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  • 2024.03.29

    24場制覇リーチレーサーあっせんを更新

  • 2024.03.28

    吉川元浩選手がゴールデンレーサー認定!

次のメダルホルダーは誰だ!

打率3割9分8厘の強打者見参!

「同期優出一番乗り!」。新開航はデビュー当時こう宣言している。118期修了記念競走Vの板橋侑我や養成所勝率1位だった宮之原輝紀をはじめ栗城匠など、競争相手に恵まれているが、それに生来の闘争心が化学反応したといっていい。野球少年は小学校の時に全国制覇し世界大会にも出場。「あの緊張感が財産…」だ。2017年8月、浜名湖で「同期優出一番乗り」し、2018年1月には芦屋で「同期優勝一番乗り」も果たしている。記念Vは栗城匠(2021年5月平和島周年)と板橋侑我(2021年11月浜名湖周年)に先を越されたが、2022年は年間125勝で最多勝利選手。出走数314(選手責任外事故含む)をベースに数えると1着率は3割9分8厘。打率になぞらえると驚異的である。優秀選手表彰式典では、「活躍する先輩のようになりたい」と記念戦線に熱い眼差しを向けた新開航。昨年のグランプリシリーズは8打数1安打(8走1着1本)だったが、今度はタイムリーヒット連発でファンを魅了してほしい。

昨年の最多勝利男がクラシックに攻め入る

昨年、G2戦の芦屋MB大賞を含む年間V10と大ブレイクし、最多勝利のタイトルも獲得。今年もすでに優出が4回あり、その全てが優勝戦1号艇! すなわち、予選中から突き抜けた成績を残している。ただ、今年4回の優勝戦1号艇で優勝は1回だけと微妙にリズムを崩しているが、昨年1年間のイン戦は25連勝を含む78戦73勝で1着率は実に94%にも達していた。この抜群のイン戦の強さが武器のひとつだが、何よりもモーターを出すことと仕上がりの早さが最大の強さの秘訣(ひけつ)。最近は乗り心地重視を口にする、もしくは求める選手が多い中、新開は乗り心地よりも足重視。乗りづらいからといってレースにならないなんてことはない。SG戦は大村グランプリシリーズですでに経験。選手層が圧倒的に厚い福岡支部で記念レギュラーに定着するためにも、SG戦で活躍し大いに存在をアピールしたいところだ。

今年も"新開旋風"を巻き起こす

今年も"旋風"を巻き起こす。新開は昨年、125勝を挙げて最多勝利選手を初受賞。さらにG2初制覇となった7月の芦屋モーターボート大賞を含む年間10回の優勝も全選手でトップと充実した一年を過ごした。好結果の要因は一昨年4月に入籍して生涯の伴侶を得たことを挙げ、「心身ともに充実しています」と笑顔で振り返った。そのほかにも瓜生正義ら福岡支部の先輩らの走りからいろいろなことを吸収し、地力強化した"下地"があったからこその大活躍だ。今年もすでに4優出してV1。2月の浜名湖一般戦の優勝戦で痛恨のフライングを切ったが、それで勢いは止まらない。SG初出場だった昨年12月の大村・グランプリシリーズでは3走目でインから押し切って水神祭を挙げたが、今回はそれ以上の結果をめざす。予選突破、そしてさらなる高みへ、新開が新たな道を切り開く。

令和のVハンターが同期SGV一番乗りへ!!

118期にまたもや新星が現れた。デビューから7年目の昨年は10Vを飾り、ぶっちぎりで年間最多勝利選手にも輝いた。ブレイクの予兆はあった。昨年1月の戸田ルーキーシリーズでは、優勝戦でまくり差した畑田汰一を猛追。2周2マークで差して地元のプリンスを競り落とした。大きな優勝を勝ち取ってからは、ほぼひと月に1回のペースで優勝を積み重ねた。ボートレーサー養成所時代を振り返ると「上の方はすごかったです」と宮之原輝紀、板橋侑我、栗城匠らには歯が立たなかったが、デビュー1年8カ月後の芦屋で優勝。これは同期で最速だった。もう、この頃から片りんがあったのかもしれない。記念戦線ではやや壁にハネ返されているが、令和のVハンターなら必ずや突破するだろう。

「覚醒」モードの勢いでSGに挑む

若手レーサーの成長は、計り知れない部分がある。新開航は昨年、10回の優勝を飾り、1着回数は125本もマークした。あっせんがルーキーシリーズ中心だったとはいえ、簡単に出せない。ふと、21年と22年のコース別データを調べると、さらに驚いた。1コースの1着率が70.6%(58回入って41勝)から、93.5%(78回入って73勝)まで伸びた。22年は全て3着以内に入り、3連対率は100%。さらに、2~4コースも1着回数が2ケタを数え、軒並み21年を上回った。G2初優勝、SG初出場もあったが、勝ちグセを多くつかんだのも大きい。以前、ある選手から聞いたのが、1着を多く取ると、周りの見え方が変わってくるとか。メンタル面も変化し、走りにも余裕が出てくる。まさに今の新開は覚醒しているか。2回目のSGでさらに成長した走りを見せたい。

第2の4番バッターが快打を連発する

佐々木完太は山口県の早鞆(はやとも)高校の出身。古豪として知られている野球部で白球を追っていた。「教えられたのは野球だけではなかった」と語るように行動規範を徹底的にたたき込まれている。それは例えば、人のためにする行動であり、スタンドプレーの回避。ゆえに、どこか地味に映るのだ。しかし実際は違う。昨年5月の大村モーターボート誕生祭では「準優が一番緊張しましたが、あとはなんとかなるだろう…」と平常心を取り戻し、グランプリレーサー井口佳典や吉川元浩を退けG2初Vを飾っている。さらに昨年1月からのコース別1着率は、1コース76.7%、2コース13.5%、3コース21.6%、4コース19.3%、5コース13.1%、6コース3.7%。インで強く、センターで勝負できるレーサーなのだ。それはちょうど第2の4番ともいわれる7番バッターのよう。高校野球ではしばしばこの7番が決勝打を放つことがあるように、平和島で快打連発に期待したい。

120期の勝率ナンバー1がSG戦に初登場

今どき、こんな心意気がある若手がいたのか…と佐々木完太には感心させられた。「アウトからでも勝てる選手になりたい」と、2021年から2022年にかけて4回出場したG1戦をほとんど6コースから戦ったのだ。その中にはちょうどF2を背負っていたとはいえ、地元徳山のヤングダービーも含まれている。目先の勝利よりも将来を考えた走りは、昨年5月の大村モーターボート誕生祭優勝(進入は1枠イン)という結果をもたらした。しかも、4月に浜名湖で初優勝を飾ってからわずか1カ月後、通算2回目の優勝がG2戦という離れ業でもあった。120期の出世争いでは前田篤哉に先を行かれていたが、養成所時代は7.77の勝率を残して同期のトップ。潜在能力の高さは疑いようもなく、いつブレイクしてもおかしくはなかった。今年2月の児島中国地区選でも優出こそ逃したが、予選を4位で通過し節間4勝マークの活躍。初登場のSG戦でも、その走りが楽しみでならない。

目標に掲げてきた夢舞台で成果を残す

佐々木は昨年5月の大村モーターボート誕生祭でG2初優勝。今回のクラシックの出場権をつかみ取って濱崎直矢、中村日向、末永和也とともにSG初出場を果たす。「大村で勝てて、(SG出場権を手にできて)うれしかった。もう少し早くSGに出たかったけど、平和島ではしっかりと走りたい」と、夢の舞台に胸を躍らせる。デビュー当時から目標に掲げてきた"SG出場"は今回でかなう。「もう目標を変えないといけませんね(笑)まだ自分の力が通用するかは分かりませんが、白井(英治)さんや寺田(祥)さんのように、しっかりと1着を取ってSGとかで通用する選手になりたい。山口支部の"第3の男"になりたい」。グランプリを含めSG3冠の白井やSGV2の寺田のように、いずれはSGタイトルをつかんでみせるー。そんな大きな目標へ向かって、平和島で"第一歩"を刻む。

秘密兵器を持って憧れのSGに挑む!!

4連続カドまくりで優勝! そんな荒業をやり遂げたのは昨秋の蒲郡ルーキーシリーズ。勝負駆けとなった予選ラスト走は、レーサー人生初の3カドに引っ張り一撃を決めた。翌日は準優前の一般戦を3カド、準優は4カドから強襲。ファイナルは三度目の3カドから鮮やかな優勝劇を演じた。「これまでは出足寄りの調整が好きで、今節も最初は出足型だったけど、3日目に伸び寄りの調整をしてみて成果がありました」とニッコリ。クラシックの権利があるので、そこへ向けて武器になるものがずっと欲しいと思ってました」と優勝以上に大きな収穫があった。そして、待ちに待ったクラシック。「僕の目標はSGで活躍することです」と目を輝かせていた。伏兵以上のマークが必要だ。

初めてのSGで成長した姿を見せる

現代ボートレースは枠なり全盛。デビュー間もないレーサーでも普通に枠を主張する…。佐々木完太も一般戦などは、枠なり進入が多かった。しかし、G1戦は昨年までダッシュ戦を貫いた。G1デビュー戦の20年2月下関周年から、昨年3月の下関周年まで計5節、スローに入らなかった。理由は1つ。「成長」のためだった。スタート、ターン、展開の読み、さばき…。あらゆる要素を攻略するには、外から勉強するのが一番。結果が出なくても、敗戦を今後の糧にして地力を強化させる。その思いが、少しずつ結果となって出たのが昨年春だった。同4月の浜名湖でデビュー初優勝を飾ると、翌5月の大村G2戦は一転してコースを主張。ハイパワーに仕上げて、特別戦初優勝を飾った。今年2月児島のG1中国地区選は、スローに入って予選突破。確実にレベルは上がってきた。そんな努力が初SGで実るか。

まくり差しの名手が演出する高い期待値

未来予想への営み…、それがボートレースである。ファンの多くは期待をもって仮説を立て、現実をもって検証する。獲得したいのは勝利の方程式。展開重視であれ出目尊重であれ、極致はそこにある。そういう意味で松田祐季が与える期待値は無視できない。「まくり差し屋」の典型だからだ。2022年1月から2023年2月21日までのコース別1着率は1コース77.0%、2コース21.5%、3コース32.6%、4コース10.2%、5コース10.1%、6コース5.1%。3コースの圧倒的強さが数値化されている。取材に基づけば、まくり差しは差しの延長ではないという。まくりを打ちながら一瞬で差し場を見出しスペースに飛び込む高等テクニックだというのである。G1初Vは2015年の第2回ヤングダービー(尼崎)だったが、昨年10月の児島周年で2つ目のタイトルを手にした今、さらに期待値は上昇している。

今期不調もSG戦が浮上のきっかけになるか

福井支部は選手数こそ少ないが、かつては岩口昭三、そして後に今垣光太郎という大スターを輩出。石田政吾、中島孝平らを加えてSG戦覇者は合計4人。松田祐季はそんな福井支部の中で、いずれはSG戦タイトルを…と期待される立ち位置にいる。デビュー5期目にA1級昇格と出世は早く、2015年の第2回ヤングダービーでは岡崎恭裕、篠崎元志、宮地元輝らを従えて優勝。そこから6年間もの沈黙を経て、昨年10月に児島周年でG1戦2勝目。SG戦出場は12回と決して多くはないが、2019年の児島ダービーで優出経験(5着)はすでにある。前期は勝率7.42、優出10回、優勝5回といずれも自己ベストの好調さを誇ったが、どうしたことか今期の勝率は6点を下回って優勝どころか優出さえもなく、A2級降格のピンチという状況でクラシックを迎えることになったうえ、平和島も2017年8月以来、実に約5年半ぶりの出場という二重苦。ある意味、真価を問われるシリーズになる。

北陸が誇る天才肌が悲願のSG取りへ挑む

松田は昨年、10月の児島70周年で2015年9月の尼崎ヤングダービー以来となる自身2度目のG1V。年間V5と活躍し、2021年後期の"A2降級劇"から見事に復活。本来の輝きを取り戻した。シャープな旋回はデビュー当時から評価が高かったが、さらに磨きがかかってきた。レーサーのタイプとしては天才肌。感性を大事にして、自らの旋回力を武器に難局を克服する。30日のF休み明けから始まった今年はリズムこそもう一つだが、12月の住之江グランプリへ向けての"SGロード"はここからが本番だ。平和島は2017年8月の企業杯以来と久しぶりだが、目下2節連続で優出中(3、5着)の水面だけに心配はいらない。切れ味の鋭いターンで2019年10月の児島ダービー以来2度目のSG優出、そして悲願達成を狙う。

地元SG出場へ高額賞金レースで気合駆け!!

選手にとってホームプールでビッグレースが開催されることは、自然と気持ちが高まる。加えてめったに開催されないレース場の選手にとってはいやが応でも高まっていく。三国のSG史を振り返ると、1995年にメモリアル、1998年と2015年にオーシャンカップを開催しているが、あの今垣光太郎ですらファイナリストに名前を連ねていない。それだけに、地元選手の優勝をファンや関係者は待っている。昨年、2度目のG1Vを果たした松田も候補の一人。SG12回、チャレンジカップも2019、昨年と2度出場している。三国でのSGチャレンジカップ開催については「目標ではありますけど、今は調子が悪過ぎるので考えられないです」と苦しい胸の内を明かす。確かに今期は期初めのフライングが響き2月22日現在でA1ボーダーに達していない。賞金の高いSGやG1で目いっぱい勝負してくることが想像される。「チャンスが来たらモノにしたいですけど、それまでは目の前の1走に集中します」と静かに牙を研いでいる。

「努力家」が約3年半ぶりのSG優出へ

人生において、流れのいい時、悪い時がいくつかある。それは、ボートレーサーにも当てはまる。エンジン抽選運がいい、レース展開が向くとか…。昨年8月末、松田祐季とレース場で会った。その節は凡機に苦しみ、予選落ちし、5日目の負け戦もインで勝てなかった。あらゆる調整をしても結果が出ず、ギブアップと言いたくなるが、松田はレース後もペラ調整に励み、もがいた。その執念で、最終日は5コースからまくり差し、1着でシリーズを終えた。パワー出しに正解を見つけようと必死に動いて、結果が出た。そんな姿を神様は見ていたのか、その数節後、10月児島で周年初優勝を飾った。メーカー機をゲットして、混戦の予選トップ争いを制し、準優、優勝と逃げ切った。努力は嘘をつかない。松田にぴったりはまる言葉だ。19年ダービー以来のSG優出へ、切れあるターンを見せる。

可能性を試す群馬の実力派

群馬支部の実力派。それが土屋智則である。SGVはないものの、G1はV2。昨年3月の常滑周年で優勝している。2023年2月14日時点で4328走し1076勝。1着率は24.9%に及ぶが、その数字はインと3コースが作り出している。2022年1月からの1コース1着率は79.4%、3コースは20.4%もあるのだ。攻めを基本としながら、状況次第で即座に反応できるレーサーである。絶対的なスタイルをもたないタイプは時に、「いろいろやって可能性を試してみたい…」と口にするが、その背景に遊び心があって面白い。勝負の世界で遊び心というと、やや不真面目な印象を与えてしまいかねないが、自由な発想とか挑戦する気概、新しい自分への意欲、ファンが楽しめるレースへの思いと言い換えたら俄然楽しみが増すというもの。独自の調整法を駆使し、グリップしながら押す感じになった時は手がつけられない。

くせ者という言葉がピッタリな個性派

くせ者ぞろいの個性派軍団・97期の中でも異彩を放つ1人。故人だが父の栄三さんは伊勢崎で長らくナンバー2の地位を保った強豪オートレーサーで、姉の千明もボートレーサーというレーサー一家に育った。智則は2017年に江戸川、昨年は常滑で優勝しG1戦は2勝の実績。SG戦出場は12回と決して多くはないが、オールスターとグランプリ以外のSG戦には全て出場経験があり、2018年若松オーシャンカップで優出(3着)もしている。同期の西山貴浩によると、「養成所時代の平均Sはコンマ12くらいで、スタートがめちゃくちゃ速かったし、何でも計算が異常に速い。それにペラではなく、タイミング一本でピット離れを飛ばします。97期で最初にSG戦を勝つなら山口達也か土屋だと思いますよ。スター性はないけど(笑い)」と、そのあらゆる才能に太鼓判を押す。クラシックは97期からただ1人の出場となるが、何かやってくれそうな雰囲気はある。

”オールラウンダー”土屋が悲願達成へ挑む

好相性の水面で躍動する。土屋は昨年3月のとこなめ68周年で自身2度目のG1優勝を達成。初タイトルをつかんだ2017年6月の江戸川62周年同様にオール3連対Vだった。昨年7月の芦屋MB大賞では優勝戦1号艇でコンマ01の痛恨のフライング。あれがなければ予備1位だった鳴門チャレンジカップ出場もあったが...。まあ、『たら、れば』を言っても仕方がない。西山貴浩、山口達也ら個性派がそろう97期生。西山のような"トーク力"はないが、どのコースからでも安定した強さをみせるオールラウンダーだ。SGは今回で13回目の出場。平和島は当地初優勝を飾った一昨年6月の一般戦を含めて3連続優出中(1、4、6着)と相性は良好。昨年は群馬支部の後輩の椎名豊が尼崎オーシャンカップでSG初優出初V。"今年は俺が"と秘かに闘志を燃やして、平和島に乗り込む。

昨年のSG敗退を肥やしに今年は羽ばたく!!

土屋の克服力が素晴らしい。蒲郡を担当していて、ここ数年間で一番相性が好転したのは土屋で間違いない。「(19年11月の64周年で)きっかけをつかむまでは得意ではなかったですが、それからはいいですね」と笑みがこぼれた。ターニングポイントを迎えるまでは一般戦でも優出歴はなかったが、その後は3連続優勝。いずれもファイナルは1号艇での勲章とラッキーな要素はなく、勝ち上がり内容も優秀だった。このように苦手意識を克服することは、プロフェッショナルの世界では重要な要素だろう。地力を強化した昨年は3年ぶりにSGの舞台に復帰。オーシャンカップから4つのSGに参戦したが、いずれも予選突破は果たせなかった。だが、悲観することは全くない。しっかりと対策を練って乗り越えてくれるはずだ。

「こだわり」のピット離れで進入から魅了

ボートレーサーはプロである以上、「こだわり」をレースで見せてほしい。スタート、ターン、さばき…。多くのファクターがある中で、ピット離れも重要な要素といえる。土屋智則も数年前からピット離れで飛び出すシーンが増えてきた。最初は地元の桐生だけかと思ったら、最近は各地で見るようになった。群馬支部だと毒島誠の強ピット離れが印象的だが、土屋も負けていない。最近だと2月13日の下関優勝戦だった。スタート展示はポンと飛び出し、2Mブイに到達するまででインを奪った。本番は枠なりの3コーススローだったが、本番も同じようにいかないのはタイミングも影響する。ただ、枠なりになっても、気持ちを切り替え、1着を狙ってシビアなターンを繰り出す。これが、土屋の「色」かもしれない。レーサー一家で育った〝血統〟が、今年初のSGで進入から見ものだ。

「出なくともやめるつもりはありません」

「こうなったらとことんやってみます」。近江翔吾のこの言葉を何度聞いたことだろう。中岡正彦が優勝した2020年2月の四国地区選で活躍、優出するもフライングに散った過去がある。その後の一般戦で劣勢機を引き続け敗退に次ぐ敗退を重ねてしまうが、整備調整をやめることなく最後の最後まで繰り返す姿があった。「どうしても出ないですがやめるつもりはありません」「何をやっても反応しませんが、とことんやってみます。これだけ出ていないとかえって勉強になります」「あたらしい課題が見つかりました。いい勉強になりました」などの言葉を残している。腐らず前を向く七転び八起きの人である。多摩川ヤングダービーVはその成果のひとつにほかならない。「一般戦を含めいつも必死でやっています」と語るようにレースグレードは関係ない。2度目のSG、クラシックとて変わらないだろう。

四国復権のキーマンが2回目のSG戦に挑む

最近のファンにしてみれば四国両県は女子王国というイメージかもしれない。しかし、かつては中道善博、安岐真人の両巨頭を筆頭に烏野賢太、濱村芳宏らがいて、後に田村隆信が台頭。SG優勝戦に四国勢の名前がない方が珍しいという時代もあった。一時の低迷期を経て、最近では片岡雅裕が台頭し、香川も徳島も将来が楽しみな若手がかなり増えた。昨年の多摩川ヤングダービーでエース機を味方にG1戦初優勝を飾った近江翔吾もそんな1人。生まれは大阪で中2の時に愛媛に引っ越し、親に連れられた丸亀で阿波勝哉の大外まくりに魅了され選手をめざしたという。昨年はヤングダービー以外にも優勝が5回。2023年前期勝率は自己最高の7.35をマークするなど、30歳を目前にして急成長を遂げた。SG戦は昨年の大村グランプリシリーズに続いて2回目の挑戦。地力がアップした今、ビッグネームたちを相手にSG戦でも好勝負を演じてくれるだろう。

充実一途の近江がSGタイトル獲得に燃える

平山智加、平高奈菜らを擁する香川支部は女子ボート界で一大勢力を誇るが、昨年は男子の活躍が目立った。8月の浜名湖メモリアルでSG初優勝を飾った片岡雅裕に続いて、近江が9月の多摩川ヤングダービーでG1初制覇。2010年11月のデビュー以来、12年目での悲願達成だった。香川支部の兄貴的存在の森高一真も2カ月続きのうれしい便りに笑みが絶えない。さらに近江のタイトル奪取には「アイツ(近江)もやっとや」と喜んだ。"やっとや"ー。その言葉は近江の実力を考えればもっと早くタイトルを取っていてもよかったということ。そして、それだけ大きな期待を寄せているという思いの表れにほかならない。前期勝率はキャリアハイとなる7.35をマーク。2月18日に30歳となる近江の進化はまだまだ止まらない。次はSGタイトル獲得へ。近江の"第2章"が始まる。

将来有望なヤングチャンプに注目だ!!

かつては若手の登竜門と呼ばれた新鋭王座決定戦。陸(おか)の上からライバル心をむき出し激しいバトルを繰り広げた。そして、同世代対決を制した選手はSGウィナーに成長するシーンも多かった。過去28大会で優勝者は26名。そのうち16名がSGVを成し遂げている。では、ヤングダービーに名称と選考基準が変わってからはどうなのか!? 昨年までの9年間でSGVを飾ったのは桐生順平のみだが、決して悲観する材料ではない。ボートレースはすぐに超一流になれる競技ではないからだ。多くの壁が立ちはだかり、乗り越えなければならない。熟成期間を刻んだ後にはSG優勝者がどんどん誕生するだろう。近江翔吾もそんな期待を背負う1人。持ち前のスタート力を武器に思い切りのいいレースで魅了したい。

躍進著しい香川支部から新星誕生へ

昨年のボート界は、滋賀支部の躍進が目立った。遠藤エミ、馬場貴也、丸野一樹と、グランプリに3人も出場した。今年はどの支部が活躍するか。個人的には香川支部に注目している。昨年は片岡雅裕がSGメモリアルを制し、GPも優出。さらに、若手では近江翔吾がヤングダービーを優勝し、GPシリーズでSG初出場を果たした。ほかにも、女子の平高奈菜や平山智加、中村桃佳や、男子は石丸海渡らA1級の逸材が多く出てきた。ひと昔前、森高一真が香川支部の奮起を願っていたことを思うと、近況の活躍は目覚ましい。特に、近江は昨年後半の勢いが素晴らしかった。優勝を重ね、23年はさらなる飛躍が期待された。原稿を書いているタイミングでは、1月尼崎の負傷で欠場中だが、2回目のSGとなるクラシックまでには間に合ってほしい。将来有望なイケメンレーサーが、存在感をアピールする。

「七転び八起き」の精神の人

「あきらめなくてよかった」。2022年1月、尼崎周年記念でG1初タイトルを手にした河合佑樹はこう言った。「チャンスを逃さず取れてうれしいです」とも語ったが、それには訳がある。2018年4月の常滑G2モーターボート大賞優勝戦で3コースから鮮やかにまくり差し先頭に出たものの道中逆転を許した過去があるのだ。その借りは翌年7月の尼崎G2モーターボート大賞で返したが、2020年10月のびわこG2秩父宮妃記念杯ではインから6着。2度も栄冠を取りこぼしているのである。そんなマイナスイメージを跳ね返したのが尼崎周年V。しかし、二度あることは三度ある。前回の常滑ダービーでSG初出場し準優に進出、2番手を航走しながら後続艇に突っ込まれ転覆失格となってしまったのだ。先輩・菊地孝平が「ほんとうにがんばっている」とその努力をたたえて励ましていた。七転び八起きの精神で奮闘するアスリートがここにいる。

まだまだ出世が見込める静岡支部の隠し玉

遠藤エミを筆頭に前田将太、山田康二、桑原悠、上野真之介らを擁する102期の一員。遠藤のSG戦制覇には、「自分はまだSGにも出ていない時だったので、本当にびっくりしました」と刺激を受けるとか、そういう次元ではなかったという。2019年に尼崎でG2戦、そして昨年も同じ尼崎でG1戦を制覇し、待ちに待ったSG戦初出場は昨年10月の常滑ダービー。そこからチャレンジカップ、GPシリーズと立て続けに出場を果たし、今回のクラシックは4回連続4回目のSG戦挑戦となる。菊地孝平に言わせると、「本当なら今頃は深谷知博と切磋琢磨(せっさたくま)してないといけない素材」と飛躍に期待を寄せる逸材。もちろん、本人も「今年は何とか上の人たちに食らいついていきたい。まずはSG戦の権利を多く取りたい。クラシック次第でグラチャンがまず見えてきますから」と鼻息は荒い。優出目前でアクシデントに見舞われたダービー準優のリベンジにも期待したい。

年男の河合祐樹がSG開幕戦で躍動する

年男がさらなる飛躍を誓う。河合は昨年1月の尼崎69周年で悲願のG1初Vを達成。SG初参戦のとこなめダービーは準優で無念の転覆失格に終わったが、鳴門チャレンジカップ、大村GPシリーズにも出場するなど大舞台で経験を積んで、しっかりと"土台"を作ってきた。2023年のSG初戦はこれまで以上の活躍をみせる場となりそうだ。「以前と比べると精神面が強くなっていると思う。昔はF3になったりいろいろあってメンタル的にキツかったときもあったけど、今になってみればあの苦しかった経験が糧になっていると思う」。昨年は102期同期の遠藤エミが大村クラシックで優勝を飾るなど歴史的快挙を成し遂げたが、今度は自分が-と燃えているだろう。前検日(3月15日)前日の14日が36歳のバースデー。年男(卯年)の今年は“ぴょん、ぴょん”と跳んで頂点奪取の一年とする。

活躍する同期に追いつけ追い越せ!!

昨年の尼崎周年では102期で6人目のG1タイトルをゲット。「ちょっと諦めてしまった時期もあったけど、諦めなくやってきて良かったです」と喜びをかみしめた。これまでの道のりを振り返ると決して順風満帆ではなかった。デビュー8年目にF3をしてしまいB2に陥落。2019年には7月にG2MB大賞(尼崎)を制覇したが、翌月江戸川でのペナルティーによりSG出場を棒に振ってしまった。それだけに、この優勝は何よりの励みになった。昨年秋にはダービー出場を果たし、チャレンジカップ、グランプリシリーズとSGロードに乗った。特にダービー準優では2マークの不利で転覆してしまい同期7人目のSGファイナリストはお預けになったが、今後の可能性を示す一節だった。機敏なコーナーワークは必見だ。

ボート界の「イケメン」が絶品ターン発揮

昨年12月、ある新聞で河合佑樹の写真を見た。本当にイケメンだなぁと年齢を確認したら、二度見してしまった。3月で36歳になるとは思えないほどのベビーフェイス(死語?)にびっくりした。しかし、レースになると、想像以上の絶品ターンを繰り出す。今回のSGクラシック出場権を得たのは、昨年1月の尼崎周年での優勝だった。モーターが良かったとはいえ、シリーズは8戦6勝、2着2回のオール2連対。予選では3コースからまくったり、5、6コースからまくり差したり、まさに縦横無尽だった。仕上がった時は、誰も止められない。そんな河合は昨年10月、SG初出場だった常滑ダービーは、準優で2番手を走りながら、2Mで他艇ともつれて無念の転覆失格。SG初優出を逃した。悔しい思いは結果で晴らすしかない。23年最初のSGは、今後の大舞台へ飛躍するためにも重要だ。

「あの時の顔がいい」

「…予想してください」。2018年4月、からつ65周年記念の優出インタビューで宮地元輝はこう語った。一瞬口ごもったようすに、ただならぬ決意を感じたが、その推測は想定をはるかに上回る強烈な前付けとフライングによって砕かれることとなる。常人なら心が折れてしまうだろう。しかし、極限を知る男はさらに己を追い込んでいくことになる。以降も、奇想天外と称される戦いぶりを通したのである。そして、「どうしてもここで勝ちたい」と臨んだ2022年9月の福岡周年、「すべての照準をここに合わせた」と報道陣に語ったように身も心も無駄を取り除き絞りに絞りG1初Vを成し遂げる。後日談だが、「あの時の顔がいい…」と自ら振り返っている。そして、その3カ月後にグランプリシリーズでSGを制すことになる。苦難に耐え続けた男の歓喜に涙したファンは、そのプロセスにこそ価値があると知っている。

ターンの研究に余念がない佐賀の隠し玉

あの峰竜太も認める佐賀の隠し玉が、昨年は福岡周年でG1戦初制覇を成し遂げると、まだ3回目の出場だったSG戦(大村GPシリーズ)をも制覇。そのユニークなキャラクターもファンに知れ渡り、一気に全国区となった。デビュー戦の直前、ストレスから体重が60キロを超えてしまい、「プロとして恥ずかしい」と先輩たちから唐津でのデビュー戦出場を止められた選手が、その後の努力でSG戦覇者の仲間入り。地元の唐津よりも思い入れが強い福岡での周年は、出場が決まった時点から「絶対に優勝する」と決意して1カ月前から減量に取り組み、見事に夢をかなえた。大村でSG戦を優勝した直後のコメントは「通常運転」。要するに減量はせず、いつも通りの走りで…という意味なのだが、それをあっさり口にするのがまた宮地らしい。「GPに出場したい」などの具体的な目標は立てないタイプ。今年もこれまで通り、究極のターンを模索する日々が続く。

宮地が2023年のSG開幕戦を熱くする!

一気にブレイクした。宮地は昨年9月の福岡69周年で悲願のG1初Vを達成。限界まで減量してつかんだ執念のタイトル奪取劇だった。さらに12月の大村GPシリーズでSG初優出V。3コースからコンマ09の好スタートを決めてからのまくり差し。これまで磨き続けてきたスタート力とターン力を大一番で見事に発揮した。ゴール手前から何度もガッツポーズを繰り返して喜びを表現した。デビューから今まで"紆余曲折"があったからこそ、熱い思いがあふれたのだろう。先日、ボートレースからつで行われたSG優勝報告会で「(ゴール前のパフォーマンスは)いろいろ苦労があったんで『見たか』って気持ちで。今まで真面目にやってきて良かった」と思いを明かしていた。「去年が飛躍の年だったとしたら今年は定着の一年にしたい」。まずは2023年のSG開幕戦で大暴れする。

昨年が飛躍の一年なら今年は定着の一年!!

 昨秋に福岡周年を2コース差しで優勝。宮地にとっては博多は憧れの街で「辞めるまでに一度は取りたいレースだった」と話していた。ヒーローインタビューでは「自分にとってはここでG1を優勝することが最高峰。SGは延長上です」と振り返っていたが、年末にはグランプリシリーズをまくり差しで駆け抜けた。福岡はG1を優勝前にすでに4Vを挙げていたように得意水面だったが、大村はデビュー時から数多く走ってきたが、なかなか優勝することができなかった。そこをここ一番で克服したことにより更なる進化を遂げていることを証明した。「自分の限界がどこにあるのかを探しています」とキッパリ。研究を続けるターン力は秀逸でSGでもコース不問の突き抜けが可能だ。

100期の「秘密兵器」がいよいよ覚醒へ…

ボートレーサーは半年に1度、新たな期がデビューするが、数年おきに逸材ぞろいの期が存在する。昔だと60、69期。その後は田村隆信、井口佳典ら「85期銀河系軍団」が代表的だった。最近では、100期の注目度が高くなってきた。1月25日現在の登録選手数は30人。男子は桐生順平を筆頭に、女子は平高奈菜、鎌倉涼、川野芽唯らが華々しく活躍している。その中で、宮地元輝は最近、一気に躍進した。昨年9月の福岡周年で初G1制覇を果たすと、同12月の大村グランプリシリーズでSG初優勝した。記念競走を制した昨年の2節は2、3コースからの勝利。勢いに乗った時の強さは誰にも止められない。結果が出ない時との落差が激しいが、今年はSG平和島クラシックをはじめ、大舞台でのレースが続く。タレントぞろいの100期で、さらに輝くためにも、重要な年になるはずだ。

ファンが証言する「ほんとうにいい男」

「こういうのを、いい男っていうんです」。幾度も聞いた馬場貴也評である。「果てなき向上心」「途切れない集中力」「あきらめない粘り」、そして「分かりやすいレーススタイル」と「人を大切にする姿勢」がこの人物を分厚くさせている。それでいて爽やかだ。冒頭の言葉を口にするのは人生経験を重ねてきた年配のファン。それだけに価値がある。滋賀支部リーダーとして、自分のことをさておき他人を慮(おもんばか)る経験を積むことで「強くなれました」とさえ語る。2018年の芦屋チャレンジカップでSG初Vを果たし「景色が変わりました」と語っていたが、今や誰も見たことのない世界に到達している。追われる立場なのは賞金ランキングだけではない。SGレーサーをして「あのターンはマネできない」と言わしめている。そのハイスペックターンは速くだけでなく、「感動」を呼ぶのだ。発祥の地・大村がその時を待っている。

グランプリ史上5人目となる快挙に挑戦!

奇数コースからのまくり差しの切れ味なら峰竜太や原田幸哉、池田浩二らとトップを争うほどのテクを持つ馬場貴也。思わず「うまい!」と声が出るレースを何度見せてもらったことか。10月の常滑ダービーでは2コース差しで優勝したが、今年7回の優勝のうち、実に5回がイン以外での優勝と、以前にも増して、どこからも何でもできるオールラウンダーとして磨きがかかってきた。4回目となるグランプリは獲得賞金1位での出場。むしろ、今までなぜトライアル1stからの出場ばかりだったのかが不思議なほど、レースのうまさが際立っていた選手。今年はレースのうまさに結果もついてきて、いよいよ手がつけられなくなるレベルに達してきたかもしれない。イン戦以外でも1着が取れるのは、短期決戦で枠番抽選もある特殊なレース構成のグランプリ向き。過去36年の歴史の中で野中和夫、植木通彦、山崎智也、峰竜太のわずか4人しか達成していない、賞金1位からのグランプリ制覇に挑む。

賞金ランク1位の馬場がGP初Vへ挑む

グランプリ出場4回目となる馬場貴也が悲願達成へ挑む。今年は序盤からG1で優出、優勝するなど賞金を積み上げると10月の常滑ダービーで3度目のSGV。賞金ランクは堂々の1位。一年を通して活躍を続け、ボート界をけん引してきた。「トライアル2ndからの出場は初めて。1stの戦いやそこで脱落するしんどさ、つらさは知っているし絶対に2ndに入ろうと思って頑張ってきました」。いろいろな思いをパワーに変えて戦ってきた。ボート界トップレベルのターン力に加えて今年は流れも最高だ。「(GPは)ここ数年で本当に取りたいという思いが出てきたし、今年はこれ以上ないチャンスだと思っています。滋賀支部に初めて黄金のヘルメットも持って帰れるように全身全霊をかけて取りにいきたい」。ボート界の"巨人"というべき存在となった馬場が、満を持してGP初Vへ臨む。

感謝を原動力に超速ターンで金冠奪取だ!!

SG優勝者のタイムスケジュールはこんな感じだ。レース直後はJLCが生の声を届け、表彰式があり、そして記者会見が行われる。新聞はどうしても時間差が生じてしまうため、質問内容がオーソドックスでは映像媒体に負けてしまう。各紙の記者はそこに工夫を加え、ちょっといい話を引き出そうとする。ダービーで3度目のSG制覇を達成した馬場は、その記者会見で滋賀支部の躍進について訊かれると「今があるのは諸先輩方の礎があってこその僕たちだと思ってます」と明言。感謝の言葉が尽きなかった。また、感謝と言えば、常滑では久しぶりに公開勝利者インタビューを実施。「ファンの方たちの熱気を味わうことが出来ました。やっぱりこれだと思いました」とモチベーションが高まったことを強調していた。常に「感謝」を胸に結果を残し続ける姿はボート界のトップにふさわしい。

〝最強支部長〟が最速ターンで頂点へ

今や〝最強支部長〟といっていい馬場貴也が、賞金ランク1位でグランプリ2nd進出を果たした。今から4年半前の18年7月、支部長になった際は、馬場自身が驚きとともに、レースと支部の仕事を抱え、多忙な日々を送っていた。「支部長になったのは、自分が強くなれるいいチャンスかなと思います」。以前、こんな話を聞いたことがある。モチベーションを高め、二足のわらじをプラスに考え、大舞台で結果を出す。並大抵の努力ではできない。今年も滋賀支部の後輩、丸野一樹が中心となって活動する「マルトレ」に参加し、体を徹底的にしごいた。そんな馬場は、これまでトライアルに3度出場したが、いずれも予選を勝ち抜けなかった。1回目の18年は2ndで惜しくも敗退。しかし、今年はターンに凄(すご)みが出て、SGダービーを制覇。今年こそ、滋賀支部に黄金のヘルメットを持って帰る。

一分の一の世界に生きる勇者

「真剣勝負します!」。山口剛は常にこう語る。常に…、とは優勝戦であろうが一般戦であろうが変わらないという意味である。根底にあるのはファンへの敬意。券に種類はあっても、カテゴリーやランク分けがないのが勝舟投票券、レースの重みは一緒だ。だからこそ、状況にかかわらず取材応対も丁寧なのだが、その根底には「一分の一」の考え方がある。「彼は学生時代、体操をやっていたでしょ。勝負強いのはそのせいだと思う。体操っていう競技は同じ演技を何回もできない。一回勝負だからね…」。元レーサーで、今も浜名湖の解説者として活躍している柴田稔さん(82歳)の見解だが、山口剛本人もそれを認め「確かにそうですね」と教えてくれた。フライングや事故点を抱えていようが、決して流されない姿勢の源流である。そうしてみると、SG優勝なしで賞金ランキング2位の価値は計り知れない。

SG戦3連続準優勝中。4度目の正直なるか

今年、これほど安定感を発揮した選手がいただろうか?年間5回目開催のSG戦、8月のメモリアルが終了した時点で、G1戦は1勝していたとはいえ、SG戦制覇なしで賞金ランキングトップに躍り出てファンを驚かせた。そのメモリアルからダービー、チャレンジカップとSG戦で3大会連続準優勝という史上初の快挙も成し遂げる。その後、ダービー制覇の馬場貴也に抜かれたとはいえ、賞金ランキングは2位で2010年以来、2回目となるグランプリ出場を決めた。その年のSG戦優勝なしで、トライアル2ndの1号艇を手にしたのは2018年の峰竜太以来の快挙でもある。これまでSG戦制覇は2010年平和島クラシックのひとつだけというのが信じられないが、今年の安定感を思えば、12年ぶりのSG戦制覇がグランプリであっても誰も驚かない。大村は2016年に周年制覇の実績もあり、相性も抜群。2ndからの登場と、まずは最初の1号艇の利を大いに生かしてもらいたい。

進化を遂げた山口がGPVへ真剣勝負だ

SG初Vを飾った2010年以来、2度目の夢舞台参戦だ。強さと安定感を増した山口が身上の真剣勝負で黄金のヘルメット奪取に挑む。「(今年は)SGは勝てなかったけど、周りから"グランプリに残しているんだろう"って言われるし、最後にGP優勝という形でお客さん(の期待)に応えることができれば」。今年は実戦足重視で粘り強く走ってきた。フライングを切らず事故も極力減らし、着実に賞金を稼ぎ堂々2位での選出。近年の山口の成績を考えるとまるで別人だが、これまでとは「スタイルを変えた」という。広島支部のエースと期待されながらもGPの舞台に戻れず「これまでの自分では限界だと思って。強い人はどんな仕上げ方をしているか、その真似をしたんですよ」。もちろん実力があるからこそ成せる業。大村初のGPでは進化を遂げた"NEW山口"がお待たせのグランプリVを達成する。

悔しい気持ちを胸に究極の真剣勝負だ!!

 今年は11月末時点で18優出2優勝。一年を通じてコンスタントに活躍をしないとたたき出せない数字だが、明らかなターニングポイントがあった。それは地元で行われたオールスター。連日、気合の入った走りで予選を通過したが、準優勝戦は2コースからコンマ24と痛恨の立ち遅れ。地元の勝負どころで6番手発進は、さぞ悔しかったに違いない。だが、ボートレース界のいいところは悔しさを晴らす機会が次から次へとやって来るところにもある。翌節の常滑周年では通算9度目のG1Vを味わった。グラチャン以降はSG4優出と存在感を示し、チャレンジカップの1号艇で銀メダル。SGでは悔しい思いを続けてきただけに、グランプリ制覇しか考えていないだろう。真剣勝負の集大成だ。

今度こそ初のGP制覇で「発信」を…

一部のボートレーサーらは、レース参戦がない時にはSNSを使って発信している。プライベートや家族ネタなど、ネタは尽きない。山口剛もSG、G1の転戦で忙しい中、メッセージをアップしているが、中身がすごい。直前まで走ったレースの振り返りを細かく説明。モーターの仕上がりや、展開面の解説、なぜSG優勝戦で負けたのか…など、ファンに理解してもらおうと、分かりやすく書かれている。現役のトップレーサーが、ここまで詳細に伝えられるのも、今の時代ならではかもしれない。自分の感情込みで言葉を打って、写真のチョイスや画面のレイアウトも素晴らしい。発信力を強めながら、レースではSGで3大会連続のファイナル2着など、今年は各地で安定感ある走りを見せた。賞金ランク2位でトライアル2ndの1枠からスタート。12年ぶりの夢舞台で、GPも「真剣勝負」で1走入魂する。

状況を受け入れ消化できるスケールの人

2022年グランプリの初出場者は6人いるが、その1人が上條暢嵩である。記念タイトルなしで賞金ランキングは16位。1月から11月までの期間勝率も7.20と決して高くない。クラシックは優出2着としたが、その後のグラチャン・ダービー・チャレンジカップはファイナル進出を果たしていないのに、である。七不思議とさえ言えそうだが、そこには座右の銘の「気持ちで負けない」精神がある。負けたくないのは対戦相手であり自身の弱音に違いないが、上條暢嵩には「状況に負けない」強さがある。例えばそれはモーター抽選に対する考え方であり、予選敗退後の取り組みであり、外枠での戦いぶりに表れている。今を受け入れ消化し、前を向くのだ。思うようにいかない時、消化できなければ苦しくなる。しかし、できているからこそ静かでスマートなのだ。大切に積み上げてきた一戦一戦が誇らしく感じる若者は、見ていてすがすがしい。

クラシック準優勝の水面で再び大暴れの予感

ボート王国の大阪支部には有望な若手が本当に多いが、その筆頭とも言えるのが上條暢嵩。父・信一さんも元選手で兄の嘉嗣と共に父の後を追いかけて選手になった2世レーサー。父の信一さんも3回ほどSG戦には出場しているが、暢嵩は初出場となる今回のグランプリですでにSG戦出場は12回目。父が手にできなかった記念タイトルも2019年下関G1ダイヤモンドカップで手にしており、すでに父超えは果たしている。昨年は優勝6回で3月の大村クラシックに出場し、そこで準優勝。この時点で賞金ランク上位に浮上したのが大きく、今年の優勝は一般戦の2回だけだが、G1戦で2回、G2戦でも1回の優出があり、着実に賞金を積み重ねて記念制覇なしで賞金ランク16位での出場を決めた。舞台は再び大村水面。初出場でも気後れするタイプではなく、枠を問わない強さもあるので、パワー面で優位に立てれば面白い存在になる。

"浪速のプリンス"が下克上Vを狙う

グランプリ初出場組はなんと6人。その人数こそ、ニュースターが次々と誕生し強烈な"新風"が吹いた今年のボート界を象徴している。上條はそんな1人だ。SG初Vを飾って"一発ツモ"を決めた遠藤エミ、椎名豊、片岡雅裕と違って着実に賞金を積み上げてきた。「もしかして行けるかもって思い出したのが10月ぐらい。大村クラシックの準優勝があったのが大きいんだけど、今年序盤はG1のあっせんが少なかったし、行けるとも思っていなかった。結果的に行けてよかったし、意識してからの方が成績もいい」。プレッシャーをハネ返して見事に夢舞台の出場をかなえた。「今年はいろんな経験ができたし、自分の中ではすごい成長ができて一年がめちゃめちゃ早かった」。これまでで一番充実の一年は下克上でのグランプリ初Vという形で締めくくってみせる。

SG準V水面でジャイアントキリングだ!!

うれしい夢舞台への参戦だ。今年はクラシックでSG初優出。8度目の挑戦で優勝戦まで勝ち上がった。頂点には手が届かなかったが、銀メダルを獲得。これにより、これまでより一層グランプリを意識する一年だった。今年のベスト18選手を見渡すとSGもしくはG1を優勝せずにグランプリへ駒を進めたのは上條と瓜生正義の2人。歴戦の勇者である瓜生にとっては何ら険しくなかったが、グランプリ未経験の上條にとっては長い道のりだったのだろう。グランプリの値打ちは、いざトライアルが始まってからの経験も貴重ではあるが、この舞台をめざして一年間の“予選”を走り抜くことの方が大きいと考える。サッカーのワールドカップではFIFAランキング下位のチームが番狂わせを起こしている。春に沸かせた大村で成長した姿を披露する。

師匠に恩返し…上條暢嵩が初GPで躍動

ボートレーサーは、先輩後輩の上下関係が厳しい。礼と節を重んじ、特に師弟関係だとなおさらだ。上條暢嵩は兄・嘉嗣とともに、野添貴裕さん(引退)の師事を受けている。数年前、住之江のピットでは、ペラ修正室でよく師弟2人が並んで調整する姿があった。野添さんといえば、今でも現役レーサーがアドバイスを求めるほど、ペラの調整技術に長けている。その師匠の教えをしっかり受け継ぎ、バリエーションを増やした。デビュー4年と少しで初優勝、同7年でG1初制覇。今年3月には大村クラシックでSG初優出と着実に階段を上がり、賞金ランク16位(チャレンジC終了時)で初のグランプリ(GP)出場を果たした。師匠は引退した後も、愛弟子のレースを確認してSNSなどでもメッセージを送っている。そんな師匠に恩返しするためにも、初のGP舞台はトライアル1stから暴れ回る。

普通の人から勝負師に変身!

「ターンが違いすぎる…」。およそ4年前、本多宏和はライバルとの差をこう表現した。それは自分に対する怒りにも似たもの。このままでは終われないという強い意志が現在の活躍となり、SG初出場にむすびついている。そもそもポテンシャルが高くセンスもテクニックも優れているが、「普通」で優しすぎる考え方からの脱却によって「勝負師」の香りを醸し出すようになった。モーター調整についても、前操者の方向性を尊重することで結果を出すようになってきたのだ。「前に乗った選手が一生懸命取り組んだ調整には理由があるはず…」というのである。全体が俯瞰(ふかん)できるからこそ、自分の方法論を捨てることができるのだ。世界が大きい。攻めるべき時は果敢に攻め、守りも堅いレースの背景にあるものである。初舞台の地元常滑は過去V4。特徴を知り尽くしている水面で、抱いてきた怒りを爆発させるに違いない。

昨年からの勢いを初のSG戦に持ち込む

今年3月、女子初のSG戦覇者となった遠藤エミと同期の102期。この期は100期以降としては人材が豊富で、すでに7人がSG戦の舞台を踏んでいるほか、G1戦覇者が桑原悠、山田康二ら6人。G2戦覇者も前田将太、河合佑樹ら4人を抱える。本多宏和は2014年後期からA1級の常連(A2降格は2期だけ)になっているが、G1戦は28節の出場で優出なし。G2戦は4節の出場で優出が1回と、いわゆる記念戦線ではまだ活躍がない。しかし、昨年は優勝5回とブレイク。残念ながら出場ボーダーが異常に高かった3月の大村クラシックへの出場はかなわなかったものの、2022年前期に7.18と自身初の7点勝率を残すと、同年後期も7.44と自己最高勝率を残し、地元常滑開催のダービーで、ついにSG戦初出場を決めた。常滑は通算21回の優勝のうち、最多となる4回の優勝を誇る得意水面。好モーターを手にすれば、伏兵以上の活躍が期待できるかもしれない。

地元で迎える初めてのSGで名を上げる!

地元で迎える夢の大舞台に全身全霊でぶつかる。本多は今シリーズがSG初出場。102期同期の遠藤エミや前田将太、上野真之介、山田康二らと比べると時間はかかったものの、これまで主に一般戦で結果を出しながら地力を磨いてきた。前々期、前期ともに7点勝率(7.18、7.44)をマークするなど、年間5Vを飾った昨年から一気に本格化ムードが漂う。好調な要因はプロペラ調整が当たっていること。あとはSGで通用するかどうか...だが、今年3月に7戦6勝、2着1回の好成績で優勝を飾っている地元・常滑なら水面的なアドバンテージがありそうだ。東海地方出身で"本多姓"と言えば、戦国武将の本多忠勝が有名だが、こちらの本多も"戦国ダービー"で結果を出して名を上げたいところ。地道な努力が結実するシーンに期待したい。

絶好の舞台でSG初チャレンジだ!!

「全ては予定通りです」。ダービー初出場を前に本多は力強く話した。何が予定通りかと言うと、デビューからSG初出場にこぎつけるまでだ。「僕はうまい方ではなかったので、すぐには(SGに)出られないと思っていました」と吐露。確かにデビューから9期間はB1暮らしとA1へ昇格するまでに時間を要したが「それでも、少しずつでも上達していけば…」と思い、ターンの練習とプロペラを中心としたモーター出しの研究に取り組んだ。また「(原田)幸哉さんにはボートレースというものを一番教えてもらいました」と感謝する。その原田は今大会には出場しないが、きっと本多の走りを見守っているに違いない。常滑は通算4優勝と最多Vの水面に加えて、冬場の調整を得意としている。ダービーも振り返ったら「通過点」となるようなシリーズにしたい。

102期の〝秘密兵器〟が初のSG舞台へ

今年は102期の大躍進が際立っている。最初のG1だった1月尼崎センプルカップで河合佑樹が制すると、3月大村クラシックで遠藤エミが女子レーサーとして初のSG制覇を成し遂げた。さらに7月江戸川G2モーターボート大賞を山田康二が優勝し、前田将太や上野真之介、桑原悠、高野哲史も大舞台で奮闘している。そんな当たり年に、102期の〝秘密兵器〟本多宏和がダービーでSG初出場を果たす。昨年はキャリアハイの年間5度優勝。今年は3度(10月19日現在)の優勝。全て一般戦ながら、どのレース場でもモーターのパワー出しが素晴らしい。序盤から調整力、ペラ修正力の高さがうかがえる。また、気配がいいと、スリット隊形も有利となり、攻めの姿勢が多くなる。一般戦ではまくり、まくり差しが多かったが、SGの舞台でどこまで通用するか。強気の攻勢を見せてほしい。

4コース1着率44%超の男

すごいデータがある。過去1年間の4コース1着率44.1%という驚異の数字だ。実現しているのは宮之原輝紀である。2019年の最優秀新人選手は養成所118期生。リーグ戦勝率8.12をマークし、当時の教官に「超エリートタイプ」と言わしめた逸材だ。現在7年目、24歳の若者がめざすのは「スピード戦」。しかし、ただ握って回るだけのレースを指しているのではない。厳しく鋭い旋回で勝利したいのだ。「ターンになっていません…」と、時に口にする背景である。2019年以降、トップルーキーに指名されること4年連続。周囲の期待に応えるようにレースを磨いてきた。44.1%は、難しいといわれる4コースだからこそ価値があり、その他コースの戦いぶりに影響を与えるのだ。困難から逃げず王道を行かんとする宮之原輝紀。世代のトップランナーとして、厳しくも威風堂々のレースを初のSGボートレースダービーで披露するに違いない。

118期のナンバー1がついにベールを脱ぐか

かつての69期や85期のように近い将来、SG戦に大人数で乗り込みそうな逸材の宝庫が118期。すでに板橋侑我と栗城匠がG1戦タイトルを持ち、今年は新開航がG2戦を含む優勝9回で、年間最多勝利争いでもトップを独走中。そんな118期を養成所時代からグイグイ引っ張ってきたのが宮之原輝紀。修了レースで優勝こそ逃したが、リーグ戦勝率は8.12をマーク。先にG1戦を優勝した栗城でさえ、「雲の上の存在でした」と話すほど。今年大ブレイク中で仲もいいという新開に話を聞いても、「研修所時代は最初からすごくうまくて、絶対に勝てないと思わされる存在でした。とにかくターンに癖がなくてうまかったんですよ。初めてのSG戦でもいけると思います。彼ならどこを走っても通用すると思うので」と、同期の活躍を期待している。3年前の最優秀新人が、ついにSG戦デビューを果たし、全国のファンにアピールするチャンスを迎えた。

“東都の次期エース”がSGに初登場

“東都の次期エース”が存在感を示す。宮之原は今回のボートレースダービーでついにSG初出場を果たす。2016年5月のデビュー戦からこれまで約6年半が経過。2019年には最優秀新人に輝くとともに、そこから4年連続でトップルーキーに選出されており、今後さらなる飛躍を期待される存在だ。今年は3月の江戸川一般戦から7月の多摩川一般戦まででなんと9場所連続で優勝戦に乗ったが(そのうち、優勝は4回)、切れ味の鋭かったターンにさらに磨きがかかった印象を受ける。SGは今回が意外にも初出場だが、G1はこれまで3優出(5、4、6着)。「優勝戦に乗れたことはうれしいけど、それで満足することはないです。そういう舞台でもっと結果を出すことが目標なので」。あくまでもG1やSGの舞台で勝つことが目標。“東都のエース候補”がSGでどんな走りをみせるか、注目したい。

大躍進の理由はスタートの品質向上!!

怒とうの追い込みでSG初出場だ。自己最高勝率は今期適用の6.89。これまで一度も7点に届いていないのに、なぜ勝率上位のダービー切符をゲットすることができたのか!?それは、選考締め切りのラスト4カ月間で後方一気を決めたから。3月終了時点でダービー勝率は6.60だったが、その後の4カ月間を7優出4V、8点台半ばのアベレージで見事に届かせた。「スタートのやり方を変えました。これまでは際(きわ)を狙っていたけど、質のいいスタートを心掛けるようにしました。そこからですね」と成績が格段に上向いた理由を明かした。SG戦線で戦うためにはスタートの品質は絶対条件。それを身につけたことで大舞台で走る権利を得たのだろう。宮之原は同期の栗城匠や板橋侑我が早々とG1ウィナーとなり、また競馬のジョッキーとの交流もある。各方面から刺激を受け、今、全力でダービーに挑戦する。

同期同郷の「ライバル」超えへ…

宮之原輝紀の原稿を書く時は、どうしても栗城匠の名前が浮かんでしまう。同期で同じ東京出身のレーサーとして、お互いに比較されて、意識もしてきただろう。どちらが先に大舞台へ…。その点では、わずかに栗城が「先着」した。昨年5月の平和島G1を制し、今年3月の大村クラシックでSG初出場を果たした。宮之原は、今回のダービーで初のSG参戦となる。この点でも栗城が「先着」した。しかし、栗城より勝るものがある。今年の優勝回数だ。ルーキーシリーズで勝率を稼いだとはいえ、既に4回も優勝。逃げばかりではなく、6月福岡では2コース差し、7月多摩川では4コースまくりも決めての優勝。多彩な決め手を使えるのは、非常に有利といえる。猛者(もさ)ぞろいのSGで、どれだけターンが通用するか。ハンドル勝負に磨きをかけて、初の大舞台で名前を大いに売ってほしい。

自称「自在派」は丸く鋭く旋回する

今年8月末から9月初旬にかけて開催された児島のG2児島のまくりキング決定戦で、丸岡正典は自らを「自在派」と表現した。柔軟な戦法を誇るダービー王は決して“まくり屋”ではない。柔らかみあるターンはスムーズ。力強さとは対極にあるといっていいだろう。近年、野球界では力感のないフォームをヨシとする風潮があり、実際そういう投手が活躍している。肩をいからせ鬼の形相で投げる球はとらえ易(やす)いというのである。それよりもそっと投げているようで手もとでキレるボールの方がはるかに打ちにくい。丸岡正典の旋回と重なる点である。「いつ来るか」「どう来るか」…分かりにくい上に瞬間的な速さがあるため相手はやりづらいのだ。時に、見えないところから繰り出されるまくり差しは天下一品。丸くて鋭いターンである。2008年丸亀と2012年福岡のダービー王は36期連続A1中、実力のほどが分かる。

今村豊に並ぶ3回目のダービー制覇へ挑戦

1986年にグランプリが創設されるまで、SG戦はクラシック、オールスター、メモリアル、ダービーの4つだけで、4大競走もしくはビッグレースと呼ばれていた。この時代、SG戦の最高峰といわれていたのが勝率上位の選手だけが出場できるダービー。1987年からの4年間に3回の優勝を果たした今村豊さんは常々、グランプリよりもダービーの方に思い入れが強いという話をしていた。丸岡正典はそんなダービーを2008年、2012年と2回も制覇している「ダービー男」だ。ところが2020年、2021年とSG戦には1回ずつしか出場しておらず、今年も優出5着だった尼崎オーシャンカップに続いてまだ2回目のSG戦。ダービーとなると2013年以来で実に9年ぶりの出場となるが、それだけ近況は調子を上げている証拠。常滑は浜名湖と並んで優勝が5回と、地元住之江に続いて2番目に優勝が多い得意水面。「ダービー男」が10年ぶりのSG戦制覇に挑む。

"浪速のダービー王"が3度目Vへ突き進む

思い出の水面で"ダービー王"が躍動する。丸岡は2008年のまるがめダービーでSG初優出すると、勢いそのままに瓜生正義とのデッドヒートを制して初タイトルをつかみ取った。ボート史に残る大激戦といえば1995年の第10回グランプリの植木通彦さんと中道善博さんのレースが有名だが、丸岡と瓜生の熱戦も、今後語り継がれる名レースと言っていいだろう。当時はまだG1さえ勝っておらずダービー出場が目標だった丸岡が一気にスターダムにのし上がった瞬間だった。そして12年の福岡ダービーで2度目のSGVを達成し、大会イメージは文句なし。さらに開催場がデビュー初優出初Vを飾った常滑だから活躍の期待は膨らむばかりだ。7月の尼崎オーシャンカップで久しぶりのSG優出(5着)をするなど勢いも上向き。"浪速のダービー王"が3度目の大会Vへ突き進む。

ダービー2冠男が得意水面で勝機うかがう!

85期銀河系軍団で、かつ大阪支部。これほど刺激的な環境はなかなかない。丸岡は約23年間、努力と才能で自身のスタイルを確立してきた。インタビュースタイルは、ひょうひょうと話しジョークも大好き。それでいて、レースは剛柔兼備で幅広い。よく台風が来ると山の大木が倒されたりするが、川岸に立つ木はなかなか倒れない。丸岡を見ているとそんな印象を抱く。何かのアクシデントに見舞われても、慌てることはなく悠然と構えている。それは、日頃から風を受け止め、流れには逆らわない自然体の姿勢が困難を突破するのだろう。そして、チャンスが来た時は全力で獲得に行く。今回の舞台となる常滑はデビュー初Vを含む5優勝。これは最多の住之江に次ぐ2位タイ(もうひとつは浜名湖)であり、間違いなく得意水面のひとつだ。

大会3度目制覇へ「死闘」制する

丸岡正典には、「死闘」の言葉がよく付いてくる。05年9月、G1桐生ナイター周年の優勝戦。大外から1周バック5番手だったが、同2Mで前がもつれ小回りして先頭へ。しかし、その後も他艇と競り合いとなり、最終的に山崎智也にゴール前で逆転されG1初制覇はお預けとなった。もう1つの激闘は、08年ダービーだろう。ファイナル1枠で臨んだが、進入で地元の木村光宏が前付け策。深インとなり、1Mは先マイしたが、瓜生正義のまくり差しが飛び込んだ。そこからは、両者のマッチレース。SG初優出初優勝を果たした。そんな丸岡は12年大会も制し、ダービー男といわれつつ、14年以降、出場が遠ざかっていた。9年ぶりに出場の今年は、7月尼崎オーシャンCで優出(5着)するなど、リズムは悪くない。大会3度目の制覇、そして年末のグランプリ出場へ。丸ちゃんが「死闘」を突破する。

第三集団から一気に第一集団へ

柳生泰二(97期)がSG初出場を果たす。意外と言わざるを得ない。デビューは2005年11月、17年目だ。28期連続A級でありながら…である。その存在は第三集団にあったが、いよいよ白日の下にさらされる時がやってきたのだ。ダービー選考対象期間である2021年8月から2022年7月の期間勝率は7.44。余裕の選出だった。加えて3月末から4月半ばにかけ3大会連続で優勝している。いずれもシリーズリーダーとしてインから逃げて勝っている。振り返れば、96期生として養成所入りしたものの訓練中に大けがを負い退所の危機に遭っている。その特徴はセンター戦。ダービー選考期間の4コース1着率は29.4%、3コースに至っては33.3%もある。3コース3連対率は81.7%と驚異的だ。その背景にあるのは調整力。機力を引き出す感性と技術は秀逸だが、課題は決定力。ここ一番の勝負どころで勝ち切ることだろう。強い相手が待ち構えるSG競走で、一気に第一集団に躍り出てほしい。

97期の隠し玉がついにSG戦に初登場

西山貴浩、土屋智則らを擁する個性派軍団・97期の隠し玉がいよいよSG戦初出場を果たす。96期で入所しながら、訓練中の大けがで97期でのデビューとなった苦労人。結婚して養子に入り、堀本から柳生へと名字が変わったが、奥さんは江戸時代に活躍し、時代劇にもなっているあの「柳生一族」の末裔(まつえい)だという。同期で一番の仲良しでもある西山に言わせると、「スタートとまくり差しの切れは同期で一番。SG戦に出るのが遅すぎるくらいっすよ。何よりも優しくて男気もある、いい男なんですっ」と鼻息を荒くして絶賛する。昨年は優勝が6回あり、勝率の方も2期連続で7点台と間違いなく選手生活で一番の好成績を残している最中。まだG1戦のタイトルは持っていないが、過去3回の優出で準優勝が2回と、あと一歩のところまで来ている。このダービーには西山が不在で、97期は土屋と2人だけの参戦となるが、無欲でチャレンジしてほしい。

今年の流れに乗ってSG初Vを狙う

初出走から約17年-。やっとたどり着いた夢の舞台だ。柳生は2005年11月に徳山でデビュー。97期同期の西山貴浩、山口達也らがSG出場を果たす中、柳生も今回のボートレースダービーでSG初出場を迎える。今年は3月の津一般戦(3着)から4場所連続で優出し、徳山→大村→徳山で3連続V。その後、2節連続でFを切るなどアクシデントもあったものの、前々期の勝率は7.23、前期は7.45といずれもキャリアハイを更新するなど選手として今が最も"脂"が乗っていると言っても過言ではないだろう。97期は山口がサスピシャスフェロー(クセモノ軍団)として有名だが、同期に言わせれば柳生もかなりの"クセモノ"で(もちろんいい意味で)負けず嫌い。遠藤エミ、椎名豊、片岡雅裕とSG初Vが続々と誕生している今年の流れに乗ってタイトル初制覇を狙う。

昨年6Vの実力をダービーで発揮だ!!

今年のクラシックは史上最高レベルだった。最終的な出場ボーダーは年間6Vの勝率差で決定。今年は14名がボーダーの6Vに並んだが、1人だけ涙をのんだ。これまでクラシックの歴史上、年間6Vを挙げて権利を取れなかった年はなく、柳生泰二も6Vを挙げた一人だった。ところが、発表前から家事都合を提出していたこともありSG初出場はお預けになった。大舞台での活躍を楽しみにしていただけに、ちょっと残念な気持ちになったが、力をつけている選手には、またチャンスがやって来る。今度はダービーボーダーを突破した。柳生はまだG1タイトルこそ取っていないが、ビッグネームが相手でも臆することのない一面がある。来年はメモリアルの推薦を受けていても不思議ではなく、舟券的にはセンターからアウトで買いたくなる選手だ。

遅咲きの新勢力、柳生泰二が初SG挑戦へ

意外と書いてしまうと、失礼かもしれない。柳生泰二がダービーでSG初出場…。山口支部は、今村豊さん(引退)をはじめ、白井英治、寺田祥ら実力者が多く、SGに選ばれたり、G1に出場できるチャンスがもともと少ない。柳生も一般戦が多くあっせんされ、大舞台へ行くには勝率を稼ぐしかなかった。そんな強い気持ちが、このダービー出場への選考期間(21年8月〜22年7月)にあふれていた。データを調べると221走して、1着が91本。3連対率は何と75%を超えていた。鋭いスタートも魅力だが、選考期間でフライングを切った2本がともに4コースというのも柳生らしい。攻撃力が前に出過ぎた結果だろう。山口支部は白井がSG出場停止となり、しばらく大舞台から遠ざかる。支部全体の底上げが必要な今、柳生がニューヒーロー誕生に向けて、貴重なチャンスをつかんでほしい。