the INTERVIEW

 

SGの中のSGを
獲って
本物になる。
~『クセ者軍団』97期初のSG覇者~

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(群馬)
土屋 智則

今年3月の平和島クラシックで、初めて歓喜の中心に立った土屋智則。 父は元オートレーサー、姉は現役ボートレーサーの公営競技一家だ。 「正直、SG覇者になれるとは思っていなかった」と話すが、SGの出場権すら獲れなかった期間も、自己研鑽に余念がなかった。 その努力が、SG初制覇という最高の形で現れたのだろう。 グラチャンが開催される徳山は、4月に当地初優勝を飾ったばかりの水面。 「グランプリには最低でもトライアル2ndから出場する」と、年末を見据える新SGウイナーの素顔に迫る。
(インタビュー・構成/土屋幸宏)

Profile

つちや とものり

1985年2月6日生まれ。群馬支部・97期。
2005年11月、桐生でデビュー。デビュー戦で水神祭を飾る。2017年6月、江戸川・周年記念でGI初優勝。23年3月、平和島・クラシックでSG初優勝。姉はボートレーサーの土屋千明、同期には柳生泰二、池永太、山口達也、西山貴浩らがいる。

土屋レース画像
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 4,404回 154回 34回 46.7% 64.6%
S G 112回 2回 1回 31.2% 50.8%
G I 826回 8回 2回 32.9% 49.1%
◆全国成績(最近2節)
23年 5月 芦 屋 SG・オールスター 3 5 5 3 3 2 3 6 3
23年 4月 桐 生 タイトル(GW戦) 6 2 2 F 1 4 4 5
◆徳山成績(最近2節)
23年 4月 一般競走 2 1 1 2 1 1 1
22年 9月 GI・周年 4 1 4 2 4 2 5 6 1
(2023年5月28日現在)
伸び型→出足型にチェンジ!前検にプロペラを叩いて正解

― クラシック優勝、おめでとうございます!

優勝戦は篠崎元志さんに追いかけられていたので「ヤバい、ヤバいっ!」って。 余裕はなかったです。ゴールした瞬間も、後ろを確認していました(笑)。

― ガッツポーズはしました?

バックストレッチで、少しだけ(笑)。そこまで緊張していなかったんですが、ハンドルが軽くてあまり手が離せなかったので。お客さんを見たり、喜ぶ余裕はなかったです。表彰式で賞金のパネルをもらった時に、「SGを勝ったんだ」と実感しました。

― 65号機は前検からピットで評判でしたね。なのに、プロペラを叩いた?

前検では他の人より半艇身くらい伸びが良かったんですが、今年はエンジンが全然出せず、勝率も残せていなかったので、半信半疑でした。プロペラも伸びそうな形でしたね。ただ、初日の出走が第1Rの2号艇で、2コース向きのプロペラではなかったので、決めていた出足型の形にプロペラを叩きました。

SG初優出のオーシャンC(2018年)の時も、前検で西山貴浩と足合わせしたら、1艇身ぐらい伸びていました。クラシックよりエンジンが出ていたと思います。あの時は節間ノーハンマーで、優出したけど優勝できませんでした。

クラシックの前検も同じ感触だったので、今度は思い切ってプロペラを叩きました。それが良かったと思います。

― 優勝を意識したのは?

予選最終日が終わって、得点率トップが確定した時ですね。予選ラストのレースでF艇が出て、繰り上がりの2着で1位通過することができたので、流れが来ていると感じました。

準優は追い風が強くて水面が悪かったので、スタートを行って自分のターンをして負けたら仕方がない、という気持ちでした。スタートで遅れて、捲られるのだけは嫌だった。準優を勝てたので、優勝戦でもこの水面なら大丈夫だと。

― 優勝戦は緊張しましたか?

優勝戦よりも、予選ラストのほうが緊張しました。毎日爆睡です(笑)。

宿舎は久田敏之さん、毒島誠さんと3人部屋でした。自分の準優1号艇が決まってからも普段通りに接してくださったので、緊張することはありませんでした。

10年ぐらい一緒にSGやGIを走っているので、お互いのことはわかっています。逆の立場も見てきましたしね。

公営競技レーサー一家に生まれ個性的な同期と切磋琢磨し成長

― 土屋さんと言えば、父の栄三さんが元オートレーサー、姉の千明さんがボートレーサーの公営競技一家です。

ボートレーサーになったのは、父がボートレース好きだった影響です。クラシックの後に墓参りに行き、父にSG優勝を報告しました。

姉は面倒見が良いので、デビューした頃からずっと練習に付き合ってくれました。レーサーになる前から、おんぶに抱っこです(笑)。

― 97期は“個性的”なメンバーが多いですね。

訓練が厳しかったので、97期は仲間意識が強いんだと思います。昔は「同期に負けたくない!」と思っていましたけど、最近はそこまでライバル意識はありませんね。

ちなみに、西山貴浩、池永太、山口達也とともに『クセ者軍団』の一員ではありますが、『ポンコツ会※』のメンバーではありません(笑)。

※ポンコツ会…西山貴浩、大庭元明、林恵祐、谷村啓司らの集まり。西山によると「仕事の話は一切せず、バカな話をしながらお酒を飲む会」とのこと。

― デビュー戦にGI初出走、SG初出走も全て1着。SGもすぐ獲るかと。

SGにコンスタントに出ていれば、獲ることも意識できたかもしれないけど、19年のグラチャン以降は、22年のオーシャンCまでSGに出場できませんでした。あまりに出場が少なすぎて、正直、SGを獲れるとは思っていませんでした。

前に進んでるし、乗りやすい!桐生で浮上のキッカケをつかむ

― しばらくSG戦線から離れていましたが、昨年は自己最多のSG出場4回。何が?

20年の秋あたりから、回転を抑え気味だったプロペラの形を、出足型に変えました。11月の桐生GIIIで、直前のGI周年で萩原秀人さんが乗ったエンジンを引いたら、前に進んでるし、乗りやすいし、全部が良かったんです。

そこから成績が上がってきて、22年の常滑周年優勝やSG出場に繋がりました。その時のプロペラから試行錯誤した形が、現在のベースになっています。

― 出足型にして、走り方は変わりましたか?

最近は、逃げと差しが多いですね。コースは取れるなら1つでも内側が良いですが、「ピット離れで絶対にコースを取る」とは思っていません。多少は意識しますが、展示で出ていっても、本番では出ていかない時もあるので…。

群馬支部の先輩方はピット離れが上手いので、若い頃はなかなかコースが取れませんでした。毒島さんにはよくコースを取られていましたし、選手持ちのプロペラだった頃の山崎智也さん(引退)はピットを離れた瞬間、自分の遙か前方にいました。

先輩方と戦っていくために、自分もピット離れを研究して、試して、その繰り返しです。

― 6号艇時は前付けを期待するファンも…。

6号艇の時は、コースで動くことも含めて調整を考えます。いつでも100m起こしで行く準備はできていますが、ピット離れを意識して極端に調整を変えることはしません。あっても少し回転を上げるくらいです。ただ、去年のSGはエンジンが出なさすぎて…動くに動けなかったです(苦笑)。

― 好不調のバロメーターは?

周回展示はタイムが出るように、できる限り全力で走ります。調子の良い時は、周回タイムや、まわり足タイムが良いですね。展示タイムは意識していません。

― SG優勝後の調子はどうですか?

4月末にフライングをしました。先のことを考えすぎましたね。最近成績の良い蒲郡のダービーに出たくて、勝率を上げようと意識していました。一度、頭を柔らかくして、また自分のレースをしようと思います。

GI初V時の再現ならV確定?初制覇→大仕事が勝ちパターン

― 徳山では苦戦されていたようですが?

徳山は調整が合っていなかったのか優出すらできず、良いイメージが持てないレース場でした。4月戦で最近使っている形に近いプロペラを試したところ、得点率トップで徳山初優出、初優勝できたので、グラチャンも楽な気持ちで行けると思います。

― 徳山連続Vも狙えそうですね。

実は、17年にGI初優勝した時と、今の徳山の状況がよく似ているんです。GI初優勝は江戸川でしたが、1ヵ月前の5月一般戦で江戸川初V、6月の62周年でGI初優勝できました。今回も同じパターンになったら良いですね。

賞金トップでGPに行きたい!

― 今年は初のグランプリ(GP)出場が視野に入っています。

GPにはもちろん賞金1位で行きたいですが、賞金ベスト6、トライアル2ndからの出場が最低ノルマ。そのためにも、賞金額をしっかり上積みしたいです。

グラチャンに出てくるようなSG常連の選手たちにとって、SGはどれも一緒だと思います。そんな方々を相手に「2つ目を獲る!」なんて大きいことは言えないので、エンジン抽選と、初日、2日目の結果を見てから、コメントを考えます(笑)。 あと、今年のオールスターは自力で出場するので、来年はファン投票で出場できるよう、応援よろしくお願いします!

― 先のことを考えすぎ…。

そのためにも、今回のグラチャンで頑張ってアピールします!!