the INTERVIEW


6年前に沖縄に移住し、そして今年4月に愛知支部から長崎支部に移籍。その移籍直後の大村ダイヤモンドカップでいきなり地元GI優勝を決めた、ボート界で今一番“持っている男”だ。
原田のボート人生は決して平坦ではない。その挫折や悔しさをはね除けるように、時に「爆発力」を発揮させる。沖縄での暮らしぶりや長崎移籍への思い、そして2度のB級降級の挫折から、彼の最大の魅力である「爆発力」が見えてくる。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二)


3779 はらだ ゆきや
1975年(昭和50年)10月24日生まれ。長崎支部・76期。
1995年6月、蒲郡でデビュー。96年10月、三国・一般競走で初優勝、2000年1月、びわこ・新鋭王座決定戦でGI初優勝。02年10月、平和島・ダービーでSG初優勝を飾る。同期には樋口亮、魚谷智之、瓜生正義らがいる。
出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
---|---|---|---|---|---|
通 算 | 4,971回 | 206回 | 75回 | 52.8% | 66.8% |
S G | 806回 | 16回 | 3回 | 39.2% | 54.0% |
G I | 1,923回 | 48回 | 13回 | 42.8% | 58.3% |
◆全国成績(最近3節) | ||||
---|---|---|---|---|
17年 | 6月 | 住之江 | GI・周年 | 3 5 1 3 失 1 (途中帰郷) |
17年 | 6月 | 若 松 | GI・周年 | 1 4 1 6 1 1 5 5 1 |
17年 | 5月 | 福 岡 | SG・オールスター | 5 6 6 4 5 5 6 1 |
◆丸亀成績(最近2節) | |||
---|---|---|---|
17年 | 4月 | 一般競走 | 1 1 3 2 6 1 2 |
12年 | 9月 | GI・周年 | 4 6 5 2 3 3 4 4 5 |
(2017年6月13日現在)
SGオーシャンカップ 歴代優勝者
回 | 開催年 | 開催場 | 優勝者 |
---|---|---|---|
第1回 | 1996年 | 住之江 | 野中 和夫 |
第2回 | 1997年 | 平和島 | 熊谷 直樹 |
第3回 | 1998年 | 三国 | 松井 繁 |
第4回 | 1999年 | 若松 | 田頭 実 |
第5回 | 2000年 | 宮島 | 西島 義則 |
第6回 | 2001年 | 尼崎 | 石田 政吾 |
第7回 | 2002年 | 若松 | 植木 通彦 |
第8回 | 2003年 | 蒲郡 | 辻 栄蔵 |
第9回 | 2004年 | 若松 | 田村 隆信 |
第10回 | 2005年 | 桐生 | 江口 晃生 |
第11回 | 2006年 | 若松 | 松井 繁 |
第12回 | 2007年 | 桐生 | 魚谷 智之 |
回 | 開催年 | 開催場 | 優勝者 |
---|---|---|---|
第13回 | 2008年 | 蒲郡 | 松井 繁 |
第14回 | 2009年 | 若松 | 菊地 孝平 |
第15回 | 2010年 | まるがめ | 石野 貴之 |
第16回 | 2011年 | 蒲郡 | 佐々木康幸 |
第17回 | 2012年 | 尼崎 | 井口 佳典 |
第18回 | 2013年 | 若松 | 松井 繁 |
第19回 | 2014年 | まるがめ | 吉田 拡郎 |
第20回 | 2015年 | 三国 | 石野 貴之 |
第21回 | 2016年 | 鳴門 | 石野 貴之 |
第22回大会 まるがめ 優勝戦2017年7月17日(祝)・第12レース |
充実した沖縄での生活 長崎支部の起爆剤になりたい
― 数年前に沖縄に引っ越されました。沖縄生活はいかがですか?
原田オンとオフがはっきりします。そこはすごく良いですね。空港から30分くらいですけど、家から近くのコンビニまで車で10分くらい掛かります。
家自体は『ザ・沖縄』という感じで、沖縄を満喫できます。リビングは東向きで、水平線しか見えないので、目の前の海岸から朝日が昇ってきます。朝からビールなんか飲むときもありますから(笑)。
沖縄に帰ると、周りにボートを知っている人もいないし、のんびりと生活できます。レースに対してプラスかどうかはわからないけど、人生にとってはプラスですよ。
― 沖縄でのボート認知度は・・・。
原田CMや選手募集はしているみたいですけど、沖縄ではまだボートの認知度が低いので、僕も沖縄の人にもっとボートを知ってもらいたいという気持ちです。
沖縄の人もギャンブル自体は好きだと思いますし、沖縄出身の選手が出れば興味を持ってもらえると思います。だから、子供たちにはボートを知ってもらいたいし、選手を目指してもらいたいですね。それには僕がグランプリを勝って、沖縄の人にボートを知ってもらうのが一番です。
― 4月に愛知支部から長崎支部に移籍されました。
原田沖縄に引っ越したときから、支部移籍は考えていました。妻が長崎出身なので、それだったら正月とGW、お盆と、大村を地元として走れる長崎支部が良いかな、と決めました。沖縄に永住するつもりで自分の両親も連れて行ったので、今の愛知には何も残していません。
― 両支部の反応は・・・?
原田長崎支部の人とは以前から仲良くやっていたので違和感はありません。石橋道友とは飲みにいったり、ゴルフに行ったりと交流がありました。長崎には仲の良い同期も3人いますから、僕自身は溶け込んでいると思っています。
愛知支部では池田浩二や弟子の(柳沢)一ちゃん、岩瀬(裕亮)が沖縄に遊びに来てくれるし、年に何回か集まって旅行や飲みに行っています。これからもそういう関係を続けるつもりです。
― 長崎支部のSG覇者は30年ぶりです。
原田そういう意識は全然ありませんでした。僕が長崎支部の刺激になれれば良いかなと思っていましたけれど。移籍してすぐ、大村のGIダイヤモンドCとGW戦で優勝できたのは嬉しいことです。「次は原田幸哉をやっつけたい」みたいに思ってもらって、長崎支部みんなで切磋琢磨できれば良いと思います。まぁ、最初にGIを優勝できたのは出来すぎですけど(笑)。
自分をコントロールしてGIV2
― 今年はGIで2回優勝されています。
原田去年は1月最初の唐津周年を優勝戦1号艇で負けてしまいました。その悔しさを取り戻したいと思って、逆にズルズル行ってしまいましたね。
今年は1月の下関周年に、わざと自分にプレッシャーを掛けて、変な緊張感を持って行きました。それでも自分の思いどおりのレースができました。大村のダイヤモンドCは気持ちで勝てたという感じです。自分をコントロールすることができました。
― では、今年は好調ですね?
原田その2回以外のレースにダメなところが出ていて、「あまりうまくは行ってないな」と思っています。一般戦では予選トップで4回も負けています。その悔しさの方がデカくて、調子が良いと言われると・・・。
6月の若松周年で準優1号艇で負けてしまったのは、完全に気持ち負けです。差された時点で焦ってしまって、2等も獲れたのに5等まで落ちてしまいました。この1戦に関しては完全に自分のミス。「こういう気持ちで、こういう風にレースしてはダメだ」と、今後に生かせる良い材料になりました。
B級落ちの悔しさをバネに無敵のスタートを身につける
― 過去に2回B級に降格した経験がありますが・・・。
原田2009年・グランプリでの2本目のFと、整備規程違反が原因ですね。B級に落ちたときは「ガクンッ」ときました。2回とも1年から1年半くらいSG・GIに出られなかったので、その間のモチベーションをどう保とうかと悩んだ時期もありました。その2回があるから、今の自信を持って行ける自分があるのだと思っています。特にスタートに・・・。
― スタートですか?
原田ダッシュ力です。B級になる前もタイミング自体は早かったんですが、スタートの上手さという点では、ダッシュが乗っているわけではなかったので・・・。キク(菊地孝平)はすごくスタートが巧いな、と思っていました。キクを見て「よし!変えよう」と思いました。
僕はスタート勘自体には自信があったけど、「遅れたくない」という気持ちから、どうしても合わせるスタートが多かったんです。2回目にB級になって一般戦回りになったときにスタートのやり方を一から見直して、ダッシュ力のあるスタートを意識して磨いてきした。失敗も多かったけど、今ではキクとも遜色ないほどのスタートを身につけたと思います。
B級に落ちず、記念戦線を走り続けていたら気にならなかったかもしれないけど、B級落ちは良いキッカケになったと思います。今ではタイミングに加えて、巧さという点でもスタートに絶対的な自信を持っています。
― スタートが最大の武器ですね!
原田爆発力もイメージとしてあります。ファンの方にも、選手にも、「調子が良いときの原田は手がつけられない」って思わせたいですね。良いエンジンを引いて、これは負ける気がしないと思ったら、全部勝ちに行く気でレースをします。
丸亀への不安がなくなり大爆発のチャンスを待つのみ
― 4月一般戦は5年ぶりの丸亀でした。
原田あのときも一般戦で、優勝戦の1号艇で負けてしまって・・・。攻めて来た3号艇の選手よりもエンジンを出し切れていなかったし、3カドでコンマ07のスタートを決められて、その勢いにも負けて完敗です。
それでも5年ぶりに丸亀を走ってプラスはありました。今まで丸亀では成績が良くなくて。持ちペラの頃しか走っていないけど、自分のプロペラが合わなかったんです。海水の児島や宮島は好きなレース場なので「丸亀だけ、なんで?」と思っていましたけど、それが前回でなくなりました。2連率15%のエンジンを、よくあそこまで仕上げられたと思います。優勝戦はあの展開で2着でゴールできたし、完敗でも悔いなしです。
― 丸亀・オーシャンカップへの意気込みを!
原田4月に丸亀を走らせてもらって、不安材料はなくなりました。ナイターSGを優勝してみたい気持ちも強いです。オーシャンカップは1年間のGIで活躍した選手が揃うので、メンバーも充実していて、やり甲斐があるSGだと思います。その中で1番のパフォーマンスを出したいですね。
自分の持ち味は“爆発力”だと思っています。スタートにも絶対の自信を持っています。それを発揮できる状況になれば、最大のパフォーマンスを出したいと思っています。