the INTERVIEW
注目レーサー the INTERVIEW
(三重)
「心を動かすような人間になりたい」とボートレーサーを目指した少女は、今やインパクト大の超攻撃的なレースで、ファンの心を大きく揺さぶる女子トップレーサーにまで成長を遂げた。
しかし、かつて見た地元の大先輩ほど、心を動かす人間にはまだなれていないと言う。夢が尽きない彼女にとっては、今大会も通過点だが、目標に少しでも近づくために、これからも勝ちまくる。
(インタビュアー/三吉功明 ●ボートライター)

1994年8月5日生まれ。三重支部・113期。
2013年11月、津でデビュー。18年5月、下関・W優勝戦で初優勝。21年8月、浜名湖・レディースチャンピオンでGI初優出。22年5月、宮島・オールスターでSG初出場。同期には椎名豊、佐藤博亮、浜先真範らがいる。
出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
全種別 | 1,742回 | 34回 | 6回 | 35.5% | 50.8% |
S G | 9回 | 0回 | 0回 | 22.2% | 44.4% |
G I | 126回 | 1回 | 0回 | 24.6% | 42.0% |
22年11月 | 鳴 門 | GII・レディースCC | 21322114 |
22年11月 | 三 国 | ヴィーナスS | 162222111341 |
22年 4月 | タイトル | 241131512413 |
21年 7月 | ヴィーナスS | 41541113511 |
(2022年11月30日現在)

― 小さい頃の夢は?
高田「人の心を動かしたい。そんな憧れを抱いたのは中学生の時でした。オールスターで井口佳典さんがSG優勝された時に当時中学生だった私は、地元の津で見ていたんです。ツッキードーム(津の場内施設)で中継を観戦していて、井口さんがゴールした瞬間に、そこにいた大勢のファンがスタンディングオベーションで喜んでいたんですよ。私も鳥肌が立ったし、地元のファンに愛されている井口さんのように人の心を動かすような人間になりたいと思うようになったんです。
小さい頃からボートレーサーになるのが夢でした。小学3年生の時、親に地元の津に連れて行ってもらって、ファーストインパクトが凄くてひと目ぼれでした(笑)。卒業文集もずっと選手になりたいって書いていましたしね」
― 訓練生時代の思い出は?
高田「最初の印象は周りのハングリー精神が凄くて驚きました。今まで自分がどれだけ温室で育ってきたかを実感しました。私もモチベーションは高いつもりでしたけど、自分なんて全然だなと思い知らされました。
最初はみんなに付いていけなかったけど、良い意味でも悪い意味でも私は柔軟に対応できるタイプなので、次第に気持ちの面でも付いていけるようになりました」
― デビュー当時考えていたことは?高田「始めの頃はすぐに1着を獲ってやるとか、すぐにA級になってやるって思っていました。本部めぐみさんと本部真吾(引退)さんに面倒を見ていただいて、めぐみさんがその時のレディースチャンピオン最年少優勝(24歳)の記録を持っていたんですよ。それを塗り替えたいなんて思い上がってもいました。でも、全然勝てへんし、気持ちだけではどうにもならないということを嫌というほど学びました」

― 伸び仕様にしたキッカケは?

高田「転機はやっぱり2020年から伸び特化にしたことですね。元々伸びには興味があったんですよ。
蒲郡の地区選で伸び寄りのエース機を引いたんです。男女混合戦のGIに初めて出て、どれだけ自分が通用するかわからない中で、そこそこ戦えると思えたんです。
ちょうどその頃に野添貴裕(引退)さんや藤山翔大さんと一緒の節が続いて、いろいろ教えてもらいながら今に至るって感じです。
私は1着がたくさん欲しいタイプで、注目されるのが好きなんですよ。学生時代には生徒会長をやったり、なんでも一番が好きなんです(笑)。三吉さんに、ダーヒーチャンス(高田ひかるが捲りそうなチャンスレース)という言葉を広めていただいたんです(笑)。SNSとかでも私もよく聞くようになって、そのチャンスには応えたいって思うし、注目されることは嬉しいですよ」
― 近況について。
高田「ベースの伸びを大事にするというのは、2年前から変わってないんですけど、今は一節間のレース運びも考えています。2年前はガムシャラに伸びだけ求めて走っていただけですけど、初日に周りへ与える印象も大事だなと思っています。1走目は特に相手に与える印象も大きいと思います。
ただ、今年は自分の中ではあまりレース内容に納得していなんですよ。勝ち切れていないというのが一番の理由です。記念もたくさん走らせてもらうようになって、対策をされた時に何もできない自分がいます。それを上回ってやろうと意気込んで調整を失敗したりとか…。やってはいけないことを知れたのも大きいんですけどね。
それでも最近は立て直してきました。自分の良い所を挙げるとすれば、あんまり腐らない所かなと思っています。ダメな時もやり続けてこられたのが、今に繋がっているのかと。周りからは頑固と言われますけど(笑)」
― 鳴門レディースチャレンジカップは悔しい結果に…。
高田「優勝戦は80m近辺のスタートからでも伸び返す調整ができたし、1番数字の悪いエンジンでSGメンバーに負けないくらいのパワー出しができたことは自信になりました。なかなか簡単にいかないからこそ勝てた時の喜びは大きくなると思うので、これからももっと上を目指して腐らず頑張っていきたいです」

― 舞台は住之江になります。
高田「昔は少し住之江に苦手意識があったんですけど、今はあまりないです。今年の4月に走って良い調整ができているなと最近は思っています。住之江は水が硬いとか乗りづらいとよく言われますけど、どんな水面でも乗れるのが自分の強みだと思っているので、あまりそこは気になりません」
― 枠番抽選に関して思うことは?
高田「どのコースからでも勝てるのが自分のセールスポイントなので、枠番抽選での不利は人よりも小さいと思います。
ちなみに、抽選運はこれまであまり良いほうではなかったんですけど、ここ最近は40%超のエンジンを引くとか、上向きなんですよ。この年末にかけてドンドン良くなっていってほしいという願いはあります(笑)。
好きな枠は1号艇以外だと3、4、6号艇ですかね。5コースの勝率が悪くて、5コースから攻めて6コースの人に展開を突かれがちというか…。単純に好きな色が赤なので、3号艇を引きたいです。どの枠を引いても捲って勝ちにいきますよ」
― 高田ひかるの見極め方は?
高田「基本的には展示タイムを見ていただければ良いと思います。あとは、スタート展示でスタートしてからの足を見てほしいなと思います。スリット後の足がウリなので。以前はスリット後にすぐに上体を起こしていたんですけど、今はファンの方にもわかってもらいやすいようにターンマークぐらいまで被るようにしてます」
― クイーンズクライマックスへの意気込みを!
高田「調子自体は上がってきているので、良い感じで年末に臨めそうです。ここまで来て劇的に何かが上手くなることもないのであとは神頼みですね(笑)。大阪の箕面にある必勝祈願で有名な勝尾寺にお祈りしてきます。
ベストは王道の1号艇で優勝したい。プレッシャーが掛かる状況で優勝できれば、またひと回り成長できるかなと思うんですよ。優勝できると信じて行きます。優勝してクラシックにも出たいです。出るからにはSGを獲りたいってなると思うので、どこまでも夢が尽きないのがボートレーサーの魅力じゃないですか? 挑戦し続けることが私にとっての“ダーヒーチャンス”です」
― 改めて夢は何ですか?
高田「結局、たくさんの人の記憶に残るレースがしたいんですよね。井口さんのように人の心を動かすレーサーになりたい。それが私の夢なんだと思います」