秋の平和島水面&ダービーで狙えるモーターはコレだ!

秋の平和島水面&ダービーで狙えるモーターはコレだ!

第64回ボートレースダービーを開催する平和島は、舟券難易度の高いレース場として有名です。風と潮位の変化に加えて海水特有の湿度の変化もあり、モーター調整に正解を出しにくいからです。選手もファンも、刻々と変わる条件の変化に対応できなければ脱落するだけです。そこで、平和島記者席に行って攻略法を教わってきました! 講師は平和島の“ヌシ”と言えばこの人、『ファイティングボート・ガイド』長船敏和記者です!(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』石井誠司)

石井 誠司 石井 誠司

1973年生まれ・東京都出身。高校卒業後、吉本NSCを経て、銀座7丁目劇場でデビュー。98年に関東『競艇ニュース』に入社、同紙編集長を経て、2017年4月より『マンスリーBOAT RACE』編集長に就任。現在は執筆、編集の傍ら、定期的にボートピア市原、岩間などで舟券塾の講師を務める。

長船 敏和 長船 敏和

1973年生まれ。岡山県出身。94年に『ファイティングボート・ガイド』に入社、江戸川担当記者に。ボートボーイで「舟券新発見」を連載し、その取材力とデータ分析力を高く評価された。現在は平和島担当。ボートレース平和島HPの直前予想も担当しており、的中率、回収率の高さで人気を集めている。

風がコロコロ変わる平和島は風水面

石井僕が長船さんと初めて会ったのは、約20年ぐらい前の本栖卒業レースです。以前勤めていた関東の専門紙『競艇ニュース』に入って初めての出張取材でした。

長船マジで! あれが初めてだったの? 全然そんな雰囲気なかった。『大物ルーキー登場』の雰囲気を漂わせていたよ(笑)。鮮烈なデビュー戦だったなぁ…。真っ黒なスーツと真っ赤なネクタイが本栖の水面にバッチリとマッチしていた。あのインパクトが凄くて忘れられない。まだ持ってる?

石井エルビス・プレスリーの顔がデカデカとプリントしてあるネクタイなら、まだ家にありますよ(笑)。

あまり脱線しないうちに本題に入りましょう。秋の平和島水面の特徴を教えてもらえますか?

長船ここでSGを開催するときはクラシックとダービーが多いね。両方とも季節の変わり目の開催だね。クラシックは春の風で、強い風が吹くけど、10月は3月に比べると、そこまで風の影響はないかな。

石井平和島は「風との戦い」だと良く言われます。

長船そうだね。夏は追い風が強くて、冬は向かい風が強い。その影響でインが強くなったり、弱くなったりするのは、平和島ファンの人は良く知っているし、それを考えて舟券作戦を組み立てているね。

ただ、10月は風向きが微妙で難しい。秋は午前と午後で寒暖の差があるよね? 午前中は冷たい向かい風が吹くし、気温が上がる昼ぐらいからはホーム追い風が吹く。風が変われば、舟券の買い方も変わるよ。

石井風は1日中変わらないイメージがありました。

長船平和島はコロコロと変わるよ。走る位置によっても風が変わっている。バック側の水面はビルに囲まれているから、ビル風が入って横風になるし。よく、選手が「平和島って、こんな風水面でしたっけ?」って聞いてくるしね。

レースの流れの変化は風速5mが分岐点

石井風水面・平和島の舟券はセオリーどおり、追い風は差し、向かい風なら捲りで良いですか?

長船データ的に言うのも何だけど、5m以内の追い風は基本的にインコースが強いね。SGやGIになると特に強くなるかな。追い風が5m以上になると、握って回った選手が流れるから差しが決まりやすくなるね。

向かい風は3m以内ならインが利くけど、5mを超えると捲りが決まる。

石井風速5mが舟券の買い方を決めるレッドラインなんですね。『競艇ニュース』の編集長も同じことを言っていました。

長船それは平和島に限らず、どの場でもセオリー。だけど、平和島はスタンドに当たって風が舞ったりすることはない。風を遮るものがないから、つねに追い風か、向かい風かで一定している。選手としてはスタートの仕方が難しくないし、レースのしやすさはあると思うよ。風が舞う例を挙げると、ヤングダービーを開催した蒲郡だね。風がスタンドに当たるから、蒲郡のスタートは難しい。

ただ、舟券的にはそうはいかない! 向かい風がキツイと外が強くなるしね。平和島の舟券は“プロ仕様”だよ。

石井“プロ仕様”とは、凄い響きですね。

長船風がハッキリとしていれば舟券の買い方も安定するけど、風の吹き具合が微妙なときが一番難しい。内が強いSGやGIでも風の影響は絶対に無視できない。ただ、今はモーターやプロペラの性能によってスリットの足の差が出やすくなっているね。

石井平和島のモーターは他場よりパワー差がある気がします。

長船それは選手もよく言っているね。最近はダービーに参戦する選手が毎節1人か2人くらい斡旋されてくるけど、成績は引いたモーター次第だね。7月の企業杯に来た石野貴之は良いモーターで1着を並べて優勝したけど、8月の一般戦を走った江夏満はそうじゃないモーターを引いて凄く苦しんだ。江夏のモーターは9月一般戦で湯川浩司が引いたけど、同じような感じだったし…。

昔の平和島は選手によって得意、不得意が凄くあったよね。どんなに全国的に活躍している選手が来ても、平和島では結果を残せないことが多かった。でも、今はモーターの性能が重要になっている。

平和島にセオリーはない稼ぐには勉強が必要

石井SGレーサーでもパワーがないと厳しいんですね。

長船平和島の水面は狭いから、スリットからの伸びが成績に直結する。インが強いレース場ならコースの利でカバーできるけど、平和島はそこが弱いからね。さらに、伸びが良い選手が外にいて、向かい風が強いという条件がつくと、逃げは決まらない。SGやGIでも、風が吹けばイン逃げが決まらない日も珍しくない。天候や機力など、条件によってレースが変わることを頭に入れておかなきゃダメだよ。「10月の平和島はこういう水面だから、インの1着率は大体これぐらい。よそに比べるとインが弱いから、センターから狙う!」みたいなデータは全く役に立たない。それはあくまでも平均値、ならした数字だからね。

平和島はシリーズ全体の流れと言うより、日によって、そのレースによって丁寧に考えるのが大事。スリットの伸びが来ているのは誰か、風がどれぐらいの強さで吹いているか、前づけがある場合はそれも考える。ここは進入が深いと持たせるのが難しいからね。一つひとつのレース単位で考えなきゃ、舟券は当たらないよ。

石井ダービーで1日舟券を楽しむコツを教えてください。

長船まずは朝イチで風の向きと強さをチェックすること。秋晴れのときは強い風が吹かないけど、冷えている午前中と暖かい日中では風の吹き方が変わるからね。あと、スタート展示でスリットからの伸びをチェックしなきゃダメ。

スタート展示でスリットからの伸びを確認

レアケースだけど、台風がくるかもしれない。 台風が近づくと北風が吹いて気圧が下がる。モーターが出ている選手の1号艇なら逃げが決まるけど、そうでなければ決まらない。何レースか続けて逃げが決まっていても、少し条件が変わると急に決まらなくなるのが平和島。平均値化したデータが一切通用しないから、その日、そのレースの条件をマメにチェックしてほしい。ここで稼ごうと思ったら、そういう勉強をしなきゃダメ(笑)。

平和島で勝ち続けられる平和島巧者はいない

石井現行のモーターの印象はどうですか?

長船出力低減モーターになる前は抜けていたモーターが5、6基あったけど、今はそういうのはなくなったのかな。

それよりも、良くないモーターを引いた選手のスリットの下がりっぷりがヒドイね。どんな選手でも、そんなモーターを引いたらダメそうだね…。

石井今、長船さんが注目するモーターは?

長船まずは10号機。10号は今凄いね。A1級選手が乗ったことがないのにパワーがエグい。軽量の女子が乗っても、重量級の男子が乗っても、若手が乗ってもバカ噴きしている。スリットの伸びが良いね。

エース機は19号機と言われていたけど、事故やプロペラ交換もあって、今は少しダウン。19号は行き足、伸びの良さで売り出したモーター。初下ろしのときからそういう雰囲気はあったよ。

あとは51号機。これは19号と違って、トータルでバランスが取れている良いモーター。今の出力低減モーターになってからは、昔みたいにレースしてからじゃなきゃ良さがわからないモーターはなくなって、前検特訓のスリットからの伸び具合でモーターの雰囲気がわかるようになった。初下ろしの頃から良かったのが19号と51号の2つだね。ただ…。

水面、番組とも“プロ仕様”の
平和島で高配当的中を目指せ!

石井ただ? 凄く気になるんですが…。

長船平和島はほかのレース場と比べて、トップクラスのモーターのピークの時期が短い。海水の影響もあるけど、水が…ね。良いモーターは割ったり洗浄したりしないから、その影響がモロに出る。ピークはどれぐらいだろ? 3節か4節ぐらいかな。ダービーまであと1ヵ月あるから、モーターの相場が変わっている可能性もあるよ。

長嶋万記が去年のクイーンズCで引いたモーターを5月のヴィーナスSでも引いて、抜群に仕上げて優勝したじゃん。でも、8月のオールレディースは良くないモーターだったから、どんなに整備しても全然ダメだった。つまり、どんなに平和島を走っていても、好成績を残していても、良くないモーターを劇的にパワーアップさせることはできない。昔みたいに平和島が得意な選手、地元勢が有利ってことは全然ないってことだね。

長船記者が見込んだパワーモーターベスト3
伸びを武器にエースの座狙う!
10号機
2連率64.8% 優出2回 優勝0回

7月企業杯で佐藤隆太郎が優出。そのときから伸び型モーターとして存在を示しはじめた。伸びがとにかく強力で、センターからグイグイと伸びて行く。スリットから伸びていく足はナンバーワンだ。

エースの風格も近況下降気味…
19号機
2連率53.1% 優出4回 優勝2回

初下ろし当時からエース機の雰囲気があった。行き足と伸びがパワフルで石野貴之、前田光昭が連続優勝。ただ、最近は転覆事故やプロペラ交換もあってパワーが落ち気味…。直前の状態の見極めが重要となる。

バランスが取れている優等生!
51号機
2連率45.9% 優出1回 優勝1回

7月に吉田一郎が優勝した後は乗り手に恵まれず、成績は10号機や19号機におよばないものの、初下ろしから評価は高い。出足が良いバランス型で行き足、伸びも悪くない。全ての面が優れている。

力を合わせ、平和島ダービーを盛り上げる! TokyoNext 三本の矢
角谷 健吾
第一の矢 地元を意識せず、平常心で走る

「自分の勝率がダービーのボーダー上をチョロチョロしている時期から、ダービーに目標を定めて頑張りました。今は自己最高勝率をマークしていますが、良いモーターを引き続けていることもあるので、SGで結果を残せるかは未知数です。でも、今は若い子でも良いモーターさえ引けばいきなりSGで活躍しますからね。平和島は昨年のクラシックで予選突破できましたし、僕も良いモーターを引ければチャンスがあると思います。

地元だからってあまり意識はせず、平常心で挑みたい。それが一番効果があります」

石渡 鉄兵
第二の矢 得意な平和島で思い切って戦う

「この大会を目標に1年間頑張りました。平和島は走る機会が年に1、2回ぐらいですが、優勝もしているし、得意です。相性は悪くないですよ。あまり良いモーターを引かないんですが、『ここをこう仕上げると結果が残せる』というイメージもできています。

鳴門オーシャンC、若松メモリアルとも準優勝負駆けで失敗して、実力が足りないと感じました。SGはリスクを度外視して戦わないと、結果が残せない世界ですが、地元のSGなら思い切った戦いができるはず。地元3人衆でシリーズを盛り上げて、売り上げも伸ばしたいです!」

齊藤  仁
第三の矢 勝って、グランプリで戦いたい

「多摩川と平和島では調整がバチッとハマりますね。僕の調整方法ですか? 理屈っぽいから下準備から入念だと思いました? 違いますよ(笑)。飲み屋に行くとしますよね。自分の好みじゃない女の人(モーター&プロペラ)がついたとします。でも、チェンジはしません! 一生懸命に楽しむんですよ。そういう気持ちで調整すると、ハマったときが大きいんです(笑)。

今はあまり大きなことは言えないけど、一発大きなタイトルを獲りたいですね。『もう1回あの場所(グランプリ)に戻って戦いたい』という気持ちがありますから」