the INTERVIEW
「今年は勝負の年です。
グランプリ出場ベスト18 を目指し、
クラシックで良い結果を残して、
かつて齊藤仁さんがくれた刺激を
今度は自分が後輩たちに伝えます!」
おさだ よりむね
1985年(昭和60年)6月24日生まれ。東京支部・93期。
2003年11月、多摩川でデビュー。07年12月、住之江・タイトルで初優勝。08年1月、丸亀・新鋭王座決定戦でGI初出場、5月の平和島・オールスターでSG初出場を果たす。15年12月の住之江・グランプリシリーズでSG初優出、初優勝を飾った。同期には真庭明志、馬場貴也、長尾章平、杉山裕也らがいる。
1985年(昭和60年)6月24日生まれ。東京支部・93期。
2003年11月、多摩川でデビュー。07年12月、住之江・タイトルで初優勝。08年1月、丸亀・新鋭王座決定戦でGI初出場、5月の平和島・オールスターでSG初出場を果たす。15年12月の住之江・グランプリシリーズでSG初優出、初優勝を飾った。同期には真庭明志、馬場貴也、長尾章平、杉山裕也らがいる。
2015年、8年ぶりに東京支部からSG覇者が誕生した。グランプリシリーズで優勝した長田頼宗だ。デビューして13年、決して順調な道のりではない。A2級が続いて腐ったときも、GIで優勝する後輩をみて、もどかしさを感じることもあった。それを乗り越えてのSG優勝だ。
土台固めの時期は、もう終わり。今回は地元のSG覇者として、全国から集まってくる強豪たちを撃破する!
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』』武内達也)
SG BOAT RACE CLASSIC[総理大臣杯] 最近10大会の優勝者
回 | 開催年 | 開催場 | 優勝者 |
---|---|---|---|
第41回 | 2006年 | 平和島 | 中澤 和志 |
第42回 | 2007年 | 平和島 | 濱野谷憲吾 |
第43回 | 2008年 | 児 島 | 松井 繁 |
第44回 | 2009年 | 多摩川 | 池田 浩二 |
第45回 | 2010年 | 平和島 | 山口 剛 |
第46回 | 2011年 | 戸 田 | 震災のため中止 |
第47回 | 2012年 | 戸 田 | 馬袋 義則 |
回 | 開催年 | 開催場 | 優勝者 |
---|---|---|---|
第48回 | 2013年 | 平和島 | 池田 浩二 |
第49回 | 2014年 | 尼 崎 | 松井 繁 |
第50回 | 2015年 | 尼 崎 | 桐生 順平 |
第51回大会 平和島 優勝戦 2016年3月21日(休)・第12レース |
●第46回大会は「SG東日本復興支援競走」として2011年8月に代替開催(優勝者・重野哲之)
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レースを観ずに、レーサーの道へ。
漫画「モンキーターン」が教科書
―なぜ、ボートレーサーという仕事に?
長田 選手を目指したのは、中学生の頃に『モンキーターン』を読んだのがきっかけです。実際にレースを観に行ったことは一度もないし、なぜ選手になりたいと思ったのか今でもよくわからないんですが、自分の中では、ボートレーサーになることが決まっていて、それを疑っていませんでした。
試験は2回目で合格して、93期で入学しました。やまと学校での生活は何もかもが初めての体験でしたが、『モンキーターン』に操縦方法や乗り方などが詳しく描かれていたので、思っていたよりもすんなりと対応できました。レースで勝つイメージも参考になりましたし、選手としての基礎は『モンキーターン』だと言っても過言ではないと思います。
でも、やまと学校では通算勝率4.38と、目立った成績を残すことはできませんでした。モンキーターンが使えませんでしたから(笑)。使えていればB1級斡旋は獲れていたと思いますよ。
93期で良い成績を残していたのは、滋賀の馬場(貴也)君です。馬場君の存在が、自分の発憤材料になっていた部分はあります。それは今も変わりませんし、馬場君とは「93期の仲間たちの刺激になりたい」と、よく話しています。今年は杉山(裕也)君が鳴門オーシャンカップの権利が獲れそうなので、一緒に93期を盛り上げたいですね。
―デビュー後しばらく6着がありませんが...、理由は?
長田 転覆などはありましたが、デビュー4節目(追加を除く)までは6着を1本も獲りませんでした。5節目の戸田で初めて6着になったときは、先輩から「やっと選手になったな」って言われましたけど(笑)。6着を獲らなかったのは、お世話になったプロペラグループの牧宏次さん、渡辺千草さんたちのお陰でしょう。
それにしても、なぜ6着を獲らなかったのか...? やまと学校とは違い、モンキーターンを自由に使えたのが良かったのかもしれません。後輩にアドバイスするためにも、当時の自分に聞いてみたいですね。
A2級のときは焦って、空回りしていた。
先輩の仕事から学んだ自分の甘さ
―1年間のA1級のあと、しばらくA2級に...。
長田 A1級に初昇格して、すぐに平和島オールスター(2008年)に出場しました。選んでもらったとき、まだ自分にSGで活躍する力がないことはわかっていました。それでも結果を出したくて、焦りましたね。
早く階段を上りたいけど、焦って、F2になって、空回りして落ちて行って...。だんだん、うまくいかないことに慣れていきました。A2級暮らしが長く続いたのは、自分をコントロールできていなかったからだと思います。
敬愛する先輩・齊藤仁選手(右)と
―A1級に戻るきっかけになるようなことが?
長田 A1級をキープできるようになったのは、村田(修次)さんと齊藤(仁)さんのお陰です。びわこのGII戦で一緒になったとき、特別戦で活躍している先輩たちの仕事から自分の甘さを知りました。事故や大敗をなくして、1走1走、全力を尽くして走ることが大切だということもわかりました。先輩たちと同じ、それ以上のレベルに行くには、先輩たちの倍以上の努力が必要だと思ったし、考え方もガラリと変わりました。
上のレベルを意識したのは、齊藤さんのグランプリ出場(13年)も大きかったです。それまでにも濱野谷(憲吾)さんが出場されていましたが、濱野谷さんは『モンキーターン』のモデルで、あまり話す機会のない、雲の上の存在でした。齊藤さんの出場は、僕らにとって、グランプリを狙うための"道標"となっています。
自分で細かく点検しないと気が済まない。
レース足・攻める展開を重視
―出力低減機になって、調整や走り方に変化は?
長田 これまでは回転を上げる方向で調整していたけど、出力低減モーターは多少重めの調整でも良いかなと思っています。体感も慣れてきたし、今までのモーターと根本的な部分が変わっているとは思いません。
調整するときに重視しているのは競ったときの足、レース足です。プロペラ調整よりも本体を割ることが多いですね。自分で点検しないと気が済まないんですよ。良いモーターなら触らないこともあるけど、良くなるかもしれないモーターを点検しないのは、もったいない。ピストンやピストンリング、細かいところまで点検します。モーターにパワーがあってこそ、プロペラも回ってくれるんだと思っています。
レースは、自分から攻めて展開を見つけたいので1、3、5コースが好きですね。5コースまでなら、ある程度のイメージができます。最近6ヵ月のイン戦は35走して31勝ですか...。4回も負けています。この負けは減らさないと。
僕は"ながた"じゃない、"おさだ"だ!
何度も優勝戦をイメージしてSG制覇
―SGグランプリシリーズ制覇、おめでとうございます。
長田 グランプリシリーズ優勝は、嬉しかったですね。初日後半の1着は5コースからイメージどおりのレースができたけど、初日1走目(4号艇で3着)、2日目の2着(6号艇)はツキがありました。3日目(2号艇)の1着で予選トップ通過を、そして4日目に1号艇で勝ったときに、優勝を意識しました。
優勝戦当日は前日までと違って雨が降っていましたが、「ここまで来たら、自分を信じるしかない」と全てを受け入れ、走る前からレースまで、何度も優勝戦をイメージしました。俯瞰するような感じですが、ピタリとはまるんですね。走る前から、頭の中に優勝した自分の姿がありました。
住之江はデビュー初優勝の思い出の水面です。そこで、巡ってきたSG初優勝のチャンス。今までの自分を長いスパンで見たとき、「ここかな」って思いました。1マークのターンは4日目の方が良かったけど、勝てるレースができたので良かったです。
(2016年3月2日現在)
―初優勝の水面で、SG初制覇ですね。
長田 実はそれだけではなくて、もう一つ、気合が入る出来事があったんです。前検日のことなんですが、カメラマンから"ながた"君って呼ばれたんです。グランプリに出場するような選手なら間違えられなかったかもしれないと思うと、「クソッ、ここで名前を売ってやるぞ!」って気持ちになりました。
普段はそこまで思わないんですよ。ただ、あのときはグランプリ出場組との間に大きな壁を感じていたので...。優勝できた今となっては笑い話です。あのときのカメラマンには感謝しなくちゃ(笑)。
―クラシックの舞台は地元、平和島です。
長田 平和島の初出走は、失格なんですよ(苦笑)。2マーク側のネトロンに突っ込んでしまって...。しばらくは2マークで握るのが怖かったし、苦手意識もありました。今はモーター次第の成績です。良いモーターなら前に押してくれます。
あとは、3月の平和島は風が強いので気をつけたいですね。波が出るのは仕方がないから、そこは腹をくくるしかない(笑)。
―SG覇者として、地元クラシックへの意気込みを!
長田 GIを獲る前にSGを獲ってしまったので、自分の感覚とSGタイトルの間でギャップを感じています。一段飛ばしで階段を上った感じですね。先にGIを獲っていれば、また違っていたと思います。もっと胸を張ってSG覇者だと言えるように、今年は1年を通じて活躍してグランプリ出場の18人入りを目指します。昨年の最終的な賞金ランクは19位、これならグランプリ出場のチャンスは自分にもある、狙おうと思えました。
今年は勝負の年です。クラシックで良い結果を残して、かつて齊藤さんがくれた刺激を、グランプリへの道標を、今度は自分が後輩たちに伝えたいです。