the INTERVIEW
「マスターズはワクワク感が99、プレッシャーが1。
コースは内側が欲しいから、いろいろ考えないとね」
今大会から出場資格が「48歳以上」から「45歳以上」に引き下げられた。ボーダー勝率も6.48と跳ね上がり、SGタイトル保持者は20名にも上る。今も第一線で活躍する円熟レーサーが集まれば、想像を超えたレースが展開される。
そんなレースを心待ちにしているのが、福井のエース・今垣光太郎だ。今までとは一味違うマスターズチャンピオン、その戦略を語ってもらおう。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』鈴木隆史)
今のモーターは断然スローが有利6コースの80m起こしでも大丈夫かも
―マスターズCを前にした心境はいかがですか?
今垣 マスターズチャンピオンは、“楽しみ”しかないですね。ワクワク感99、プレッシャー1です。去年までのマスターズだったら、緊張しかなかったんでしょうけど、今年のマスターズは、すごく楽しみです。
マスターズの年齢制限が45歳に下がって、それで僕も出場資格がもらえたんですが、去年までなら、凄い先輩ばかりだから、“圧”しか感じなかったでしょうね。それこそプレッシャー99ですよ。陸の上で緊張して、レースでも緊張して、大変だったと思います。
でも、今年の大会は、同世代の人たちが何人も出場するので、凄く気持ちが楽です。あまり気負わず、リラックスして走ることができそうです。
―マスターズCのレースイメージはどうとらえていますか?
今垣 進入です。6枠で内コースを取りに行っても、簡単には入れてくれないでしょうし、1枠のときでも、進入は深くなりそうですよね。いろいろ考えないと、大変です。
今のモーターは、断然、スロー発進が有利です。100m起こしの4コースでも、十分に持ちます。80m起こしでも大丈夫かな。6コースの80m起こしになっても、引っ張る必要はないかもしれない。そのくらいスローからスタートがしやすいモーターなんです。だからコースは内側が欲しいと思っています。
きっとみんなが同じ考えでしょうから、入れてくれませんよね。それも含めて、今は楽しみのほうが大きいんですけどね。
史上初の3代ボートレーサーへ息子が選手を目指してチャレンジ中
―若い頃と今と、違っているところはなんでしょうか?
今垣 若い頃はがむしゃらでした。怖いもの知らずだった。今は違う。あんな無茶なレースはできません。絶対に、若い頃のほうが、僕のレースは魅力的だったと思います。あの頃に戻りたいけど、なかなかできません。
若い頃はね、フライングからもケガからも逃げていませんでした。でもそれは、たまたまなんですよ。SGの準優や優勝戦で、何回もギリギリのスタートで助かっているんですが、本当に運が良かっただけですよね。もちろん0台のスタートを狙って行ったことはあります。そんなときにタッチスタートだったり、コンマ01のタイミングだったりして、フライングをしなかったんですから、神懸かり的です。
でも、その反動はありました。事故率オーバーでB2級に落ちてしまったり、大きなケガも経験して、がむしゃらさが段々と消えてしまったのかな? 守るものが増えたんだと思います。
―守るもの?
今垣 いっぱいあります。長男がボート選手を目指していますし、ほかの子供たちはまだ小さいですから、ケガはできないなって思うようになっています。
長男は今19歳で、試験に3回落ちているんですが、まだまだチャレンジしようとしています。父親として応援していますよ。3代続きのボートレーサーは史上初だと聞いていますから、デビューして欲しいですね。今のままでは、デビューできても、活躍はできないと思っていますけど、それでも選手になって欲しい。
プレッシャーは、多ければ多いほど良いんです。そんな経験を積んでいかなければ、選手になっても活躍できません。長男はプレッシャーを経験していないから、今はダメだと思う。甘いんですよね。
だから、これからです。ボート一途の生活を10年続ければ、選手としてやっていけると思います。
理想の走りと現実の走りは違うけどファンへの感謝の気持ちは変わらない
―進化しているところは?
今垣 ないですね。若い頃のほうが断然、良かった。引退を考えるようになったら、最後はイン屋になるつもりです。どんどんコースを取りに行く、そう考えています。
勝ち負けを考えずに、がむしゃらなレースをさせてくれたのは、ファンの声援です。ファンの方たちに感じる思いは、今も変わっていないんですけど、行動に繋がっていない。それが自分では残念です。僕はファンの人たちの声援に応えようと頑張ってきた。それが僕の今に繋がっているんです。声援がなかったら、こんなに結果を残せていないと思います。
僕、気が弱いんですよ。無理なレースをすれば、一緒に走る選手たちから嫌われることがあるかもしれない。でも、ファンの方たちの期待に応えたいから、周囲の目は気にしないようにして、ファンの方たちに喜んでもらえるようなレースをしてきたんです。
―ファンの声援に応えるレースとは?
今垣 理想像を言えば、いつもスタートを行くことでしょうね。ケガを恐れないレースを続けることでしょう。でもね、僕は後輩たちにいつも言っているんですよ。「フライングはするな、ケガをするな。フライングをしたり、ケガをしたら損だ」って、理想像とは反対のことをアドバイスしているんです。結局、この狭間でもがいているんですよね。
理想像を追い続けることはできないけど、ファンの人たちに対する感謝の気持ちは忘れていません。いつもその気持ちでレースに臨んでいます。一走入魂です。ファンの人たちの声援で、実力以上の力を発揮できるんです。若い頃のような無茶なレースはできなくても、ファンの人たちの声援を背負って走る気持ちは忘れていません。
“大”が何個も付くくらい好きな福岡で精一杯の走りをすることを約束する
―これまで、第一線で選手を続けてこられた理由はなんですか?
今垣 ボートにのめり込んで来たことかな。休まなかった。F休みも、休みじゃなかった。プロ野球でいえば、キャンプ期間ですね。肉体改造、ハングリーさを養う期間です。そうやってずっと過ごしてきました。
例えば「あることを1時間以上したら逆効果になる」と言われたら、僕は10時間やってしまうタイプです。無駄なのかもしれない。本当に逆効果なのかもしれない。でも、10時間やったという実績が自信になる。自分は他人よりも10倍頑張ったんだ、という意識がプラスになるんです。だったら10時間は、気持ちを作るためには無駄じゃない。
―マスターズCの舞台は福岡です。
今垣 福岡は大好きです。結果も残せていますし、何よりも雰囲気が好きです。関係者の方たちも、僕が走りやすい気持ちにさせてくださいます。正直、水面は大変なところですが、逆にお客さんには面白い水面かもしれませんよね。インだからといって簡単に勝てる水面じゃないから、外枠でも楽しみが持てるし。本当に福岡は好きです。僕は下関や大村の仕事に行くときも博多に泊まりますから。博多は自宅以外で一番宿泊する回数が多い街です。
正直、マスターズで優勝してやろうと言うほど、強い気持ちにはなっていません。でも、“大”が何個も付くくらいに大・大・大好きな福岡で、精一杯の走りをすることは約束します。多分、スロー発進が多くなると思いますが、まずは陸でも負けないようにして、頑張ります!
今垣光太郎選手 データ室 (2018年2月28日現在)
出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
---|---|---|---|---|---|
通算 | 6,200回 | 293回 | 99回 | 53.7% | 68.7% |
SG | 1,066回 | 34回 | 9回 | 42.6% | 59.6% |
GI | 2,426回 | 93回 | 28回 | 48.5% | 64.9% |
18年 | 1月 | 徳山 | GI・周年 | 6 5 6 4 1 2 5 5 2 2 |
18年 | 1月 | 平和島 | GI・周年 | 6 2 4 6 4 3 3 5 5 |
18年 | 1月 | 蒲郡 | 一般競走 | 2 2 2 2 4 2 1 1 2 1 6 |
17年 | 11月 | GI・周年 | 2 2 1 4 6 2 2 5 |
17年 | 5月 | SG・オールスター | 3 3 4 2 2 5 5 2 3 |