the INTERVIEW

「今年は平成組が獲ります。
 もちろん僕の目標も優勝です」

大谷翔平、羽生結弦、萩野公介、高木美帆。1994年度生まれはスポーツ界の「黄金世代」とも呼ばれている。ボートレースでも、95年早生まれの羽野直也というニューヒーローが黄金世代から誕生した。ただ、ほかの競技との違いは、ボートレースは選手寿命が圧倒的に長いこと。羽野自身も「いろんな人の良い所を吸収している段階」と何度も口にしていた。ボートレース界の黄金世代の躍進はまだ始まったばかりだ!(取材・構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二)

はの なおや
1995年(平成7年)3月29日生まれ。福岡支部・114期。
2014年5月、若松でデビュー。15年4月、若松・一般競走で初1着。16年7月、芦屋・一般競走で初優勝。17年10月、大村・周年記念でGI初優勝を飾り、平成生まれ初のGIウイナーに。12月の住之江・GPシリーズでSG初出場、17年の最優秀新人に選ばれた。同期に西野雄貴、村松修二、中村桃佳がいる。


したいと思うレースができた大村周年

― 昨年は大村周年でGI初優勝。「平成生まれ初のGI覇者」と話題になりました。

羽野 僕自身はその後も何も変わっていませんし、それで満足もしていません。

 ただ、走れる場所が変わってきましたね。SGを走る機会も増えました。

― 優勝戦は緊張した?

羽野 緊張するほど僕は期待されていなかったので(笑)。準優の原田(幸哉)さんのレースをしっかり見ると、「これは普通のスタートを行って普通に差しても届かないな」と思いました。だから、優勝戦2号艇の僕は「1号艇の原田さんを少しでも脅かすスタートができたときにしかチャンスがない」と思っていました。

 それで、そういう調整をして、本番レースでスタートもバッチリ行けて、1マークは捲りに行こうかとも思って結局差しに変わったんですけど、こういうレースをしようと思ったとおりのレースができたという一戦でした。コンマ06のトップスタート、しかも全速でしたから。スタート特訓でも行けていたので、集中して行けました。

― GI初優勝で自分へのご褒美のようなことはされましたか?

羽野 実家のリフォームをしましたけど、自分には何も…。まだやり切った感はないので。

 デビュー初優勝をする何ヵ月か前に車を購入しましたけど、賞金が入ってきたから使ったとかじゃなくて、使ったら入ってきたという感じです。それも「使ったから頑張る」と意識したわけでもないので…。やっぱりお金を使った方が稼げるんですかねぇ(笑)。

― 芦屋での初優勝の話が出ましたが、やっぱり印象に残るレースですか?

羽野 いえ、去年のGW戦の優勝のほうが印象に残っています。その節は自信になった節ですから。優勝戦はエンジンを含めて絶対に勝てないという人たちばかりでした。僕が優勝戦で一番エンジンが出ていなくて、優勝戦のイメージが全くできませんでした。それで優勝戦の日にほんの少し微調整をしたら、それが凄く効いて、レース前に「捲り差し一本で、もしかしたら届くかも」というイメージが沸き出しました。

 優勝戦は、たまたまスタート隊形がバラけてたまたま展開を突けたんですが、優勝できたことよりも、このレースにしっかり向かえたということに対して自信がつきました。

― 羽野選手は選手持ちプロペラ制度を経験していない世代ですね。

羽野 持ちペラを経験していた人とは、凄く差を感じます。でもSGやGIを走っている先輩を見ていて、どんなエンジンを引いてもある程度戦える自分を作っておけば良いのかなと思ってやっているところです。

 自分のスタイルは無理に確立させない方が良いです。最近はプロペラも決まった形にしません。先輩の良いところをマネしたり、吸収できる状態をつねに作っておくことが、経験の差を早く埋める方法じゃないかと思っています。

― 影響を受けた先輩レーサーは?

羽野 篠崎仁志さんです。憧れのレーサーであり、目標のレーサーです。考え方、立ち居振る舞いとか、接するほどよくわかるようになりました。去年の7月くらいから僕が記念を走り始めて、一緒のレースを走る機会が増えて1年くらいですけど、そこから同じ舞台、同じレースを走りたいと思うようになりました。今思うとそれが励みにもなっていたのでしょう、最近はSGに出ることを意識していますから。

「黄金の94年度組」の一人として

― 羽野さんの同級生世代はオリンピックメダリストも多く、スポーツ界の「黄金の94年度組」とも呼ばれています。

羽野 僕は高校の頃、野球をやっていたので、すぐに思いつくのは大谷翔平ですね。あと阪神タイガースの藤浪(晋太郎)も。僕の高校は野球があまり強くなかったので、「藤浪ヤベェ」みたいに思っていました。

 僕のポジションはセカンドや外野もやったし、打順で言えば2番バッターで、長打を打つというよりヒットやバントの小回り系でした。体格が同じくらいなら彼らにも負けなかったかも(笑)。いや、負けますね。

― 同級生世代には刺激、影響を受けますか?

羽野 94年度世代に強いスポーツ選手が揃ったのはたまたまかもしれないけど、一人ひとりが強くなったのには理由があると思います。そういう人たちが書いている本を読んで、良い所を吸収しようとはしています。考え方が合わないと思っても参考にさせてもらっているし、僕が気づかないようなことも書いてあります。ただ、強くなった人で「こんな(簡単な)感じで強くなれるんだ」と思った人はいないです。

 大谷翔平の本なんかは読んで結構良かったですね。彼は体格も恵まれているんでしょうけど、それだけではバットにボールが当たらないですから。小、中、高校生くらいまでなら体格で勝てる、その先はさすがに何かやっていないと勝てないですから。

― 同じ公営競技では、オートレーサーの鈴木圭一郎選手も94年度組です。

羽野 意識はしていましたよ。以前は一度会ってみたいなと思っていたけど、彼はSGをたくさん勝っているし、今となってはそれも少し怖いです。あと(仲谷)颯仁も同級生です。

― やはり同県の仲谷選手は意識する存在?

羽野 ライバルとかではなくて、めちゃくちゃ勉強になる存在です。共通点もあるけど、違うところが多くて、学べることしかないんです。

 でも若松の地区選のときは優勝戦1号艇、2号艇で、絶対に負けたくないと思っていました。去年の最優秀新人争いも終わったし、2人で一緒にというわけではないですけど、これからは2人で上の人たちに追いつけ追い越せで頑張っていきたいと思っています。

― 同期との関係は?

羽野 仲が良いですよ。今年のヤングダービーは同期7人で、去年より少し増えました。一緒に優勝戦に乗りたいですね。1年に1回徳島に行って、西野(雄貴)にサーフィンに連れて行ってもらっています。西やんとは「ヤングダービーが終わったら近くでサーフィンしたいね」って言っていたけど、サーフィンはできる人が限られるので、結局ゴルフっていう話になりました(笑)。

ドリーム戦1号艇で逃げ切り、優勝へ

― 昨年の蒲郡大会で初めてヤングダービーを走った印象は?

羽野 去年はヤング戦という感じではなくて、記念という感じでした。まだ(篠崎)仁志さんや前田(将太)さんが走っていたので。お二人は準優1号艇だったんですけど、どちらもスタート一撃に遭って負けてしまって…。

 そういうのを見ていたので、僕が記念で準優1号艇で乗っても、仁志さんたちも負けるときは負けてしまうのだから、僕が負けるのも普通だとプレッシャーなく、落ち着いてレースができたんです。逆に、ルーキーシリーズの1号艇のほうが緊張するかもしれないです。

― 今年6月の下関ウエスタンヤングの苦い経験が残っている?

羽野 ウエスタンのときは凄く悔しかったです。ドリーム戦で逃げられなかったし、予選でもう1回1号艇がきて、それも逃げられなくて。準優1号艇でも逃げられずに5着…。ファンの方に申し訳ないと、この節で初めて思いました。ドリーム戦1号艇の責任って凄いなとも感じました。

 だから今回、浜名湖ヤングダービーの目標は、まずドリーム1号艇で逃げを決めることです。あと、やっぱり準優などの勝負所で一撃が飛んでくるのがヤング戦の怖さでもあるので、下関の経験を生かして今度は頑張りたいです。

― 最後に、浜名湖ヤングダービーに向けての抱負を。

羽野 今回は昭和生まれの方が最後のヤングダービーですよね。昭和か、平成かみたいな大会になりそうですね。今までずっと昭和組が優勝しているけど、今年は平成組が獲りますよ!

 もちろん僕の目標も優勝です。それでも、優勝できたとかだけではなく、どんなレースでも毎節そこを目指すことが大事なのかなと思っています。そこを目指して戦うことが今後に繋がるのだと思います。今は選手としても人としても、もっと強くなりたいです。

羽野 直也選手 データ室 (2018年7月29日現在)
◆通算成績

出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 931回 21回 5回 39.2% 59.4%
SG 35回 0回 0回 42.9% 66.3%
GI 93回 5回 1回 49.5% 64.5%
◆全国成績(最近3節)
18年 7月 尼崎 GI・周年 2 4 2 F 4 3 失 5
18年 7月 若松 SG・オーシャンC 1 3 2 5 5 1 6 2 3
18年 6月 下関 GIII・ウエスタンY 3 2 2 2 1 2 5 3 1

◆浜名湖成績(最近2節)
18年 3月 SG・クラシック 1 6 4 4 2 1 4 2 4
17年 7月 GI・周年 4 2 3 6 6 2 4 3
プレミアムGIヤングダービー 全4大会 優勝戦成績
第1回[2014年9月28日]戸 田
着順 枠番 選手名 支部 進入 ST タイム
1 4 桐生  順平 (埼玉) 5 01 1.48.2
2 6 黒井  達矢 (埼玉) 6 04 1.49.3
3 3 長尾  章平 (山口) 4 03 1.53.1
F 1 峰   竜太 (佐賀) 1 +06  
F 2 渡邊 雄一郎 (大阪) 3 +01  
F 5 土屋  智則 (群馬) 2 +07  

2連単 4-6 260円(1番人気)

3連単 4-6-3 380円(3番人気)

決まり手=恵まれ

第2回[2015年9月27日]尼 崎
着順 枠番 選手名 支部 進入 ST タイム
1 1 松田  祐季 (福井) 1 11 1.48.7
2 3 岡崎  恭裕 (福岡) 3 14 1.50.7
3 5 篠崎  元志 (福岡) 5 32 1.51.8
4 6 宮地  元輝 (佐賀) 6 13  
5 2 西山  貴浩 (福岡) 2 14  
6 4 渡邉  和将 (岡山) 4 21  

2連単 1-3 390円(1番人気)

3連単 1-3-5 1,030円(1番人気)

決まり手=逃げ

第3回[2016年9月25日]常 滑
着順 枠番 選手名 支部 進入 ST タイム
1 1 松田 大志郎 (福岡) 1 23 1.49.4
2 3 桐生  順平 (埼玉) 3 17 1.50.6
3 4 岡崎  恭裕 (福岡) 4 17 1.52.5
4 5 宮地  元輝 (佐賀) 5 11  
5 2 篠崎  仁志 (福岡) 2 18  
6 6 丸野  一樹 (滋賀) 6 17  

2連単 1-3 510円(2番人気)

3連単 1-3-4 1,630円(4番人気)

決まり手=逃げ

第4回[2017年9月24日]蒲 郡
着順 枠番 選手名 支部 進入 ST タイム
1 1 中田  竜太 (埼玉) 1 09 1.52.8
2 6 仲谷  颯仁 (福岡) 6 08 1.55.9
3 3 大上  卓人 (広島) 3 07 2.00.6
4 2 木下  翔太 (大阪) 2 06  
5 椎名   豊 (群馬) 5 08  
4 片橋  幸貴 (滋賀) 4 06  

2連単 1-6 1,370円(6番人気)

3連単 1-6-3 5,420円(20番人気)

決まり手=逃げ