the INTERVIEW

「質の良いスタートを決めて、優勝戦には乗りたい」

注目レーサーthe INTERVIEW 4831 羽野 直也(福岡)

4831 はの なおや
1995年(平成7年)3月29日生まれ。福岡支部・114期。
2014年5月、若松でデビュー。15年4月、若松・一般競走で初1着。16年7月、芦屋・一般競走で5コース捲りで市川哲也、矢後剛のSG覇者を破りデビュー初優勝を飾る。同期に松尾拓、村松修二、中村桃佳がいる。

◆通算成績

出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 664回 10回 3回 32.2% 54.7%
GI 11回 0回 0回 18.2% 45.5%
◆全国成績(最近3節)
17年 8月 芦 屋 タイトル(お盆戦) 13362666141
17年 8月 江戸川 GIII・企業杯 122333642
17年 8月 浜名湖 GI・周年 42366243

(2017年8月21日現在)


2017年の九州地区トップルーキーに選出された期待のホープ・羽野直也。やまと時代の恩師・荘林幸輝教官と師匠・別府正幸の言葉を胸に、レーサーとしても、人としても成長を続けている。取材中に何度も口にした“スタートの質”を高めて、自慢のスピードターンで優勝を狙う!

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』武内達也)

狙って勝ちに行って結果を出せたことが自信に

― いつ頃からボートレーサーになろうと?

羽野 嘉穂東高校に通っていたんですが、在学中に「卒業生に強いボートレーサーの方がいる」って聞いて、一度見てみようと福岡ボートに行ったのがキッカケです。実際に見て、この仕事をしてみたいと思いました。その卒業生が瓜生正義さんっていうのは、デビューした後に気づいたんですけど(笑)。本当なら113期を受けたかったけど、ずっと野球をやっていたので体重が落とせなくて、114期で受験しました。

― やまと学校の生活はどうでしたか?

羽野 僕は同期で一番年下だったので、いろいろとキツかった。余裕がなかったですね。リーグ戦も優勝戦での事故が2回あったし詰めが甘かったです。「優出はできる」と思っていたけど、優勝したいって気持ちがあったかと言われると、なかったかもしれない。卒業時にB1級並み斡旋が獲れれば良いかな、ってくらいでした。そんな気持ちじゃ勝てないですよね(苦笑)。

― 欲がないというか・・・、冷静ですね。水神祭や勝負駆けのときもそんな感じでしたか?

羽野 水神祭までは凄く長かったですね。ただ、荘林教官から「3着が1着だ」って言われていたので、めちゃくちゃ水神祭をしたいとは思っていなかったんです。6着を取らないレースを心掛けていましたし、スタートも全速で、質の良いスタートを行くようにしていました。自分では価値のあるレースをしているつもりだったので、同期が水神祭をしていても焦りはありませんでした。

 それでも、1年後に若松で初めて1着を獲ったときの景色は最高でしたね。今までの3着の景色と全然違うんですよ。「1着も良いな」って、これからも勝ちたいと思うようになりました。

 勝負駆けの方も、1、2期目は「B1級にはなれるな」って感覚はあったけど、B1級になろうとはしていなかったですね。「3着が1着」でしたから、2連率が足りませんでした。B1級に上がったのは3期目です。B1級になって少しずつコースを主張しだすと、今度はレースがチグハグになってしまい、最終的に勝率は獲れたけど、また2連率不足でした。A2級になっても本気でその先、A1級を目指していない自分がいて・・・。

 だから今年の4月、A1級勝負駆けとなったときに「毎回勝負駆けで失敗している。このまま今までと一緒の結果になるなら、今回は思い切ってやってみよう」って、狙って勝ちに行くようにしたんです。そうしたらA1級になれたし、優勝もできました。前期は自分のレーサー人生で大きな転機だったし、結果を求めて走って、ちゃんと結果がついてきたことが嬉しかったです。

質の良いスタートがあればGI戦線でも戦っていける

― 6月住之江周年でGIデビューしましたね。

羽野 初めてGIを経験して、モーターの出し方に差を感じました。僕は分が悪い方のグループで、中堅より少し良い人とは足が違いました。

 ただ、得るものもありましたよ。前期から“ダッシュ力”を意識するようになって、それができればGIでも何とかなるのかなって感覚はありました。スタートのタイミングよりも、ダッシュをつけて全速でスリットを通過すること、質の良いスタートが行ければ戦えると思います。

 スタートの質を意識するようになるまでは、スタートは同体くらいで良いと思っていましたが、質の良いスタートが行ければ、試運転で負ける人が相手でも大丈夫なんですよ。だから、スタートのタイミングも質も良い、菊地孝平さんって凄いですよね。

― 芦屋GW戦では菊地選手と同じSG戦士の瓜生選手を破って優勝です!

羽野 芦屋のGWレースはあまり良いモーターではなくて優勝できるとは思えなかったんですが、最終日にスリット付近の足が結構良くなっていて、展開があってもなくても、自力で勝負できる足になっていました。

 昨年の初優勝ももちろん嬉しかったんですが、このGWレースの優勝が一番大きかった。瓜生さんや前田将太さん、江夏満さんがいる優勝戦で勝てて、自信になりました。

師匠、同期、弟・・・多くの仲間とともに走る

― 後輩の仲谷颯仁選手、同期の松尾拓選手とともに、今年の最優秀新人候補の1人です。

羽野 仲谷颯仁は強いっすよ。初1着、B1級昇格は颯仁が先です。フライングも先ですけど(笑)。

 颯仁が強くなってくれることは自分の刺激になるので、凄く意識していますよ。最優秀新人は獲りたいとは思っているけど、颯仁が獲るならそれでも良いかなって・・・。でも、負けたくないです(笑)。

 最近、同期との関係性が凄く良いんですよ。一番年下なのでずっと敬語だったけど、ここ1年くらいでタメ口で話せるようになりました。お互い、良いことも悪いことも言い合えます。拓は巧いっすよ。レースを観ていると、本当に巧いです。ヤングダービーは拓と村松修二がいるので、一緒に頑張りたいですね。

― 師匠の別府正幸さんは「目指せ、優勝!」と言っておられました。

羽野 別府正幸さんには凄くお世話になっています。レーサーとしてはもちろんだけど、師匠からは常々「人として大きくなって欲しい」って言われています。ただ、たまに師匠の意見を聞き入れない自分がいたりもするので、そこは気をつけなきゃな、って思います。周りの先輩方も良くしてくれるので、環境に恵まれていますね。

 今回のヤングダービーで優勝したら、師匠はめっちゃ喜んでくれると思います。優勝できなくても「こんなことがありました」って過程を報告したい。師匠はお肉とビールが好きなので、優勝して、大好きな“すき焼き”をご馳走したいですね。

― 9月には弟・諒さんが養成所を卒業されます。

羽野 ケガだけはしないように頑張って欲しいですね。本人の気持ち次第だけど、強くなりたいって言えば協力は惜しみません。弟には頑張って欲しいし、僕も一緒に強くなりたいです。後々、プロペラとか教えてもらいたいですし(笑)。

― さあ、ヤングダービーへの意気込みを!

羽野 蒲郡は初めて走ります。ナイターを走る機会も少ないので、福岡の先輩方にいろいろ聞きながらのレースになると思います。

 もちろん目標は優勝だけど、優勝戦には乗りたいです。どんな状況になっても、諦めない気持ちを持ちつつ、冷静になりたい。あとはスタートの質、結局そこだと思います。僕の武器は捲り差しなので、3、5コースで狙ってください!


師匠・別府正幸からのエール
「直也が一番努力している。目指せ、優勝!」

「デビュー当時から努力家で、1日見ただけで『この子は強くなる』と感じました。そういうのってあるじゃないですか。

直也の一番の良いところは“やり続けること”です。僕が言ったことは素直に聞いてくれるし、絶対にサボらない。人がいないとサボる子もいると思うけど、誰もいなくても真剣に取り組んでいます。しっかりと目標を持ってやっているし、僕がレースから帰ってくるまでに課題をクリアしようとしている。今の直也にはレーサー生活って言うより、プライベートで良い仲間に巡り合って、人生を良いものにして欲しい。

ヤング世代では直也が一番努力していると思うので、ヤングダービーで活躍できるように僕もできるだけ力を貸したい。『目指せ、優勝!』ですね」