the INTERVIEW

「まだ経験していないこと、地元常滑でSG 優勝をしたいと思っています」

 ハイテクターンでボート界を席巻し、2度も頂点に立った池田だが、ここ数年は大舞台での活躍が減っている。それでも、今回の決戦の地は地元・常滑。ただいま15節連続優出中、そして今年1月の65周年、4月の66周年と、どちらもワースト級モーターを手に優勝した。まだ手にしていないSGタイトルはオーシャンCとチャレンジCの2つ。池田の常滑最強伝説の完成へ、クールな男がその思いを語った。

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二)

いけだ こうじ
1978年4月3日生まれ。愛知支部・81期。
1997年11月・常滑でデビュー、2走目で水神祭。99年4月、常滑・GW戦で初優勝。2002年7月、蒲郡・周年記念でGI初優勝。03年6月、丸亀・グラチャンでSG初優勝を飾った。グランプリは11年の26回、13年の28回大会で優勝歴。同期には佐々木康幸、飯山泰、寺田祥らがいる。

代名詞のウィリーターンは持ちペラ制度時代のもの

―池田選手といえばウィリーターンですが、なぜあのターンを?

池田 若い頃に「ほかの人と同じ乗り方をしていたら、上はないな」と思って始めました。昔はターンへのこだわりが強かったんですけど、齢も齢だし、今のプロペラ制度になってからは追求しなくなりました。持ちペラ(選手持ちプロペラ制度)のときだけでしたね。乗り方そのものは変えていません。

―持ちペラ制度の頃と今では、何が違うのでしょう?

池田 今の「1枚で」っていうのが、僕には向かないです。持ちペラの頃はプロペラ交換が多いほうでした。ヒネってあったり、ピッチが強かったりと、パターンごとに叩いてあって、それをただ交換するだけでした。

 今の1枚しかない制度だと、その1枚が合わなかったらズルズルと悪いまま行ってしまいます。時間は掛かりましたが、ようやく今の制度に慣れてきた感じです。

―最近の走りで意識していることは?

池田 今年に入ってから、スタートは行けています。遅れないように、早く握って合わせているだけですけど。

 前はタメて、全速で行こうと思っていました。(14年に)F2になった頃の僕は、スタートに関しては全然、何も考えていなくて、隣に艇がいれば行っていました。でも、それは起こし遅れたら終わりなんで…、考え方を変えました。

 今は、早起こしで合わせています。破壊力はないけど、今はこのやり方がハマっているので、フライングするまではこのスタートの方法で行こうと思っています。

プロペラの綺麗さはエンジン勝率より大切

―今年は常滑65周年、66周年を連覇! モーターはどちらもワースト級でした。

池田 1月は初下ろしからまだ2ヵ月しか経っていなかったけど、4月は2連率16%のエンジンで、「また悪いの引いたな」と…。まぁ、誰かが引きますから(苦笑)。悪いエンジンのときは、気負うと事故が多くなるんです。だから、ただの1節と考えて行きました。それが良かったのかもしれないです。

 それに、そこまで悪いエンジンだと、整備も思い切ってやりやすいですから。整備士さんも自分の担当するエンジンの状態を知っていて、そろそろ部品の換えどきかなという感じだったので。

 ただ、僕にとって“良いエンジン”とは、プロペラが綺麗に叩かれているかどうかです。プロペラに癖がない状態で、自分で形を変えやすいかどうかなので、エンジン勝率はそんなに気にしません。2戦ともエンジン自体は良くはなかったけど、プロペラは叩きやすい状態でした。

―捲りで攻め込む場面もありました。

池田 内がスタートで遅れてくれたというのもあるけど、自分の舟足に余裕がなかったからでしょう。捲りで勝つのは気持ち良いけど、なかなかないです。実際に、常滑周年でも外に差されましたから。

 足が良いときは、巧く捲り差しにも入れます。足が良くなくて、仕方がないから捲る羽目になるんです。

―地元で気合も入っていた?

池田 地元意識っていうのはありますけど、40歳を過ぎるといつも通り、そこまで気持ちを入れることはないです。そういうのは、平本真之とか、年下の選手に任せています(笑)。

貪欲に勝ちに行く時代から流れに身を任せる年代へ

―常滑のエース・池田選手には、2度のグランプリ優勝があります。

池田 グランプリを勝ってから、燃え尽き症候群みたいな感じにはなりましたね。昔は「ボートレーサーは40歳から」って言われていましたけど、今は選手のサイクルも早いですから。下の世代の勢いが凄いです。

 この歳になると、優勝までの流れをイメージして気合を入れることはなく、「いつもと同じことをやって優勝できたら良いな」という、チャンスを待つ感じになります。これじゃあダメなんですけどね。僕は少しこの職業に疲れているのかな(苦笑)。

―勝ち負けではない、と。では「やれた」と感じるのは?

池田 エンジンが言うことを聞いてくれて、自分が思い描いた出方をしてくれることです。勝つ、勝たないよりも、気持ち良くターンできる状態でレースに行ければ、自分の中でも納得できます。

 プロペラもなかなか巧く叩けなくて、妥協しながら走っていることがあって…。そんな状態のときは、「俺を買ってくれるな」と思うんですけど(苦笑)。

グランプリを勝つよりやっていないことをしたい

―「もう一度、グランプリ制覇」という気持ちは…?

池田 3度目のグランプリ優勝には、そこまでこだわっていません。それよりも、“まだ経験したことのない”ことをしたいと思っています。その1つとして、グランプリに(トライアル)2nd発進で乗ってみたい。これが、まだないんですよ(笑)。

―確かに、18人制になってからは全部1st発進ですね。昨年は1stで敗退しています。

池田 2日間で終わるのは、切ないものがありましたね…。グランプリは枠番にも左右されるので、いかに良い枠番で乗るのかというのが大きいです。モーターも上位6基が2nd組に渡るし、やっぱり1stから優勝するのは厳しいです。

―SGタイトル全制覇、グランドスラム達成へ、残すはオーシャンCとチャレンジCのみです。

池田 それも経験したことのないことですね。もう一回、レースとの向き合い方を考え直してみようかなとも思っています。

 流れが良ければ、今回のオーシャンCが勝負だと思うけど…。

常滑のSGはこれが最後 そう思って、走る

―今年は5月末時点で既に5優勝です。調子はいかがですか?

池田 調子が良いというか、成績はいつもより残せていますね。やっていることは一緒なんですけど。調子が良い悪いは、やっぱり引いたエンジンが全てかなと思います。最近はまた予選敗退が続いているので、流れを変えなければいけないですね。

―地元・常滑のオーシャンカップに向けて、抱負を!

池田 常滑のSGでは優勝戦2着(09年・チャレンジC)がありましたね。地元のSG優勝はないので、1回は経験しようかなと思っています。

 常滑でSGが開催されるのは5年ぶりだし、次はないかもしれない。自分にとっての常滑SGはこれで最後だと思って走ります。もちろん優勝を目指しますよ。

池田 浩二選手 データ室 (2019年6月4日現在)
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 5,026回 248回 67回 53.4% 69.9%
SG 960回 30回 9回 42.9% 58.8%
GI 1,968回 71回 10回 44.2% 63.8%
◆全国成績(最近3節)
19年 5月 児島 GI・周年 6 3 2 5 1 2 3 1 4
19年 5月 福岡 SG・オールスター 4 2 4 3 3 5 1 4 3
19年 5月 GI・周年 4 3 3 失 2 2 3 1 2
◆常滑成績(最近2節)
19年 5月 タイトル(GW戦) 1 1 1 3 1 1 1 1 2 1 1
19年 4月 GI・周年 1 1 4 3 2 1 1 1
良い流れを作って常滑オーシャンCへ!

「最近の常滑GIはどうも勝てないね。エンジンを出し切れていなくて…。どんなエンジンを引いても出さなきゃいけないと思っているし、出せないことはないと自分では思っている。実際にドリームでずり下がっていたエンジンを仕上げて、得点トップで準優に行ったこともあったし。何とか今回はという思いはあるね。

地元だからといってそこまで意気込むことはないんだけど、常滑でのSG成績を見せてもらって、SGは相性が良いんだなと気づけた。そのデータはポジティブに考えられる材料だね。ここでまた“良いイメージの常滑の記念”を復活させたいね。

まずは良い流れを作って、常滑のSGに向かいたい。蒲郡と常滑は応援してくれるファンの方も多いし、良い所を見せられたらと思います」

■常滑最近2節成績
19年 4月 GI・周年 6 5 6 2 2 6 4 4
19年 1月 GI・周年 1 6 3 4 1 4 4 1 6
初SGの目標は、何が何でも準優進出!

「去年はGIの斡旋がいっぱいありました。『オーシャンCに乗れっ!』ってことだったんでしょうね(笑)。

初めてレースを見たのは常滑で、SGレースを初めて見たのも常滑です。滝沢芳行さんが優勝したダービーは、スタンドでレースを見ていました。その常滑で自分がSGデビューを飾るなんて感慨深いですね。52番目でギリギリ乗れたんで、気負わずに“チャレンジャー精神”で挑みます。地元なんでエンジンの見極めも大丈夫ですし、調整も頭の中でイメージはできています。

目標は、SG水神祭を狙うとかじゃなくて、どんな形でも良いから準優には乗りたい。やる気ありますよ。今までは送りバントのレーサー人生でしたが、この辺で大きな当たりを打ちたいです!」

■常滑最近2節成績
19年 5月 一般競走 1 4 1 5 2 6 1 4
19年 4月 GI・周年 6 1 5 1 6 4 5 1
常滑オーシャンCの最低ノルマは優出!

「オーシャンC出場は、開催が決まったときから意識していました。GI復帰戦の11月浜名湖でFをしたときも、『GIで2回優出すれば何とかなる』と思っていたので、気持ちも沈みませんでした。次の唐津DC優出で、モチベーションもかなり上がりましたね。

常滑のメリットは、自然体で行けることです。常滑に住んで6年経ちますが、ピットは馴染みの人ばかりですし、スタンドには知っている人たちが応援に来てくれます。子供も小学校や幼稚園に行き出して、パパ友もできました。良い所を見せたいなって思いますよ(笑)。

だから、オーシャンCは優出が最低ノルマ。池田浩二さんもそうですが、僕も優出が続いています。それを途切れさせたくないですね」

■常滑最近2節成績
19年 5月 一般競走 2 3 2 4 4 1 1
19年 4月 GI・周年 3 2 1 4 2 2 1 5