the INTERVIEW

「グランプリに出ていたヤツ」として、しっかり走らなアカンなと思います。

 2010年11月、津で1分42秒6の上がりタイムを叩き出し日本レコードを更新。12年1月にはびわこで1分42秒2をマークし、自身の持つ記録を塗り替えた。“最速”の称号を手にした馬場だが、その最速にこだわって出た答えとは。
 「最速=最強」とはならないのがボートレースの世界だが、それでもスピードが武器となることは間違いない。悲願のSGタイトルを手にして充実期を迎えた最速男が、さらなる高みを目指してスピード全開で挑む!

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二)

ばば よしや
1984年3月26日生まれ。滋賀支部・93期。
2003年11月、三国でデビュー。07年4月、びわこ・GW戦で初優勝。10年1月、浜名湖・新鋭王座決定戦でGI初優出。SG初出場の12年8月、桐生・メモリアルで準優進出。18年11月、芦屋・チャレンジCでSG初優出、初優勝を飾り、初のグランプリ出場を果たした。12年にびわこで出したレースタイム1分42秒2は現在のボートレース最速記録。18年からは滋賀支部長を務めている。同期には渡辺浩司、長田頼宗、杉山裕也らがいる。

タイムアタックのコツは接地面を少なくすること

―馬場選手は日本レコードタイム保持者です。

馬場 タイムが出る条件は、気温が低い、気圧が高い、水面が良いこと。海水より淡水のレース場のほうが良いですね。
 走り方は、大ざっぱに言えばアウト、イン、アウトなんですけど、外を走りすぎてもアカンし、イメージとしては各コーナーで4.5コースくらいの位置を走ることです。
 ターンは、ボートを安定させることが第一条件です。安定させるとレバーを握れるし、負荷を掛けたのも外せます。ターンの出口ではボートの右を浮かす感じで、体重は左に掛かっています。ターン入口は右、出口は左に体重を掛ける感じで、ボートの接地面を少なくするイメージです。
 ターンはボートの安定が大前提ですけど、タイムアタックをしているときは、レバーを握っている時間が違います。あと、走る位置も大事ですね。

―“最速”にはこだわっていますか?

馬場 津でレコードを更新した20代の頃は、凄くこだわっていました。10年1月の浜名湖・新鋭王座で優出したんですけど、その前後に92期の毒島誠さん、96期の新田雄史など、僕の前後の期の選手がSGやGIで活躍しだして…。凄く意識しましたね。“93期はダメ期”って言われてましたから。同期の長田頼宗と「どうにかせなアカン」「いつかはタイトルを獲ってやろう」って、よく話していました。
 タイムアタックを始めたのは、タイムが出だした頃に「これはアピールポイントになるな」と思ったからです。お客さんに名前を覚えてもらえれば、もしかしたらオールスターに行けるんじゃないかと…。
 結局、オールスターには出られなくて、もっと結果を出さなアカンと痛感しました(苦笑)。

焦って、空回りして地元びわこを1年走れず

―15年のGPシリーズで長田選手がSG初優勝を飾りました。

馬場 「マジかぁ~」って思いました。焦ってしまって、その後は失敗しました(苦笑)。
 僕は焦ると空回りしてしまうんですよね。長田がSGを獲った翌年は1年で2回もフライング。17年には、びわこの正月戦でまさかの整備規程違反(オイル交換時の不注意)をしてしまいました。選手として12~13年くらい走ってきて、気が緩んでいたのだと思います。そのペナルティで1年間びわこで走れなくなるし、どん底の1年でした。

―17年の終わりから、調子が上がっているようですが?

馬場 浮上のきっかけは、その年の終わり頃に「周りを意識したらアカン。新年からは同期や同世代を意識せず、一から気持ちを切り替えて走ろう」と決めたことです。そうしたら17年12月の住之江で優勝できて、リズムも上がっていきました。
 結果的にですけど、びわこでは1年間、レースも練習もできなかったことで、地元で走れる喜びや、今まで練習をさせてもらっていた有難さがよくわかりました。それが17年の収穫というか、大きなことでしたね。

守田俊介の言葉通りSG制覇のチャンス到来

―昨年の芦屋チャレンジCでSG初制覇です!

馬場 10月の蒲郡ダービーの帰りに、優勝された守田俊介さんが「オレが、こうやって40歳になって初めてSGを獲って、まさか2回目も獲れるとは思っていなかった。腐らずSGに出続けていたらチャンスは来るんやから、お前も頑張れ」って言ってくれました。
 そうしたら、次の芦屋チャレンジCで本当にチャンスが来た(笑)。良いエンジンを引けて、得点率7点台なのに予選1位で通過と、本当に流れが来た。優勝したら、守田さんが「お前、すぐに獲るなよ。早すぎるねん」って(笑)。

―チャレンジC準優では出力低減機のレコードタイムも更新しました。

馬場 あれはオマケです。ホンマにがっつりタイムアタックしていたら、もうちょっと良いタイムが出ていたと思います。もったいないとは思ったけど、とりあえず優出すること、ゴールすることしか考えていなかったので、アタックはしませんでした。

「次の1走で終わる」グランプリで感じた恐怖

―グランプリにも出場しました。

馬場 緊張感で疲れましたね。
 トライアル1stの1走目で1着を獲れたから、本来の1stの緊張感、しんどさは味わっていないと思います。これが1着発進じゃなかったら、どんなメンタルになっていたのか。
 「次の1走で今までやってきたことが終わる、グランプリが終わる」と思ったらどんなにしんどいのか、っていうのは感じました。トライアル2ndの3戦目で6着になって「自分はまだまだ」とは感じたけど、今までで一番、成長できた1節でした。

―今年の目標も、グランプリ出場ですね。

馬場 「もう一度、グランプリに」と言える立場には、まだなっていないと思っています。去年はたまたま、チャレンジCを勝てて、たまたまグランプリに出られたと思っているので。
 去年、菊地孝平さんは優勝がなかったのにグランプリに出ていました。それって凄いと思います。菊地さんを見て、目指すべき所は“安定感”だと思いました。1年間トータルで安定した走りをする、そういうふうになりたいですね。その中で、大きいレースで勝てたら良いし、グランプリに出られたら良いと思っています。
 今年1年しっかり走って、安定した結果を出してグランプリに出られたなら、毎回出ている人に近づけたと思えるでしょう。

―今年も優勝5回と絶好調です。

馬場 SGを獲って肩の荷が下りたという感じもあるし、グランプリを経験して、気持ちの面でも大きくなれたからだと思います。改めて、ボートレースはメンタルスポーツということを知りました。
 それに、お客さんから「アイツはグランプリに出ていたヤツ」という目で見られると思うので、しっかり走らなアカンなと思っています。

几帳面な性格が生んだ箱一杯のプロペラゲージ

―馬場選手のプロペラゲージ、大量ですね…。

馬場 持ち込むゲージは多いほうですね(笑)。以前は限られた数セットのゲージで隙具合や隙間を見ながら、あとは実際に乗った体感で調整していましたが、しばらくして「調整の上手な人なら巧く調整できるけど、僕にはできない」と感じるようになりました。性格のせいか、隙間を残せなくて、ついついゲージにピタッと合わせてしまうので。
 それなら、いろんなパターンのゲージを持って行って、選択のバリエーションを増やそうと思って、ゲージの数を増やしたんです。

―それがゲージの山になったと。全部自作ですか?

馬場 今は外注のゲージを使っていますが、他人が作ったモノなので微妙なズレがあります。最後はちょっとした隙間や、細かい所を、いかにエンジンに合わせられるか、自分でアレンジできるかが大事です。特に、夏場になると少し調整がズレてくるので、夏場の克服も課題の1つです。

最速は厳しいけどスピードレースで魅せる!

―今回のグラチャンの舞台、多摩川はスピード水面です。

馬場 津でレコードタイムを更新したときに、それまでの最速タイムは今坂勝広さんが多摩川で出されたということを知りました。
 多摩川は風の影響もなく落ち着いた水面で思い切ったレースができます。優勝したこともあるし、記念で優出したこともあるので、イメージは悪くはないです。ただ、6月は季節的にタイムを出すのは厳しいです。

―梅雨ですからね…。では、最後に抱負を。

馬場 タイムは期待できませんが、自分の持ち味であるスピードレースをしたいです。内容の良いレースをして、関東のお客さんにアピールします。

馬場 貴也選手 データ室 (2019年5月26日現在)
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 4004回 148回 36回 45.3% 61.4%
SG 120回 2回 1回 37.5% 50.8%
GI 797回 11回 0回 30.9% 47.7%
◆全国成績(最近3節)
19年 5月 福 岡 SG・オールスター 6 4 5 4 5 3 2 2
19年 5月 びわこ タイトル(GW戦) 2 1 1 1 1 6 1 3 2 1 5
19年 4月 住之江 タイトル 1 3 2 2 1 4 1 4 1 3
◆多摩川成績(最近2節)
18年 10月 一般競走 3 1 3 1 失 1 4 1 3
18年   3月 一般競走 2 4 2 4 1 1 2 2 1