第21回オーシャンカップを制した男
チャンスを逃さない強さを武器に
最小のリスクで最大の結果を出す。

プロのボートレーサーは走ることが仕事である。そこにはプライドと生活が懸かっており、舟券と同じく「ローリスク・ハイリターン」が一番なのは言うまでもない。ただ、石野貴之はそれでは満足しない。「大阪支部を継ぐ」と明言する石野が自身に課した、プロの条件とは何か。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二)

いしの たかゆき
1982年(昭和57年)6月3日生まれ。大阪支部・90期。2002年5月、住之江でデビュー。03年10月、宮島・新鋭リーグで初優勝、07年1月、大村・新鋭王座決定戦でGI初優勝、10年7月、丸亀・オーシャンカップでSG初優勝を飾る。
父はGI覇者の石野美好(引退)、同期には吉田拡郎、赤坂俊輔、宇野弥生らがいる。
出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
---|---|---|---|---|---|
全種別 | 3,370回 | 144回 | 45回 | 50.4% | 64.5% |
S G | 352回 | 15回 | 4回 | 40.9% | 54.8% |
G I | 885回 | 21回 | 5回 | 42.5% | 56.3% |
全国最近2節成績 | ||||
---|---|---|---|---|
17年 | 5月 | 宮 島 | GI・周年 | 4 5 3 1 4 2 6 1 6 |
17年 | 5月 | 住之江 | タイトル | 2 4 3 4 1 4 2 3 2 4 |
鳴門前回成績 | |||
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16年 | 7月 | SG・OC | 5 6 2 2 1 2 1 1 |
(2017年5月16日現在)


「今回は良いエンジンが引けたので勝負と思い、ハラを決めて走りました。(1マークは)雄史に行ってくれと思っていたけど、丸岡さんがうまく残していましたね。1号艇以外で勝てたのは自信になります。
レース場ではつねにボートのことを考えています。自分のなかで良いイメージを作って、イメージしたものが実現するように努力をしています。次は5大競走を勝ちたいですね」
着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 石野 貴之 | (大阪) | 3 | 03 | 1.47.5 |
2 | 1 | 丸岡 正典 | (大阪) | 1 | 11 | 1.49.1 |
3 | 2 | 新田 雄史 | (三重) | 2 | 05 | 1.50.9 |
4 | 6 | 岡崎 恭裕 | (福岡) | 6 | 11 | |
5 | 4 | 池田 浩二 | (愛知) | 4 | 12 | |
6 | 5 | 毒島 誠 | (群馬) | 5 | 13 |
▲2連単 3-1 650円(2番人気)
▲2連単 3-1-2 3,040円(12番人気)
▲決まり手=差し
2016年を振り返って・・・
石野昨年は「良くやったな」と思います。戸田周年優勝戦でフライングをしましたが、そこで「一般戦で全部優勝してグランプリに行く」と自分を追い込めたのが良かったですね。それがSG優勝という良い結果に繋がったと思います。
2回のSG優勝は引いたモーターも良かったけど、チャンスをモノにできたのが大きいですね。チャンスってそう来るものではないし、折角来たチャンスも自分のミスでフイにしてしまえば次はもう来ない、そう思います。だから、チャンスが来たときは絶対にモノにするという心構えで日々走っています。
つねにポジティブ思考で走る
石野レース場では良いイメージを作っていくようにしています。簡単に言うと「ポジティブか、ネガティブか」ということです。レースの前には自分が優勝するシーンをイメージします。優勝戦で1着を走っているときの様子や、どういう気持ちで走っているのかと想像します。ネガティブになってしまうと思い切ったことができなくなって、そこで成長が止まってしまいますから。物事はポジティブに考えることが大切です。
反省の鳴門オーシャンC優勝戦
石野昨年のオーシャンカップはエース機だったんですけど、直前節で転覆していて出ていなかったんですよね。初日の成績が悪かったので、本体を割って見直したら良くなりました。
ただ、あの優勝戦は褒められた内容じゃなかったです。プロならあんなリスクの大きいスタート(コンマ03)は行くべきじゃない。優勝戦でFを切ると1年間SGに行けなくなるから、僕らボートレーサーにとっては死活問題です。
お客さんは「良いスタート」だと思うのかもしれないし、スタートを行って勝つのは気持ちが良いけど、行かないに越したことはありません。勝てれば良いんですから。
大阪支部の次代を引き継ぐ
石野いつの時代も、大阪支部には必ず強い選手がいるんです。皆さんそれぞれ違うオーラがあって、記念に行き出した頃は喋りかけづらかったですね・・・。それに、住之江が地元だとグランプリで優出して優先出場権を取らないと、メモリアルに出られないんですよ。2007年に推薦されたときは田中信一郎さんと太田和美さんがF休みでした(苦笑)。
今は先輩たちをお手本に、“エェとこだけ”いただいている段階です。僕は3年続けてグランプリに出場していますが、大阪支部を継ぐには最低でも今後10年は強いままでいないと無理でしょう。僕が次の世代になって、強い大阪支部を継いでいきたいと思っています。
リスク最小 強さ最大がプロ
石野僕は、プロのボートレーサーです。プロはお金を稼いでナンボですし、誰が見ても納得するような強いレースをするのもプロなのかなと思います。いくら巧くても、弱かったら何にもならないですから。
だから、強いレースで勝ちたい。理想はやっぱり得点トップ通過、1号艇で準優、優勝戦に乗って逃げて勝つことです。SGでその勝ち方ができたのは三国のオーシャンC(15年)だけなので、そこが自分にまだ足りていない所じゃないですかね。
今回も鳴門SG連覇とかは考えていません。三国と鳴門でオーシャンCを連覇できたのも、たまたまチャンスがあったのだと思います。
今回もチャンスが来たらモノにするだけです。チャンスを逃さないよう、準備をして臨みます。