ボートレーサーである前に
人として豊かに生きたい。
バードアイがもたらしてくれた
感謝の気持ちが原動力。

長嶋 万記選手

PROFILE

長嶋 万記選手

静岡県御前崎市出身。常葉菊川高校卒。ボートレーサー養成所第91期。
一児のママさんレーサー。マキプロジェクトを通じ、社会福祉活動を行なう一般社団法人ZEROを立ち上げ活動しているほか、プロ競技者が集う社会貢献団体「HEROs」のアンバサダーでもある。(※2019年4月現在)

全員がゼロからの出発。未知の世界に挑戦!

全員がゼロからの出発。未知の世界に挑戦!

「自分の可能性に挑戦したいですし、みんなもそうあってほしいです」。選手になって17年目を迎える静岡のママさんレーサー長嶋万記の言葉だ。GⅠタイトルこそないが、女子レーサーの代表として第一線で活躍。SGにも2ケタ出場を果たしている実力者である。
高校時代、強豪校でバスケットボールに打ち込んでいたが、同校OGでボートレーサーの大瀧明日香に憧れこの世界に飛び込んだ。「アスリート系の仕事、できればスポーツ選手になりたかったのと、全員がゼロからのスタートとなる競技にやりがいを感じました」という。何でも全力投球してしまう娘を、父と母はそれぞれの仕方で応援してくれた。父が積極派なら、母は慎重派。特に母は心配を募らせた。仕事場はレース場だ。危険は否定できない。父と母は、上手にアクセルとブレーキを使い分けてくれた。母のブレーキは、プロになったいま「ケガをしない、させない」というレースコンセプトとして生きている。

ジムに通うなどフィジカル面の準備をして臨んだ養成所入所の試験会場で長嶋はあることに気がついたという。「真剣勝負の人とそうでない人の熱量が違う…」。ちょっとしたしぐさや挨拶・行動の早さなどに表れていた。長嶋は、むろん前者だった。
その後、高校時代のハードな練習に耐えた体力と精神力で養成所の訓練を乗り越えるが、入所に際し父と母は、『習ったことは必ず社会に出て役に立つから、思い切り挑戦しておいで』と送り出してくれた。結果だけに左右されない教えが、そこにはある。だからこそ、心おきなく挑戦できたのだろう。

結婚・出産は考えていなかった

結婚・出産は考えていなかった

長嶋が卒業した91期には、長嶋と同じ静岡県出身者あるいは静岡県で出願し合格した者がほかに5人いた。渥美卓郎・松下一也・三浦永理・藤田竜弘・星栄爾である。とりわけ長嶋と三浦は女性同士ということもあり、しばしば比較の対象になった。判断とテクニックの三浦に対し、長嶋は力勝負。三浦は安定感があるが、一方の長嶋は勝ちっぷりがいい反面、負けっぷりも良かった。

それが結婚と出産、そして社会貢献活動によって変わる。

選手になった当初は考えてもいなかった結婚や出産…。しかし、その機会を得たことで否が応でも切り替えが必要になった。仕事と家族のバランスである。感受性が育ちつつある子どもにとって、母の存在は大きい。仕事に行くのがはばかられた。「離れたくないと泣くこともありましたし、今もそうです。だから、レース斡旋のない土日は家族の時間として完全に空けておくようにしています」という。
また、10年ほど前から『マキプロジェクト』という社会貢献活動を開始。知的障碍者との触れ合いや活動支援に自ら積極的に取り組むこととなる。「会のみんなが本当に楽しそうで、私も楽しかったから自然にそうなりました」と軽く言うが、そんなに簡単ではない。自らの賞金をそのまま寄付として提供すればボランティアは成立する。しかし、長嶋は違う。まず一緒に活動する。そのため人が動き、モノを作ることになり、さらに展開されてゆく…。さらに2015年には一般社団法人ZEROを立ち上げ、広く活動している。極めて手間がかかる手法だが、手間は愛に通じるとの信念もあるようだ。その信念は尊い。
そして、何とも不思議な話だが、家庭生活や家事、社会貢献活動、さらにはSNSと、ともすれば集中力を削ぎかねないことに目を向けることで、長嶋万記は勝負強くなり安定した。まさに自らの行動を通し、取り組みの成果を証明しているのである。

バードアイで世界を広く大きく見る

バードアイで世界を広く大きく見る

「レースだけでなく、いろいろな世界を見聞き接することで視野が広くなったのは事実です。私はバードアイって呼んでいるんですが、上から全体を見渡す感じっていうんでしょうか…」。
社会全体を俯瞰することで、自分の立ち位置が分かるうえ他者も見えるようになる。
そんな長嶋のもとへ、奇遇にも『競技を横断したアスリートによる社会貢献団体HEROsを立ち上げるが、参加しないか』と打診が巡ってきた。長嶋は、アンバサダーとして、例えばサッカーの中田英寿・柔道の井上康生・バレーボールの大林素子・ラグビーの五郎丸歩らと交流し行動している。
「人が人のために、当たり前のように行動することができる社会にしたい」という長嶋万記の願いがさらに広がりつつあるのだ。

目指すはサムライターン

目指すはサムライターン

以上、レーサーとしての背後にあるものを紹介してきたが、レーサー長嶋万記が目指している境地はなんだろうか。問うてみた。「サムライターンです」と即答された。
「モンキーターンをする時、へそで立つっていうんでしょうか。丹田という方もいますが、昔のサムライが、気配を感じさせず素早く動くようなターンができないものかと練習しています。踏ん張らずムダがなく乗っていないように乗る、胴体だけで操作しているというイメージです」と目指す秘伝を教えてくれた。いつか目の当たりにする日がくるだろう。

長嶋万記という稀有なレーサーは、『主婦』『ママさん』『ボランティア』『団体代表』『業界の顔』『勝負師』『心と身体のトレーナー』『タレント』など、実に多彩な顔をもつマルチアスリートであり、ボートレース界の誇りだ。

座右の銘は『バードアイ』。大きな世界観をもつ
長嶋万記の1ケ月

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一般社団法人ZEROの活動

一般社団法人ZEROの活動長嶋万記選手が社会貢献活動を開始したのは2009年。『マキプロジェクト』という名称で、成人障害者が集う『草笛の会』のサポートをはじめ、触れ合いを大切にした活動を積み重ねてきた。その後、2015年夏に『一般社団法人ZERO』を立ち上げることになる。全国各地で展開する支援プロジェクトは多くの賛同を得て年々広がりをみせている。また、長嶋選手自身は、さまざまなスポーツ分野のアスリートによる社会貢献プロジェクト「HEROs」のアンバサダーに就任。プロレーサーとして活躍することと社会貢献を連動させる姿に共感が集まるとともに、周囲に大きな励ましを与えている。