徳と考え、厳しい処分とした。
・テレビ朝日
Q.コロナの影響があるのにもかかわらず、戒告の処分としたのは、どういう理由か。副業も同様か。
A.「公営競技の選手」という立場である者が受給することは、ボートレース事業がコロナ禍であっても持続されている事業であることからすると、問題があると考える。副業も同様である。
・読売新聞社
Q.中小企業庁が不正かどうか判断すると発言したにもかかわらず、不正には該当しないとするのは矛盾していないか。
A.持続化給付金制度に対する理解不足が要因の、モラルに反する「不適切」な行為であり、故意や作為的な「不正」な行為とは考えていない。
Q.選手の故意・過失は関係なく、手続きとして不正なのではないか。
A.最終的には、中小企業庁の判断によるものと考える。
Q.「不正に繋がりかねない行為」というのは、「不正の疑いがあるという行為」ということでよいか。
A.選手が制度を十分に理解せずに申請したことによるため、「不正」とまでは断定できないというのが褒賞懲戒審議会の判断である。最終的には、中小企業庁が判断することになる。
Q.不正が疑われたから調査したのではないか。
A.全容を解明するために、調査を行った。
Q.選手はどのようなことを理由に申請しているのか。
A.フライング、開催中止、公傷や私傷病など、何らかの理由により申請している。
Q.コロナ以外の理由では申請出来ないと知っていながら、申請した選手はいるのか。
A.収入が半減しているだけで、申請できるものと思い込み、申請していたようである。
Q.故意性のある選手は、調査ではいなかったのか。
A.ヒアリング調査においては、見受けられなかった。
Q.税理士のような指南役はいないということだが、選手間の会話で広がったのか。
A.選手間の会話の中で広がった可能性があると思われる。他にも、中小企業庁のコールセンターに問い合わせて、確認をした上で申請したという事例もあった。
・TBS
Q.過半数が選手会の注意喚起の後に申請しているようだが、そのことをどのように考えるか。
A.もっと厳重な指導の徹底が必要であった。
Q.選手会の注意喚起文書を読んでいなかったのか、虚偽の申告をしたのか。
A.文書の確認を怠っていた者もいるだろうし、確認はしたものの認識の甘かった者もいた。
・朝日新聞社
Q.選手会の注意喚起文書によって、申請が増えてしまったのではないか。
A.選手会の注意喚起文書が起点となったとは考えていない。それ以前から、安易に申請できると選手間で広まり、内容をよく確認せず申請したと思われる。
Q. 選手会の注意喚起の文書は、どのように周知したのか。
A.選手専用のサイトにアップし、全選手に確認するようメールにて周知した。
Q.JRAで問題となった大阪の税理士は、関与していたのか。
A.JRAで関与していた税理士については、見受けられなかった。
Q.副業などでコロナの影響を受けた選手も含めて、不適切という認識でよいか。
A.ボートレース事業はコロナ禍にあっても持続されている事業であることから、副業も同様に「不適切」な受給であると考える。
Q.収入が減少していないにもかかわらず、申請した選手はいたのか。
A.そのような選手はいない。
・公営レーシングプレス
Q.褒賞懲戒審議会において、新たな仕組みを作ることを考えているのか。
A.新たな仕組みを作ることではなく、処分の運用を更に厳しいものとすることにより懲戒事案に対する抑止力を高め、競走の公正の確保に努めていく。
・デイリースポーツ
Q.現役の選手に対し再発防止の指導をしていくようだが、これから選手になる養成員にも同様な教育を考えて欲しい。
A.ボートレーサー養成所のカリキュラムに、盛り込むことを検討したい。
・共同通信社
Q.処分は4月27日付ということでよいか。
A.処分の決定日が4月27日で、適用は、原則として5月1日からである。
Q.新たに申告した4名は、どのような理由で申告してきたのか。
A.申請していたこと自体を、失念していたが、3月末の報道をきっかけに正直に申告してきた。ヒアリング調査の結果、虚偽の申告ではなかった。
・読売新聞社
Q.選手会と競走会は、刑事告発するという考えはあるか。
A.「不適切」な受給であり、刑事告発は考えていない。
・産経新聞社
Q.警察などの捜査当局から、話は聞かれているか。
A.聞かれていない。
4月28日記者会見出席社19社20名
テレビ朝日 1名
TBS 1名
時事通信社 1名
共同通信社 2名
読売新聞社 1名
産経新聞社 1名
朝日新聞社 1名
報知新聞社 1名
スポーツニッポン 1名
日刊スポーツ 1名
サンケイスポーツ 1名
デイリースポーツ 1名
東京スポーツ 1名
西日本スポーツ 1名
タイムス出版社 1名
マクール 1名
ボートボーイ 1名
マンスリー 1名
公営レーシングプレス 1名