the INTERVIEW

 仲谷颯仁は昨年の住之江・グランプリシリーズでSG初出場を果たした。今回のオーシャンカップは、クラシック、オールスターに続き、今年3回目のSGだ。8月には若松の推薦で丸亀のメモリアル出場も決まった。大好きな地元・若松で、地元ファン、関係者、そしてお世話になっている先輩たちに感謝を込めて、SG初戴冠を目指す。

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』武内達也)

― 選手を目指したきっかけは?

仲谷 小学生からずっとサッカーをやっていて、高校3年生の夏に部活を引退するってなったときに、部活のフィジカルトレーナーの方から「仲谷は体幹が良いから、ボートレーサーになってみれば?」って言われたのがきっかけです。ボートレーサーという職業を全然知らなかったので調べてみたら、身長も体重もクリアしていたので「目指してみよう」と思いました。
 初めてレースを観たのは若松です。直感で「絶対に選手になろう」って決めました。スピード感だったり、レースの迫力が凄くて、格好良かった。「僕にもできそうだな」って思いました。実際は難しかったけど(苦笑)。
 やまと学校(現ボートレーサー養成所)は1回目で受かりました。本当は114期を受けたかったけど目が悪かったので、レーシック手術をして115期で入学しました。
 やまとでは、楽しい思い出しかないですね。恐怖心は全くなくて、ボートに乗るのが凄く楽しかったです。日曜日は休務だったけど、ボートに乗りたいって思っていました。モーターの取り扱いは不得意な方ではなかったけど、分解して組み立てるだけなので、面白さを見出せなかったですね。今は整備してから乗ったりできるので、整備も楽しいです。

― やまと勝率はトップでした。

仲谷 やまとに入学するときに、やまとチャンプになるって決めていました。ただ、リーグ戦の前にやったプレリーグ戦では、1回も優出ができませんでした。めちゃくちゃ悔しくて、「リーグ戦本番はすべて優出してやろう」って。全リーグ戦で優出できたので良かったです。最後のやまとチャンプ決定戦も1号艇だったし、チャンプになりたかったので、本当は1コースから行くつもりでした。
 ただ、本番は6コースから行ったんですよ。リーグ最終戦は全部6コースから行って優出したので、担当教官から「決定戦も6コースから行くんだろ」って言われて。もう、6コースから行くしかないじゃないですか(笑)。
 もちろん優勝確率が高いのは1コースだけど、6コースから優勝したときの衝撃的なシーンを思い浮かべてしまって…。優勝はできなかったけど、悔いは全くありません。

 

― デビュー戦でいきなりF。ほろ苦いプロデビューとなりました。

仲谷 デビュー戦でのFは気負っていました。周りからの期待と、自分の実力が見合っていなかったので。2期目にはF2になってしまったし、その後もスタートを我慢しないといけなくて、かなりキツかったですね。
 その分、レースで勝つためには何が必要かを考えました。ターンや、道中の走り方はめちゃくちゃ練習しました。それが今の自分に繋がっていると思います。早い時期につらい経験をしたことは、結果的には良かったかなと思います。

― 初1着、そして初優勝はどんな気持ちでしたか?

仲谷 若松で初1着を獲れたのは嬉しかったです。実は、水神祭をした前日のレース後、試運転で転覆しているんですよ。峰竜太さんにターンのやり方を教わっていたら転覆してしまって。そのときに感覚をつかんだというか、1着が獲れそうだなって感じがしました。初1着は転覆のおかげかもしれないですね(笑)。
 初優勝の唐津(17年1月)では、優勝できそうな予感がありました。唐津の前に走った若松の正月戦で2号艇で優出したとき、1号艇の今村暢孝さんのインを取ろうとしたんですよ。そういう行動ができる自分の気持ちの強さに気づいて、自信を持ちました。
 だから、唐津でエース機を引いたときには「流れが来ている」と。一緒だった原田富士男さんにも、前検日に「お前が優勝するよ」って言われて。優勝したときは泣いて喜んでくれました。

― 環境に恵まれていますね。

仲谷 本当にそうだと思います。福岡支部に挨拶に行ったときに、川上剛さんに会って「熱い人だな」って。すぐに「弟子にしてください」とお願いしました。選手になろうって思ったときと同じで、直感です。
 弟子になってからは、技術的な部分はもちろんだけど、礼と節についても厳しく指導されています。自分たちの世代では当たり前でも、ベテランの方々にとっては失礼にあたることがあるかもしれないので。西山貴浩さんもレースのことでアドバイスをくれますし、先輩方の良いところを盗んでいきたいですね。
 羽野直也さんは成長させてくれる存在です。羽野さんとは昨年、最優秀新人を争っていました。自分がヤングダービーで優出したときに「これでリードできた」と思いましたが、すぐ後に羽野さんが大村でGIを獲ったので、「もうSGを獲るしかないな」と。羽野さんがGIを獲らなければ、そういう気持ちを持つことはなかったと思う。
 同期では仲の良い野中一平が頑張っているので、自分も負けていられないですね。

― 今年、若松でGI初優勝です。

仲谷 普段は予選突破から優出、優勝と、一つずつクリアすることを意識していますが、九州地区選は初日にピン・ピン(1着2本)を獲って、初めてシリーズの序盤で優勝を意識しました。予選をトップ通過することができたことも、流れが自分にきていると感じました。
 GI初優勝はもちろん嬉しいけど、それ以上に、若松で優勝できたことが嬉しかった。これまで優勝戦1号艇で負けてしまったり、2着が続いていました。ビクトリー花火を見るたびに「次こそは!」って思っていたので、本当に嬉しかったし、安心しました。

― SG・GIが主戦場になりました。

仲谷 GIに関しては、それほど特別感はありませんでした。いつもと同じレースだと思っています。
 SGも同じ感覚で、メディアにも「楽しかった」って言っていました。実際、オールスターは凄く楽しかった。
 ただ、昨年のグランプリシリーズとクラシックの自分を考えると、本当は苦しかったんだなって。SGを特別だと考えすぎて、レースを楽しめていなかった。オールスターを楽しむことができて、SGもいつもと同じレースなんだと気づけたのは良かったです。
 オールスターは楽しめたけど、反省も多かったです。2走目の2着は、先頭を走っていて、道中で抜かれてしまいました。準優は次点で乗れなかったし…。2走目が1着なら準優に進めていたので、悔しかったです。

― 最近の調子はどうですか?

仲谷 前期は勝率7.50を目標にやってきたけど、結果は6.50しか残せなかった。デビューからずっと勝率を上げてきていたので、めちゃめちゃ悔しかったです。
 本体整備はあまりせずに、プロペラを基本にやっているけど、調整を合わせるのが遅い。1走目からバチッと合うことがないし、SGやGIを走っていて、上のレベルの人たちとの調整力の差を痛感しました。今後SGやGIで戦っていくには、調整力を身につけられるかが大事になってくると思います。

― 仲谷選手の目指すレースとは?

仲谷 技術というよりも、気持ちを出したレースをしたいと思っています。自分から仕掛けるだけでなく、展開に応じて差すこともあります。西山さんからは「展開を見過ぎてる」って指摘されたことがあるので、そこは気をつけています。嫌いなコースはないけど、好きなのは奇数コース、1、3、5コースですね。

― さあ、純地元・若松のSGです!

仲谷 若松でSG開催が決まったときから、出場することを目標にしてきました。特別にしてはいけないとわかっているけど、やっぱり特別な大会です。自然と気持ちは入ってしまうけど、オールスターで感じたことを忘れずに、一つひとつ前に進みたいです。
 若松は全国で一番やりやすいレース場です。調整面やスタートのやりやすさはもちろんだけど、雰囲気が良い。雰囲気って、凄く大事なことです。初めて行くレース場だと、陸の上の仕事にやりづらさを感じたりするので、慣れているってだけで安心材料になる。ファンも優しい方が多いし、凄く好きですよ。
 8月のメモリアルにも若松の推薦で出られるので、若松で活躍して、いろいろな人に恩返しをしたいです。

仲谷 颯仁選手 データ室 (2018年6月7日現在)
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
通算 767回 21回 4回 37.9% 55.8%
SG 23回 0回 0回 21.7% 39.1%
GI 74回 3回 1回 39.2% 58.1%
◆全国成績(最近3節)
18年 6月 福岡 GI・周年 1 3 5 6 1 6 4 2 3
18年 5月 尼崎 SG・オールスター 4 2 1 5 3 4 2 3
18年 5月 福岡 一般競走 1 3 3 1 4 2 1 3 1 2 6
◆若松成績(最近2節)
18年 2月 GI・地区選 1 1 3 6 2 1 1 1
17年 12月 タイトル(正月戦) 2 1 2 5 4 1 1 1 2 1 2