the INTERVIEW
「1億円を懸けたレースに、トライアル2nd発進で出たい!」
注目レーサー the INTERVIEW
4686 丸野 一樹(滋賀)
2011年のデビューから丸10年。丸野はレーサー人生を変える意気込みで、7月芦屋オーシャンCのドリーム戦に立とうとしていた。それがドリーム戦のわずか4時間前、試運転中の大ケガで消えた。「今年の丸野は終わった」と誰もが思った。ところが、丸野本人は諦めていなかった。全治3ヵ月のケガを1ヵ月で治し、復帰戦のSGメモリアルでSG初優出をやってのけたのだ。心技体の進化を遂げた丸野がダービー王の称号、そしてグランプリ出場を懸け、秋の平和島を激走する!
初のSGドリーム戦を欠場。オーシャンCで何が起きた?
― 芦屋・オーシャンCは1走もせずに帰郷。何があったのでしょうか。
丸野あの日は、ホーム向い風が8m前後吹いていましたね。朝からプロペラを大幅に叩き変えて試運転をしていました。4R前の試運転中に風に煽られて直線で転覆。水面に投げ出されて、左手の甲にボートが直撃したんです。
ボートが直撃した左手は、ひと目でわかるほど腫れていて、動かそうとしても動きませんでした。滋賀支部の守田俊介さんや馬場貴也さん、多くの先輩方から「ここで選手人生が終わるわけじゃない。これからの選手なのだから無理はするな」と諭されました。なかなか諦めきれませんでしたが、レバーも握れず、痛み止めの薬を飲んでもまったく効かない状態では、断念せざるを得ませんでした。一緒に走る選手にケガをさせるわけにはいきません。
病院に行くと、待合室のテレビでドリームの中継が始まる所でした。悔しさしかありませんでした。自分は何でここにいるんだろう、と。
― そこまでオーシャンCに懸けていた?
丸野オーシャンCは選手人生10年で最も大きいシリーズという位置づけでした。SGはGIとは違った厳しさがあって苦戦しましたが、昨年の蒲郡チャレンジCで初めて予選を突破し、自分のターンが良くなっているという実感が持てました。そして4月の津周年で準優勝して、オーシャンCのドリーム4号艇が取れました。
今回のオーシャンCは、ここで結果を出してさらに上へ行く、レーサー人生の転機にするつもりで、やれることを全部やって臨んだシリーズだったんです。
― 全治3ヵ月と聞いていましたが…。
丸野左手の指を3本骨折していました。手術の後、完治するまでに3ヵ月はかかると言われましたが、3ヵ月休むとA1級の出走回数(90走)がクリアできません。9月に復帰してA1級は維持する、というのが当初の予定でした。
しかし、気持ちは違いました。今年はグランプリが狙える状況で、そのチャンスを諦める気はありませんでした。1日でも早く復帰するために、手術の翌日からリハビリ(作業療法士に指を動かしてもらうという作業)を始め、術後2日で退院。退院した日から、左手以外のトレーニングを始めました。
― YouTube(マルトレ)を見て、こんなに動いて大丈夫かと思いました。
丸野自分がその時点でやれることは、トレーニングしかなかったんです。固定して安静にしたままでは、だんだん骨の周囲の筋や腱が癒着して動かなくなります。ただ安静にしているのでは復帰が遅れると思い、トレーニングすることにしました。トレーナーの八木さんも前向きな言葉を掛けてくれ、励みになりました。
トレーニングでは、左手にとらわれない乗り方を考えました。左手でレバーが握れないなら、左手はレバーをつかんでいるだけにして、肩に力を入れてレバーを押すというトレーニングをしていました。トレーニングと治療に加えて、骨の回復を早める電気治療(マイオパルス&アキュスコープ)も続けました。
骨折して流れが変わった!復帰戦のメモリアルでSG初優出
― まさか1ヵ月後のメモリアルで復帰とは。
丸野メモリアル出場は、前検日の4日前に決めました。正直なところ、前検日の段階ではケガをする前の40%くらいの動きで、レースができるか不安でした。
初日は自分が思うレバー操作ができずに2着から4着に降着したりしましたが、3日目くらいから感覚が戻ってきました。
― そのメモリアルでSG初優出!
丸野自分の中で、何か行けるような流れは感じていました。SGではあまり引けなかった好モーターが引けて、「骨折して流れが変わったんじゃないか」と思ったんです。そもそもこのシリーズに出場できているのだから、準優勝戦も乗れるんじゃないかと思っていました。根拠のない自信がありましたね(笑)。
準優1周1Mは、完璧な“全速差し”ができました。守田さんが宿舎で「あのターンは見たことない」と絶賛してくださったターンです。
2着競りの1周2Mも冷静でした。これは蒲郡チャレンジCの経験が活きましたね。2Mをスピードを持って回ったら差されて、優出を逃したレースです。「ゆっくり回っていれば優出できたかも」と後悔した記憶が、1周1Mを回った時に蘇ったんです。
差し場を消すために、いつもより握るタイミングをツーテンポ遅らせ、「ゆっくり回ろう、ゆっくり回ろう」と自分に言い聞かせました。SG14戦目での初優出は時間は掛かりましたが、嬉しかったです。
優勝戦はワクワクしましたが、外では厳しかったですね。準優と同じようなターンもできませんでした。あのターンはプロペラを止め気味に、重めでしっかりグリップする調整じゃないとできません。優勝戦は回転が上がり過ぎて、グリップ感が失われていました。
SG第67回ボートレースメモリアル 優勝戦
(2021年8月29日・第12レース)
| 着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 原田 幸哉 | (長崎) | 1 | 04 |
| 2 | 2 | 平本 真之 | (愛知) | 2 | 09 |
| 3 | 3 | 白井 英治 | (山口) | 3 | 12 |
| 4 | 5 | 濱野谷憲吾 | (東京) | 5 | 13 |
| 5 | 6 | 丸野 一樹 | (滋賀) | 6 | 13 |
| 6 | 4 | 池田 浩二 | (愛知) | 4 | 14 |
▼2連単 1-2 370円 (2番人気)
▼3連単 1-2-3 930円 (4番人気)
▼決まり手=逃げ
未来のボートレーサーのために。YouTubeチャンネル「マルトレ」開設
― 丸野選手といえば、YouTubeチャンネル「マルトレ」が話題です。
丸野峰竜太さんに勧められて開設しました。自分がレーサーを目指していた頃、どんなトレーニングをすれば良いかわからず失敗したので、レーサーを目指している人に情報を発信する人になろうと思いました。
― 実際、ご自身はどんな受験対策を?
丸野高3の夏に野球部を引退してから、約70kgあった体重を2ヵ月弱で15kg落としました。野菜ジュースや蒟蒻メインの食事に、毎日サウナスーツを着て15km走って汗を出し、さらにサウナを2時間。栄養失調で眩暈がして倒れたこともありました。当時は減量の知識がなくSNSもなかったので、かなり無茶なことをしていましたね。
減量で免疫力が落ちてしまったうえに、試験1ヵ月前にはインフルエンザに罹ってしまい、1回目の試験は不合格。「これでは駄目だ」と、スポーツジムでプロの指導のもと、しっかり準備した結果、109期の試験に合格しました。
― かなりのトレーニング好きですよね。
丸野2年近く優勝もできず、GIで結果が出ない時期が続き、このままでは選手としては終わってしまうと思って、19年の1月からトレーニングを本格的に始めたんです。一番身近にあったのがトレーニングだったので、自然な流れでした。すると2月の住之江地区選で優出、4月の江戸川で優勝。ターン力の向上に加えて、「これだけやったんだ」という自信を持ってレースに臨めるようになりました。メンタル面でも大きなメリットがありましたね。
ダービーで優勝して海水場完全克服!初グランプリ&TR2nd発進を目指す
― 初のダービー出場です。
丸野SGやGIを走りながらダービーの出場権利が獲れて、素直に嬉しいです。平和島は、良いモーターが引けていないので…。
以前は海水場に苦手意識もありましたが、若松周年も勝てて、現在は60%くらいまで克服できています。海水場で場数を踏み、プロペラ調整の経験を積めてきているのが大きいです。ダービーで優勝して海水場を完全に克服し、平和島のイメージも変えたいです。
― 丸野選手の好不調のチェックポイントは?
丸野展示航走のタイムと部品交換です。ケガしてから、展示は力を出し切れていないので、一周タイムよりも直線タイム、まわり足タイムで判断してもらえたらと思います。部品交換する時は、モーターが良くないということです。
― ダービー、そして今後の目標をどうぞ!
丸野今年は1億円を懸けたレースに出たい。トライアル2ndから出場することを目指して、ダービーを含む残りのレースを頑張ります。
将来的には、毎年グランプリを走れるようになりたいですね。YouTubeでコラボもさせてもらっていますが、レーサー界でトップの存在である峰さんを、いつか「ぎゃふん」と言わせたいです。
1991年8月5日生まれ。滋賀支部・109期。
2011年11月、びわこでデビュー。16年5月、三国・一般競走で初優勝。19年8月、びわこ・周年記念でGI初優勝。21年8月、蒲郡・メモリアルでSG初優出を果たす。同期には大上卓人、島村隆幸、永井彪也らがいる。
| 出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 全種別 | 2,282回 | 64回 | 18回 | 42.0% | 60.2% |
| S G | 105回 | 1回 | 0回 | 33.3% | 48.5% |
| G I | 400回 | 11回 | 4回 | 37.5% | 55.0% |
| ◆全国成績(最近2節) | ||||
|---|---|---|---|---|
| 21年 | 9月 | 唐 津 | 一般競走 | 3421212123 |
| 21年 | 9月 | 鳴 門 | GI・周年 | 62222213 |
| ◆平和島成績(最近2節) | |||
|---|---|---|---|
| 21年 | 5月 | GI・周年 | 56552465 |
| 20年 | 12月 | SG・GPシリーズ | 612失2433 |