the INTERVIEW
やまと学校では「元気娘。その2」、デビュー後は「福岡の弾丸娘」と呼ばれてきた。そんな小野と話をしていて、最も多く出た言葉は"感謝"だった。レースに没頭するあまり忘れていたものだと言う。
クイーンズクライマックスは2回目の出場、そして舞台は地元・福岡だ。「ももクロ」好きの元気娘は、大好きなリーダー・百田夏菜子と同じく"感謝"の気持ちでティアラ戴冠を目指す。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』井上泰宏)
--いつから、ボートレーサーになろうと?
小野 父から「お前、選手になれ」って言われて育ったので、小さい頃からボートレースの存在は知っていました。選手募集の新聞広告を部屋に貼っていたりしましたからね。本当は父が選手になりたかったみたいなんですけど(笑)。
実際のレースを見たのは中学2年のときです。カッコイイと思いましたが、職業としては「アリといえばアリかな?」くらいですよ。高校3年のときに試験を受けて2回目の受験で合格、103期でやまと学校に入学しました。父とレースの話はほとんどしませんが、妹(真歩)も選手になりましたし、喜んでくれていると思います。
--デビューしてからの成績は・・・
小野 「やまと学校の成績は下から2番目、デビュー期の成績は最下位でした。レースに出ても回っているだけで全く参加できなくて、先輩たちからは「そのままじゃクビになるよ!」と厳しいことも言われました。2008年11月にデビューして初めて舟券に絡んだのは09年7月大村の3着と、1年近くかかりました。
初1着は10年5月の芦屋GW戦です。1号艇に同じグループの打越晶さんがいて、6コースから捲り差しで勝ちました。
--成績上昇のきっかけは?
小野 師匠の吉田弘文さんのお陰です。いろいろな先輩から「差しを覚えた方が良い」と言われていたんですが、差しは苦手で、握ってばかりいました。
吉田さんはそんなレースぶりを褒めてくれました。09年11月、常滑で一緒になったときです。「ハンドルは一気に入れた方が良い」とアドバイスもいただきました。
ハンドルを一気に入れる場合は、ハンドルの下の方を持っておいて、1周くらい一気に切るんです。怖いですよ。しっかり足を踏ん張らないとバランスを崩して転覆してしまいますから。でも、水神祭もまだだったし、とりあえず試運転でチャレンジしたんです。
そうしたら、艇が90度くらい、"ガーン"って向いたんです!目の前の景色が一気に変わりました。同時に自分の世界も変わりました。「ガーン!」って(笑)。それからは節1回は舟券に絡めるようになって、成績も上がって、10年10月には福岡で初めて準優に乗りました。捲りを決めて勝負駆けを成功させたんですよ。
--"ターンは苦手"とのコメントを聞きますが・・・。
小野 ターンは、本当に恥ずかしいくらいで(苦笑)。それでこれだけの成績を残せているのは、モーターを出すことができているからです。成績が上向いたときにプロペラの心配がなかったことが大きいですね。乗り心地の良いプロペラを使っていたので、本体整備を覚えることに集中できました。初めてA1級に上がったときも、プロペラはほとんど触っていません。
今のプロペラ制度やモーターに対応できているのも、あの頃の勉強の成果だと思います。「こうすれば良くなるかな?」ってやるとうまくいくんですよ。リング交換も最初は見方がわかりませんでしたが、最近では「こういうリングを入れれば良いのかな?」と、なんとなくわかってきました。最終日まで訳のわからないまま終わることは滅多にないですね。みんなからも「出すね~」って言われます。
ターンはまだまだ下手ですね。スピードも足りないし、安定感もありません。理想は「狙ったところにピンポイントで入れるようなターン」です。ターンが巧くて、モーターも出せたら"無敵"でしよう?
--大舞台で力を出すタイプ?
小野 相手が強いほど燃えるタイプなので、SGやGIで上の人と走るたびに刺激があります。昨年の福岡オールスターで初めてSGに出ましたが、すごく楽しかった。トップクラスの人たちは動きもキビキビしているし、精神的な面で教わることも多いです。
2月の住之江周年では、瓜生正義さんから「感謝」の姿勢を忘れないことを教えていただきました。瓜生さんを見ていたら、モーター庫に入るときに一礼、自分のモーターの前でもう一度「お願いします」って頭を下げるんです。私が足でプロペラを踏んで押さえているのを見て「そうするなら・・・」と、直接プロペラを踏まないように布をくれました。
ハッとしました。またもや「ガーン」ですよ。選手は走るのが仕事ですけど、プロペラやモーターがなければ走れないんです。それなのに、感謝の気持ちを忘れていた自分が恥ずかしかった。
今は、「モーターやプロペラが恋人」それくらいの気持ちで接するようにしています。7日間限定の"割り切った関係"ですけど(笑)。
瓜生さんにいただいた布ですか?今も持っていますよ。チャレンジカップのときに瓜生さんに言ったら、ちょっと引かれました・・・。「サインしちゃろっか?」と言われたので、喜んでサインしてもらいましたけどね。
丸亀・レディースチャンピオンの懸賞クイズでは、ざわちんの手で「ボートニャーブラック」に変身!
--今年は注目度も高く、プレッシャーもあったのでは?
小野 今年は、福岡のクイーンズクライマックスに出場することを目標に走ってきました。芦屋のレディースチャレンジカップもありましたからね。地元で大きなレースが続くことなんてなかなかないから、絶対に出たいと思っていました。
それだけに、丸亀レディースチャンピオンのフライングは凹みました。私、意外とスタート事故は少なくて、あのフライングも3年ぶりでした。レース場ではレースのこと以外考えないようにしていたつもりでしたが、自分を追い詰めていた面はあったと思います。
F休みの間はトークショーやイベントに呼んでいただきました。どこへ行っても、関係者の方やファンの方が温かく迎えてくださるんですよ。選手は走ることが仕事ですけど、多くの方たちの支えがあるからこそなんだと感じました。凹んでいた気持ちも切り替えられましたし、勉強の機会をくださったことに感謝しています。
--ボートレーサーの妹さんの存在は?
小野 妹とは一緒にいることが多いですね。妹には結構厳しいことも言いますよ。言うからには、自分はもっと頑張らないといけないでしょ? 2人で一緒に走ったり、筋トレをしたりしています。
11月に行われた篠崎元志さんのSG優勝祝勝会では、妹と一緒に踊ったんですよ。私は「ももいろクローバーZ」が好きなので、私たち2人に小池礼乃ちゃん、渡邉優美ちゃん、竹野未華ちゃんの5人で「"おの"いろクローバーZ」を結成して(笑)。5人で担当を決めて、きっちり練習もしました。元志さんをはじめ、みんながノッてくれたので、めっちゃ楽しかったです(笑)。一緒に頑張って、いつか2人でクイーンズクライマックスに出たいですね。
--GIクイーンズクライマックスへ、最後は元気に締めましょう!
小野 地元で開催される最高の舞台なので、優勝戦には絶対に乗りたい。レース場に入ってから焦らなくて良いように、気持ちも、体調も、しっかり整えていきます。大晦日の第12レース、優勝戦で1着を獲りたいです!
(2015年12月9日現在)